長瀬敏和先生(Sax) × 福田洋介(Comp)
2/4、くらしき作陽大学で開催された、長瀬敏和先生のリサイタル。
1部ではトラッドな音楽をサクソフォンで。
バッハ、ヴォーン・ウィリアムズ、ドゥメルスマンの各作品、厳格な形の美しさとサクソフォンの響きのマッチングがとても心地良くて、そして先生の演奏も優しくそして雄弁でした。ドイツ、イギリス、フランスの音楽語法の差異も明確に表現してくださり…勉強になりました…!
2部は福田さん特集。
しかも、ピアノ伴奏だけでなく、ドラム奏者も活用できるとの情報を下さいました。
もともと、昨年(2022年)3月にリサイタル開催予定で準備していたのですが、コロナ禍の影響で大きく延期され、満を持しての今回の開催。
先生が選曲してくださったのは、
・風へ祈る
・委嘱新作
・ガラスの香り
・さくらのうた(アンコール)
…3月開催予定だったので、春仕様のラインナップ。
〇風へ祈る
静謐な和音と優しく真剣な旋律。会場が張り詰め息を呑むような祈りの共有。演奏が終わった時に、浄化されたような溜息の拍手。
〇One Week Divertimentox
曲の内容については下記別掲。全30分の濃密な空気感、コンセプトも相まってライブの様な音楽になりました。
〇ガラスの香り
ドラム、ピアノを交えて超オシャレに終始。当然なのだけど、とてもとても大人の音楽。
〇さくらのうた
アンコール前にステージ上で話しました。「実は私は、先生と誕生日が同じなんですよ(4/19)」。先生、とても驚いておりました。その春という時期を節目に共通する感覚。とても幸せな音楽でリサイタルを閉じました。
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委嘱新作のこと。
先生から、内容はお任せします、と頂き創作。しかしながらこちらからメッセージ上で取材させて頂き、長瀬先生がサックスを通じて伝えたい音楽観、そしてメッセージを代弁したいと考え、下記のコンセプトに。
・1曲につき1つのキー。Cm,Dm,Ebm,FM,Gm,Am,BMを基軸に
・すると7つの楽章になる。ディヴェルティメントと称した作品。
・曜日…!?
・先生の人生の中での音楽原始はロックやポップス、クラシックは後から
・約50年間音楽に関わって来た中でうかがえる音楽の多様性
・先生の生まれた日は日曜日なので、それを終曲に。
1.Blue Moon (Monday)
4ビートのスウィング。Cminor。月のイメージと憂鬱の境目。
2.Spout of Words (Tuesday)
ショー音楽の2ビート。Dminor/Fmajor。「溢れ出す言葉」ひたすら8分音符がつづられる。
3.Sacrifice (Wednesday)
重々しい空気に支配されたEbminor。「犠牲」もしくは「懺悔」。淡々と改心の祈りを告げる、終始ルバートの調べ。
4.The Song of Sky (Thursday)
Fmajor。木曜日の語源は"Jupiter"から。先生のクラシック原始が「惑星」というエピソードも重なり、当然のごとく、Jupiterの旋律をそのまま活用して、空を見上げて熱唱する歌に。
5.The Gloss (Friday)
プログレ・ロックにイメージを求めたGminor。ソプラノサックスがメタリックに吠え、ピアノとドラムもグルーヴィに突き進む。途中5/8拍子のトリッキーな展開も。
6.Evening Dance (Saturday)
土俗的な6/8拍子、Aminor。Saturdayが「安息日」「農耕」に由来するので、アイリッシュに酷似した旋律とリズムを、やはりソプラノサックスで。
7.The Brand new day (Sunday)
バラード、Bmajor→Cmajor。先生が一番最初に自分の小遣いで入手した音楽がThe Beatlesのアルバム。そしてフォークブーム真っ盛りの中へ音楽に熱中した、とのエピソード。
その先生の少年時代をオマージュするつもりで作って渡した旋律。音楽に触れ続けて50年の身体から滲み出て来る心打つ「歌」となり、静かに癒され涙が止まらなかったです。会場全員の心を打つ音楽となって返ってきました。
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最後に、先生とのやりとりで頂いた言葉を引用します。
美しい音で空間を満たしたい
自分の声のように演奏したい
その瞬間の音楽を共有したい
一つの音、一つのフレーズで心を掴む存在でありたい
この事をそのまま体現されている現役の音楽家。
拙作を取り上げて下さり、心から感謝と敬服申し上げます。
2023.2.7
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