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1932年の映画『フリークス(怪物團/神の子ら)』ラストネタバレあり

Freaks/NATURE'S MISTAKES/THE MONSTER SHOW 製作国:アメリカ上映時間:65分 監督/トッド・ブラウニング 脚本/ウィリス・ゴールドベックレオン・ゴードンエドガー・アラン・ウールフ 出演者/ウォーレス・フォード オルガ・バクラノヴァ ロスコー・エイツ レイラ・ハイアムズ ハリー・アールズ ジョニー・エック ヘンリー・ヴィクター デイジー・アールズ ローズ・ディオン デイジー・ヒルトン



面白かった。

まず映画の作りとして至極真っ当。

冒頭でこの映画のテーマを語る。


「人は彼らを嘲笑い震え上がる。
だがこれはあなた方にも起こり得たことです。
彼らも望んでこうして生まれてきたわけではない。」

「彼らには掟がある。
1人が怒りを感じたら全員で怒りを共有するのです。」

↑マイノリティが全員同じ考えだという設定はとても雑だけど1932年なんだしいたしかたないかな。

2023年の今でもマイノリティは一枚岩だという幻想を持っている人は多くいるし。
(だから「ゲイ当事者でも差別はないって言ってる人がいる」っつってゲイに対する差別はないと主張したい人は後を経たない。ゲイにも右翼はいる。)

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感情表現がとても丁寧(ハンスとフリーダの演技が特に素晴らしい)だし

クレオパトラとヘラクレスがほんとにクソで
こいつらの言動にいちいち腹が立つし
こいつらに傷付けられていく彼らを見て苦しいし
ちゃんとフラストーションが溜まっていく。


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劇伴もあるんだけど、
サスペンス度が高いシーンほど無音。

毒を盛るシーンとかじっくりねっとりと無音で淡々と見せる。

知的な演出。
画面に吸い込まれる。


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からのラストの復讐劇ですよ。


痛快。

馬車の下に潜って移動したり
階段の隙間から監視したり
泥の中を突き進む彼らがどう見てもかっこいい。

「こんな泥水、俺たちが飲まされてきた泥水に比べたらミネラルウォーターのようだぜ」とばかりに泥水の中を突き進む。
痛快です。


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1932年の作品。


公開当時物議を醸し、イギリスでは30年間上映禁止された。

しかし1994年にはアメリカでフィルム遺産として登録され
2005年には日本でデジタルリマスター版が公開。


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この映画は興業としても失敗したし
監督のトッド・ブラウニングは今作でほぼキャリアが終わってしまった、と。

トッド・ブラウニング本人はサーカスの出演者と親交があったので、映画に彼らが本人役として出演するのは普通のことだったし、

むしろ凶悪な健常者の方を〝フリークス〟として描くこの映画のスタイルは批判されるものではないはず。

ただ、
下半身欠損のジョニー・エック以外の出演者はこの映画に出演したことを恥じていたようで

おそらくあまりにも批判を浴びたことで
「出なきゃよかったな!」ってみんな思っちゃったのではと勝手に推察。

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さすがに現代でもこのままマルッと広く受け入れられることはないだろうけど
この痛快さは大きな魅力。

障害者を感動ポルノとして「泣いた〜泣いた〜」と消費し続けている2021年は依然として醜悪。

そんな輩に「感涙必死っ!じゃねーよっ!」と復讐する痛快映画、観たいけどなぁ。

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出演者の皆さんにこの映画に出たことを誇りを持って欲しかったなぁ。



ラストネタバレは以下に。


ハンスには多額の遺産があることを知ったクレオパトラはハンスを騙して結婚。

結婚の宴。

クレオパトラはハンスのワインに毒を盛る。
(即死させるんじゃなくて体を弱らせて病死させるのが目的)

酔っ払ったクレオパトラとヘラクレスはサーカスの団員たちに罵詈雑言を放つ。

ショックを受ける団員たち。
ハンスも疑問に思い始める(でもまだクレオパトラを信じている。せつない!)。

寝込んでいるハンスにクレオパトラはさらに毒を飲まそうとする。

毒を掬ったスプーンをハンスの口元に近づける。
無音。
口に含んでしまうハンス。

それを見てキッチンに戻るクレオパトラ。

ハンスは口に含んだ毒をハンカチに吐き出す。

嵐の夜。
「今夜決行だ」
ハンスたちは決心した。

寝る前にまたクレオパトラがハンスに毒を飲まそうとする。

ハンス「瓶を見せろ」

クレオパトラはやばいバレた!ってな表情。

ナイフを拭く男。
ピストルを拭く男。

「この毒で僕を殺すつもりだったんだな」

クレオパトラは逃げる。
助けに来たヘラクレスも腹にナイフを刺され、嵐の中泥水にまみれながら逃げる。

しかし、馬車の下をスイスイ進む彼ら。
泥水などもろともせずに、手足欠損のプリンス・ランディアンも口にナイフを咥えながらヘラクレスに向かっていく。

チームワークと技能を駆使して追い詰めていく。

復讐の鬼と化した彼らの目がカッコいい。

ここも無音。
吹き荒ぶ雨と風の音のみ。

後日。
見せ物小屋で鶏と融合されたクレオパトラが展示され
それを見た観客が絶叫。

クワーックワーッと人間の言葉を無くしたクレオパトラ。

豪邸。ハンス。
執事「どうしてもお会いしたというお客が」
ハンス「誰にも会わない」
心を閉ざして暮らしていたハンス。

強引にビーナスとフロゾがフリーダを連れてきた。

ビーナスとフロゾは同じサーカスの団員で健常者。

フリーダはハンスの元婚約者。

フリーダ「ビーナスとフロゾのような親切な人もいる」

フリーダ「あなたは悪くないのよ」

ハンスに近づくフリーダ。
その様子を見て「もう大丈夫ね」的な感じでこっそり立ち去るビーナスとフロゾ。

フリーダとハンス、抱きしめ合う。
フリーダ「もう苦しまないで。愛してる」

おわり

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