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レアル・ベティスの守備とバルセロナのビルドアップ

1.はじめに

今節はキケ・セティエン監督の古巣「レアル・ベティス」とのアウェイ戦でした。

直近のコパ・デル・レイの「ビルバオ」戦では、低い位置からのビルドアップ時はGKテア・シュテーゲンを除くフィールドプレーヤーにマンツーマンをセット。
セットが完了したら初めてFWがカバーシャドウでマーカーを背中で消しながらGKにプレスをかけるという再現性のあるバルセロナ対策で敗戦しました。
バルセロナはGKを含むビルドアップを仕掛けた際に、ロングフィードの選択肢がない(選手の特徴から持てない?)という点に着目した好ゲームでした。スタジアムの雰囲気も最高なので、ぜひ見てください。

話を今節に戻します。
ベティスの本拠地「エスタディオ・ベニート・ビジャマリン」の雰囲気は試合前から最高です。タオルマフラーを掲げ、戦う意思を見せるサポーターには心が震えます。
数試合見ただけですが、スペインリーグは、相手が強豪であればあるほど、最高の応援を見せつけるチームが多いように感じます。それだけのリスペクトを感じます。
(戦力・金銭的な意味で)ビッグクラブ同士の戦いも楽しいですけど、リーグ戦1つ1つも楽しいです。

試合を観ていきます。
今回のテーマは「レアル・ベティスの守備とバルセロナのビルドアップ」です。

2.スターティングイレブン

バルセロナボールでキックオフとなったこの試合。
バルセロナはロングフィードを蹴るチームではないので、各選手のポジションはすぐ分かります。
DAZNの予想フォーメーションとは違いました。

図1 スターティングイレブン

ビダルをトップ下に置いた1-4-1-3-2がこの試合でキケ・セティエンが選択した戦い方でした。
それに合わせる形でベティスも1-4-1-2-3に変化。
メンバーは同じでも戦い方を変えられるのは両軍強みですね。

3.レアル・ベティスの守備規準

タイトルの通り、今回はレアル・ベティスの守備とバルセロナのビルドアップを見ていきます。
なぜこのテーマかというと、ベティスの先制点、バルサの同点は互いの狙いがよく見えました。
そして再現性のある動きでありつつも、上手くいったパターン、上手くいかなかったパターンが明確で面白かったからです。
まずはベティスの守備基準から確認します。

図2 レアル・ベティスの守備基準

レアル・ベティスの守備基準

①CF9はアンカーを背中で消すポジションから、GKへのプレス
②SH8、24はボールサイドではSB番。逆サイドではCB番。
③IH14、10はボールサイドではIH番。逆サイドではDH番。
④SB15、22はスペース管理。SBへの警戒強め。

4.バルセロナのビルドアップ失敗編

この試合は中盤がダイアモンド型ですが、それに限らず、キケ・セティエンのバルセロナの(ディフェンディングサードでの)4バックビルドアップには特徴があります。
大体、両SBがアンカーと同じ高さを取る事です。

図3 バルセロナのディフェンディングサードでのビルドアップ配置

SBにビルドアップ能力が秀でている選手がいる場合、片方のSBだけあげて、もう片方は残ってビルドアップ(3バック化)したり、サイドアタックに優れたSBを高い位置でプレーさせる為に両上げ、IHやDHが降りてビルドアップというのはよく見かけますが、バルセロナは両サイドバックをビルドアップにあてます。
(その狙いは後述の成功編で見えてきます。)

バルセロナの両サイドバックは確かに上手なのですけれども、その上手さはビルドアップ能力というよりもサイドアタックに関わるランニングの質だったり、止める、蹴るといった部分です。
なのでよく詰まるのですが、詰まるとIHが降りてきます。

図4 ビルドアップに参加するIH

一見、気の利くプレーに見えるのですが、実際はSBが列をあげてグレーのスペースを使うわけではないので、ただ相手DFを引き連れ、自分たちのアクションでより窮屈にしてしまっているのです。

※今節に関してはグリーズマンが流れてスペースを使おうとしていましたがCBがついてきてしまい、相手SBをピン止めし、IHにスペース創出とはなりませんでした。

また、フレンキーは降りる回数が試合を重ねるに連れ減っていることから、セティエンにとってIHが降りることは理想通りではないと推測しています。

それではベティスの先制点を見ていきます。

右サイドからスタートしたビルドアップですが、SHにピッチを横断するパスコースを消され、再度、右サイドに戻します。

※少し溜めた後にターン。同サイドにもう一度戻すリセットは相手DFをスライドさせるという意味で大切ですが、今回は遮断されていた為、そもそも相手をスライドさせられていないです。(=守備基準を崩せていない)

