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伝説の燗酒師による「お燗酒三昧の一日」

こんにちは、安井郁子です。
記事を読んでくださる方、応援してくださる方、いつもありがとうございます。
今年の10月1日の「日本酒の日」は、ほぼほぼ、日本酒の魅力が際立つ ”お燗酒” で楽しみました。

10月1日は、「日本酒の日」

今年の「日本酒の日」は、土曜日なので、日本酒の課外活動を満喫するために、中の人の立場ではなく、外の方々と一緒に、どっぷり日本酒漬けの一日を愉しんでみました。

一日に渡る、虎ノ門 → 渋谷→ 神楽坂 での、「日本酒三昧の一日」をご報告します。長くなりますが、最後までお読みいただけると嬉しいです。

日本酒発信基地「日本の酒情報館」

まずは、日本酒の発信基地、虎ノ門の「日本の酒情報館」さんへ。

10月1日は、「サケフェス2022 at 日本の酒情報館」として、色々なプログラムが組まれているのですが、私は、プログラム1のワークショップ(12:30~13:15)に参加させていただきました。
「どんな酒でも燗酒にして楽しんじゃいましょう!」という、自由闊達な発想で燗酒の魅力を発信する”燗酒師” 水原 将さんによる燗酒セミナーです。

定員12名限定の中に、厚かましくも、酒類業界人を受け入れていただきありがとうございます。燗謝申し上げます。

「燗酒はデフォルト」

水原将 挨拶
水原 将さんによる燗酒セミナー

水原さんは、以前は、東京都渋谷区神泉に燗酒ペアリング専門店「Gats」という人気店で、お燗酒の世界を表現されていましたが、そこは閉められており、行けずじまいで悔やんでいました。
現在は、「出張、出店イベント、日本酒会」等、 日本酒や燗酒にまつわる事を引き続き生業とされ、ご活躍です。

同じ日本酒でも、提供温度により表情の変わる日本酒。
本来、お燗酒温度も想定内として組み込まれているはず。

「お燗は”調理”だ」

水原 将さんによる燗酒ワークショップを振り返ります。

1)1種類目は、+20という超ドライなどぶろくです。
全てのお酒で、大、中、小、三種類の平盃で実験していきます。
小さい平盃ですと、ドライな印象が際立ちます。中ぐらいの酒器になると、炊き立てご飯の感じがでてきて、大きな平盃になると、お酒の奥行きがもっとでてきて、上品なおかゆのようでもあります。やっぱり形状だけでなく、酒器の大きさも大事です!

普段、酒質をみるために用いている利き猪口でもチェックしましたが、こちらは、お米の旨味だけでなく、なんとなくアルコール感がでてしまい美味しいどぶろく燗酒にはたどり着けません。

利き酒としてはこちらを常に用いているので、自分なりのものさしもあり、酒質の差はわかりやすい利き猪口ですが、楽しむためというよりも、やはりチェック用の酒器といえるでしょう。

平盃と猪口
平盃3種と利き猪口

ただ、もともと超辛などぶろくを、お燗にすることで多少の甘みが感じられるようになっても、温度だけでは「+20という日本酒度の辛口加減」を激変することはできません。
なので、どぶろくで甘口がお好みの場合は、ここに同じお蔵の甘酒をブレンドするという手法で、上品な甘みのある別物の水原さんのお酒をいただきました。
美味しい💕
なるほど、これは ブレンドの妙技 +お燗酒調理による、一期一会の魅力です。

2)次は、純米無濾過生原酒系のお酒。
何でもかんでも大きい盃がいいとも限りません。こちらのお酒は、生であり、華やかな香りも持ち合わせていて、燗にすると大きい盃だと少し酸も強く出がちです。このお酒の場合は、小さい盃のほうが、香り、甘み、酸味のバランスがよく、奥行きも出てきます。
なるほどね!!

3)最後のお酒は、特別純米の生酛の火入れ。こちらの場合は、小さい盃だと、味わいがおさまりきれず、「もっと大きな器でのびやかにさせてくれ~」と、お酒が訴えているように思えてきます。
大きい盃のほうが、旨味ものって、バランスが整います。
う~ん、言葉では難しいですが、実際に比較してみると、よくわかります。

水原さんのお燗は、高温で一機につけたほうがよいか、じっくり熱を通したほうがいいか、、、お酒や季節、その日の湿度等も考慮して、お酒を調理していきます!
こんなに、愛をもって、美味しい状態にしてもらえるお酒も幸せですね。

昼間っから伝説の水原将さんのお燗酒を愉しむことができました。
ありがとうございました。

Bar 農!

