有料マガジン「日々雑感」より

日々雑感0524「allo,toi,toi」


長谷敏司の『My Humanity』を読了。


長谷敏司の代表作『あなたのための物語』にも出てくる「他人の経験を自分の脳にインストール」が出来るという夢のような技術、擬似人工神経、ITPを巡る短編「地には豊穣」「allo,toi,toi」と同じく代表作である『BEATLESS』のスピンオフ短編「Hollw Vision」、そして書き下ろしである、<クラウズ>と呼ばれるナノマシンロボットとそれに関係する研究者の姿を描く「父たちの時間」の4編からなる短編集。


どんなにテクノロジーが発展しようとも、そこに人間が存在する限り否応無く発生する「人間性」とでも呼ぶべきものを鮮烈に描き出す手腕はさすがです…むしろテクノロジーが発展したからこそ「人間性」という問題が浮かび上がってくるのかもしれない。


小児性愛者を取り扱った「allo,toi,toi」はそのテーマの奇異さもさることながら、「好き/嫌い」という原理的とでも言うべき問題に焦点をあてていた。ロバート・ヴェンチューリの『建築の多様性と対立性』も結局は「好み」について書かれた本であったし、人間にとって「好き/嫌い」ということはとても重要だ。「ケーキの話」はそういう当たり前のことを再認識させられた。


文化の相克を描いた「地には豊穣」も面白かったし、ナノマシンロボットが進化を遂げていく「父たちの時間」はとてもスリリングだった。 次は『BEATLESS』読もうかな。

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