読書記録『北関東の異界 エスニック国道354号線―絶品メシとリアル日本―』
北関東のそこらで見かけるエスニック料理屋。パキスタンにインドにタイにベトナム…それらが位置するところを辿っていくと、なんと「国道354号線」に連なる場所だと気づき、著者らは国道354号線を北上しながら各所の料理や文化を紹介していく…という体のノンフィクション。
新大久保あたりがすっかりコリアンタウンになったり、池袋に本格的な中国店が増えたり、と都内の各所で移民街的なものが生まれているのはニュースで見かけたりしたが、北関東にもそうした流れがあったとは知らなかった。
本を読み進めていくと、そうした場所ができるには、やはり働き口と土地の安さが関係している。絹産業をベースに軽工業やものづくりなど物流の屋台骨となっていたらしい国道354号線の沿道にはさまざまな工場が集積し、そこに働きに来る外国人労働者が集まり、一種の街のようなものができていったというわけだ。
第一章 伊勢崎 バブルが異国の風を運んできた
第二章 太田・大泉 よそものたちがつくった街
第三章 館林 カレーの香りの向こうに難民
第四章 小山 宴は中古車オークションのあとで
第五章 古河 畑の中にぽつんとアジアン長屋
第六章 境 食べて、祈って、集まって
第七章 坂東 外国人が日本の土を守る
第八章 常総 亀仙人街は今日も大賑わい
第九章 土浦・笠間 農村から聞こえるタイ演歌
第十章 鉾田 エスニック国道の果てに
太田なんかは建築の文脈でもたまに聞く名だが、視点を変えてみるとぜんぜん違う風景が見えてくる。
本書でも、やはり日本の人とそうした外国人の街の断絶は存在していると書かれている。
また難民認定の曖昧さや2世3世の問題など、さまざまな課題が書かれているが、異国の地で日本語を覚え、自分たちで商売をしている人の姿を見ると、たくましさを感じる。
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