お酒が強くない体質(酒類業界人としては)なので、昼からのお酒はききますが、優しいお燗酒なら、ほんのりいい気分になるぐらいだから、不思議(^_-)-☆ 

ほろ酔いで少し頬を染めつつ、日本酒情報館をあとに、渋谷へ移動。

期間限定で開催されている渋谷の角打ち「Bar 農!」さんへ。
ここは、「農!と言える酒蔵の会」が国税庁の「Enjoy SAKE!プロジェクト」の支援の元、9月16日~10月16日、10月25日~11月13日の日程で開催されている期間限定の角打ちです。
期間中、酒蔵の方が見えての営業(15時~22時)となります。

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泉橋酒造の橋場社長さん

9月30日、10月1日のご担当は、泉橋酒造さん。(最終日の11月13日にも橋場社長は、いらっしゃるそうです)

橋場社長さんからは、今年のお酒事情、つい数日前迄いらしていたフランスの日本酒事情、フランスで日本酒を造っているWAKAZE 訪問報告等もお聞かせいただけました。

泉橋
出展中のいづみ橋のお酒

今日は、「いづみ橋 秋とんぼ 雄町」を頂きました。まだまだ、これからいい感じに熟成していきそうなお酒です。
今年になって「雄町」品種は、神奈川県の産地品種銘柄に登録されているんですよ。

全種類制覇とはいきませんでしたが、いづみ橋さんのお酒は普段からチェックしていますので…今日は雄町のみいただき、ほろ酔い加減で、次のお店に移動しました。

今日は、「お燗酒押し」のわたしとしては、秋から冬への時期に(夏場の燗酒もいいのですが!)、、、
「もっともっと燗酒の楽しみを知りたい」
「お燗酒の良さを広げたい!!」
と…

もう一人のお燗酒名人のもとへと、神楽坂に向かいました。

極上の燗酒を堪能する幸せ

JR飯田橋駅で降り、神楽坂(軽子坂方面)にある「CHILL Ksgurasaka」さんへ。

今日はいつもとは違うスペシャルデーで、伝説のお燗名人多田正樹さんが立たれるということで、お邪魔しました。
多田正樹さんといえば、dancyu日本酒特集号などでも、お燗酒の指南をされていますが、、、、、現在は特定のお店にいらっしゃらず、出張お燗番やお酒全般のプロデュースやコンサル、古美術商さんとの酒器のご紹介等もなさっています。
神楽坂の「ふしきの」、「蒼穹」時代に、匠の技を幾度も見せていただいていましたが、リアルな多田さんのお燗酒をいただくのは、久しぶりになります。

多田正樹
多田正樹さんの美しい手元・匠の技

お酒やお客様をみて、色々な燗付けのお仕事をされており、まさに職人技。とっくりは、銅だったり、錫、フラスコだったり、色々な器で燗を付けていきます。

今日は、ちろりでずっと同じお酒を飲むのではなく、食事を通して一銘柄ごとに違う徳利と平盃、ぐい吞みなどで、ちょっとずつ贅沢に頂きました。


チリ 酒器
作家さんの徳利や猪口もあり楽しめます
チリつまみ
軽やかな酒のつまみも嬉しいです

ベストな温度のお燗酒ばかり8種類。少量ずついただき、最後まで美味しくいただけました。

8種類間の、〆の日本酒は?

どれも印象深いお酒でしたが、驚いたのが、最後にでてきたアルコール度数が低めのお酒。

山廃や無濾過生原酒でアルコール度が17度位のお酒、熟成したお酒等、色々と飲んできて、、、最後には、長期熟成酒でがつんとくるのか?、デザートに合わせて甘いお酒なのか?
〆にどんなお酒が選ばれるのか楽しみにしていたところ、こちらのお酒がつがれ、さらに、低アルコールだと聞いてビックリ!!

日本酒として「低アルコール」というと、ちょっと甘かったり、酸があったり、また発泡感を持たせたりすることでバランスをとっている日本酒が多いのですが…

板倉酒造さんの天穏生酛純米吟醸酒は13度ながら、従来のアルコール低めの日本酒のイメージとは全く違います。
突きハゼ3日麹、二火で桶貯蔵。奥出雲産改良雄町100%。精米歩合60%。令和二年度醸造。日本酒度+4。
生酛による酸も旨味もあり、アルコールが低い感じはしないのですが、飲んでいても深みのある柔らかな味が口内で優しくきれいに漂い、余韻も上品にすーっとキレていき、とても満足感があります。

ここまでも色々なお酒を飲んできて、最後に低アルコールというと、存在感が薄くなりそうなものですが、、、

そうではなく、
香味バランスもよく、しっかりと心に残る日本酒としての存在感がありながら、「でも優しい」という、なかなかお目にかかれないお酒でした。

「また、日本酒を!」と、思はせてくれる穏やかな幸福感に満たされる〆の一杯でした。

多田正樹さん、美味しいお燗酒、至福の時を、ありがとうございました。

プロのようにはいかないまでも、今日ご指導いただいた、ワザも頭におき、おうち居酒屋でもお酒の提供温度を探り、燗酒ライフを楽しんでいきたいものです。



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