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2020-21読書録

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2020年7月の記事一覧

「テクノ・ファシズム」の連続性─『「大東亜」を建設する 帝国日本の技術とイデオロギー』

戦時下において「技術」に希望を託し、合理的な統治と動員体制を築こうとした革新官僚と技術者たちがいた。帝国日本にとって「技術」とは何だったのか。「大東亜」建設の実相に、新たな視角から迫る力作。 アジア・太平洋戦争期、帝国日本の戦時動員のため「技術」という言葉が広範に使用されていた。それは単に科学技術だけではなく、社会全体の統治にもかかわるイデオロギーであった。狂信的な言説が吹き荒れたと思われる時代は、実は科学的・技術的な言説が力を持った時代でもあったのだ。本書では、革新官僚と

鉄筋コンクリート建築の起源と連続─『鉄筋コンクリート建築の考古学  アナトール・ド・ボドーとその時代』

最初期の「鉄筋コンクリートの建築家」アナトール・ド・ボドーの創作活動を丹念に追い、鉄筋コンクリート建築の成立の過程を、実証的かつ理論的に解明する。19世紀までの切石組積による西洋建築と、20世紀の鉄とコンクリートによる近代建築に断絶をみる建築史の通説を覆す画期的研究。 *** 20世紀を席巻した鉄筋コンクリート. 本書は,組積造からコンクリートへと推移した時代に活動したアナトール・ド・ボドーのシマン・アルメ建築(積み重ねた煉瓦の中空部に鉄筋とモルタルを充填させ,一体成型す

東京は一体どこへ?─『建築の東京』

2013年9月、東京オリンピック開催が決まるや前年のコンペで選出されていた新国立競技場ザハ・ハディド案がメディアで騒がれるようになり、2015年7月には安倍首相が「白紙撤回」を表明、同年末のデザインビルド方式の再コンペで隈研吾+大成建設案が採用されるにいたった。 2016年8月、就任直後の小池都知事は目前に迫っていた中央卸売市場の移転延期を決定するも、その後は迷走を重ね、豊洲「安全宣言」を経て築地は五輪開催期間限定の輸送拠点と定められた。メインか副次的かの違いはあれ、いずれも

社会を映す鏡としてのタイポロジー─『ビルディングタイプ学 入門』

歴史、変遷を含めたビルディングタイプのタイポロジー。 社会デザイン的な観点を含む、現代性を持ち込み、今までの計画学通りでは問題があることを示唆。 ビルディングタイプを住宅、オフィス、学校、図書館、美術館、公園・広場など各項目にカテゴライズし、前史/第一世代(産業革命以降、戦前、戦後等)第二世代(普及、進化期等)第三世代(情報化、社会変化に伴う変化等)第四世代(現在、これから)にて構成。 *** 本書では,住宅,オフィス,学校,図書館,美術館,公園・広場など6つの「ビルデ