図5 失点場面の再現

今節、右CBに起用されたのは左利きのウムティティ。
彼の選択肢(プレーの可能性)を考えてベティスが行った守備は以下の通りです。

①9番のプレスにより誘導され残るパスコースは2つ。
②SBへの横パスのコースは8番が遮断。
③ギャップへのパスは14番が門番となり、奪取。
④SBはスペース管理。

セルジ・ロベルトは直近、WG、SB、CBと背中から圧力を受けるポジションでのプレーを行っていなかったこともあり、自分の背中のスペース(=相手との距離感)の把握やターンの選択に難がありました。
その結果、よりスペースのあるエリアへ降りる選択を選びましたが、より圧力を受ける結果となり、爆弾を渡すようなパスからセメドがロスト。
ショートカウンターから被シュート、ハンド、VAR、PK、失点に繋がりました。

それではどうすれば、回避。
そして得点に繋げることができるのかというと、後述の成功編です。

5.バルセロナのビルドアップ成功編

前述では失敗のイメージが強く残り、そもそも4バックビルドアップに向いていないという判断に陥りそうですが、セティエンが4バックビルドアップに拘り、その結果なにを求めているのかは同点ゴールにあるように感じます。

図6 得点場面のビルドアップで出口となるIH

ベティスが9番のプレスで守備スイッチを入れた瞬間、ボールの回収地点は右サイドに設定されました。
先制点同様、左利きのウムティティに、IH、もしくはDHへパスを誘導すれば門番がいますから、圧縮をかけてボール奪取が成功という流れでした。

しかし9番のタスクとして、DHのブスケッツを消す事があります。
この場面では10番が代わりにマークしてくれていたので、ピッチを横断させない為にGKテア・シュテーゲンとDFラングレーを切るポジションを取るべきでしたが、良くも悪くも気が利く良い選手なんでしょう。献身的にブスケッツへのパスコースを消してしまいました。

結果、ピッチを横断する横パスに成功。
人はボールより早く動けないので、10番と22番にマルチタスクを与えることに成功し、IHを出口としたビルドアップにバルセロナは成功しました。

さて、4バックのSBをビルドアップで低い位置の大外で張らせる狙いですが、崩しの局面同様、ピッチ中央のスペースを広げる為だと推測します。
仮にフィルポが内に絞っていたら。恐らくフレンキーへの縦パスはエメルソンにカットされていました。
仮にフィルポが高い位置を取っていたら。恐らくフレンキーがターンするスペースをフィルポが使っていて、エメルソンに埋められていました。
この試合、フィルポは久しぶりの試合出場ということもあり、あまりいいパフォーマンスで試合をしたとは言い難いです。
しかし、エメルソンを引っ張り出し、ラングレーに縦パスを刺すように指差しで指示を行っていたフィルポにはこの景色が見えていました。GOODプレーです。

6.おわりに

ビルドアップの失敗と成功の一番の違いはIHのポジショニングだと思います。
(もちろん絶対に降りるなと言っているわけではありません。相手・味方の状況次第です。)

フレンキーは、怪我明けのセティエンの2戦目でどうしても列を降りてしまったり、外に開いたりと、広いスペースでボールを受けることを選んでいました。

しかしMF-DFライン間にポジションを取り、降りさせない。逃げさせない。戦わせることを続けた結果、元々の空間認知能力とターンの技術。プレス耐性が合わさり、素晴らしいボールの受け方を見せてくれました。
またゴールシーンも同様で、エリア内に侵入し、責任負い、シュートを打つことをしっかりと成し遂げてくれました。

この試合、右IHで起用されたセルジ・ロベルトは前述した通り、直近では、WG、SB、CBと、背中から圧力を受けないポジションでプレーしていました。
その為、より広いスペースへ、より安全にターンができるエリアへと動いてしまったのかもしれません。
まして対人の相手は、リーチの優れたウィリアム・カルバーリョでしたから。
しかし、フレンキー同様、試合を重ね、フィジカルトレーニングや回復メニューから戦術トレーニングへと移行するごとに改善されることだと思います。それはチームの伸びしろですから、とても楽しみです。

次節は今週末に現在3位のヘタフェ戦です。楽しみですね!

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