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日々雑感2017

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#小説

物語・世界・宇宙─『構造素子』

書籍詳細選考会で絶賛を浴びた、現代SF100年の集大成たる傑作 L8-P/V2のエドガー・ロパティンは、SF作家だった父ダニエルの死後、残された草稿を目にする。それはL7-P/V1の母ラブレスが構築し、父ダニエルが実装したオートリックス・ポイント・システム、彼らの子供であるエドガー001の物語だった ■ 本年のハヤカワSF大賞.ちまちま読み進めていたが,ようやく読了. かなり複雑なメタフィクションのため,難解ではあったが,可読性は高い.選評にて「欠点を強いて挙げるならば完

秀逸な都市SF─『コルヌトピア』

書籍詳細 これはサイバーパンクか、未来予測か。2084年・東京を舞台とする都市SF 2084年、人類が、植物の生理機能を演算に応用する技術〈フロラ〉を生み出した未来。東京は、23区全体を取り囲む環状緑地帯(グリーンベルト)によって世界でも群を抜く計算資源都市となっていた。フロラ開発設計企業に勤める青年・砂山淵彦は、多摩川中流で発生したグリーンベルトの事故調査のなかで、天才植物学者・折口鶲(おりくち・ひたき)と出逢う。首筋につける〈角〉――ウムヴェルトと呼ばれる装置を介してフ

解体を解体する─『エピローグ』

書籍リンク 現実宇宙を制宙するOTCの構成物質を入手すべく行動する特化採掘大隊の朝戸連と相棒のアラクネ。二つの宇宙で起こった連続殺人事件の謎に挑む刑事クラビト。宇宙と物語に何が起こってるのか? ■ 『プロローグ』と同じように、このタイトルはこの作品のありようを如実に現しているのではないか。作中に出てくるOTCが「虚構」それ自体のメタファーだと考えると、この作品はすべての物語の、まさに「エピローグ」なのだ。 「スマート・マテリアルとはいわば…N文字を利用して作成される全

みんな違ってみんないい─『人工知能の見る夢は AIショートショート集』

書籍詳細SF作家と人工知能学会がコラボレーション! この一冊で、「人工知能の現在と未来」が丸わかり。 日本を代表するSF作家たちが、人工知能をテーマにショートショートを競作。それをテーマ別に編集し、それぞれのテーマについて第一線の研究者たちがわかりやすい解説エッセイを書き下ろしました。 名古屋大学・佐藤理史先生プロデュースの〈AI作家の小説〉も掲載! 研究者の最新の知見と作家のイマジネーションが火花を散らす画期的コラボ企画が、文庫オリジナルで登場です。 【テーマ一覧】 ◎対

散種される攻殻機動隊─『攻殻機動隊小説アンソロジー』

また新たな攻殻ワールドが誕生した。’80年代後半に誕生し、世界の有名クリエイターに多大な影響を与えたSFの最高傑作『攻殻機動隊』。SF史に燦然と輝く『攻殻』の世界を人気作家たちが独自の視点で書きおろした小説アンソロジー! 参加作家は円城塔、三雲岳斗、朝霧カフカ、秋田禎信、冲方丁。カバーデザインは原作者の士郎正宗描き下ろし! ■ 円城塔氏の『shadow.net』が謎めいていて非常によかった。電脳技術の発達による法律や倫理の問題を考えることもでき、非常に興味深い。 相貌認

『誤解するカド』

突如羽田空港に出現した巨大立方体「カド」。人類はそこから現れた謎の存在に接触を試みるが――アニメ『正解するカド』の脚本を手掛けた野崎まどと、評論家・大森望が精選したファーストコンタクトSFアンソロジーをお届けする。筒井康隆が描く異星人との交渉役にされた男の物語、ディックのデビュー短篇、小川一水、野尻抱介が本領を発揮した宇宙SF、円城塔、飛浩隆が料理と意識を組み合わせた傑作など全10篇を収録 ■ 印象に残ったものだけ 「関節話法」 関節で鳴らす音でコミュニケーションを取る