映画の感想 「愛しのタチアナ」
アキ・カウリスマキ監督「愛しのタチアナ」を観る。
3度目になるだろうか。
夜寝つきが悪い時、この映画の幾つかのシーンを思い浮かべることがある。
そうすると不思議と、眠りを妨げるあまり良くない感情(不安とか恐怖とか)が薄らいでいく。初めて観た時に、まるで誰かの夢の中の出来事を観ているようだと感じたからかもしれない。
でも内容はシリアスでもロマンチックでもない。
いい歳をして大人になりきれない、シャイで不器用な2人の男性の話だ。
その2人は、仕立屋のヴァルトと自動車修理工のレイノ。
ヴァルトの車で当てのない旅に出た2人は途中に立ち寄ったバーで、タチアナとクラウディアという2人の女性と出会う。
そしてタチアナとクラウディアを港まで送ることになり(バスが故障したため)、4人の短い旅が始まるが、ずっとヴァルトとレイノは黙ったまま。タチアナとクラウディアに話しかけられても会話すらせず目も合わすことも出来ない。
途中ホテルに泊まりレイノとタチアナ、ヴァルトとクラウディアが同じ部屋に寝るのだが何事もなく朝を迎える。
そんな気まずい状態が続いていくが、旅が終わりに近づくとレイノとタチアナの間に変化が起きる.......
そんなストーリーだ(細かい部分は長くなるので割愛するが)。
シャイも不器用もここまでくるとジョークのような何かのコントのようでもある。
クスクス笑いが込み上げてくるが、今の時代こういう男性は散々ダメ男の烙印を押されるんじゃないかと思う。
でもレイノとヴァルトはなぜか憎めない。
そしてそのうち、いいじゃないかこういう男性がいたってと寛容な気持ちになってくる。
最初に観た時は、レイノとヴァルトが旅に出た理由がはっきりしなかった。
それが今回じっくりと観ていたら、ジョニーキャッシュも行けと言ったとか、作家になるというようなレイノのセリフがそれらしい意味を持って響いてきた。
ここではないどこかへ行きたい、何かを変えたいという願望が2人を旅に向かわせたのではないかと想像できる。
小さな街に暮らしているとそんな願望が湧き上がってくることがある。
わたし自身そうだから 、レイノとヴァルト情けないほど不器用でも憎めないのだろうと思う。
..........
ジョニーキャッシュの曲は知らないけれど、ストリートスライダーズのlet'sgo down the streetという曲が聴きたくなった。
風向きはたった今
そうさたった今変わったばかりさ
出かけようぜ
出かけようぜ it'sall right〜
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