ドイツより(コロナ関連) - オーケストラ再開への道

オーボエ奏者・末松圭志様より、情報を頂きました。

ドイツ情報をお送りいたします。

5月5日にバンベルク交響楽団が管楽器のエアロゾールテストを行った、というニュースが出ております。

https://www.br.de/nachrichten/bayern/bamberger-symphoniker-wissenschaftler-messen-aerosolausstoss,Ry6T6OU?fbclid=IwAR2v1zWuR7IiZtKvJpE4DD9UMK4l1ixr9ofVFnPhMZroBWjPNHHEDWmM62w

新型コロナウィルスの感染ルートとしての空気感染の危険を考慮して、演奏中にコンサートホールでのマスクを使用できない管楽器の空気の動きを検証する実験が行われました。方法は人口的な霧を発生させて、その中で演奏し、霧の動きを
見る、という方法でした。この結果、3~12メートルの間隔を推奨するという事らしいです。ファゴットのトーンホールや、トランペットのベルからの霧の動きはほとんど認識できず、それに対し、楽器を持たずに直接霧に空気を吹き込ん
だり、咳をした時の方が霧の動きははっきり見られたそうです。実験は研究室でも続けられ、結果をベルリンとミュンヘンの細菌学者に報告し、政治への安全性の証明として活用する目的です。検査結果が、ドイツには130のプロのオーケ
ストラが、楽員同士、観客に対して安全に演奏できるようになるだろうと、希望を抱いております。

ミュンヘン防衛大学での調べで、空気感染する可能性は少ないとコメントしています。
https://www.swr.de/swr2/musik-klassik/kirchenmusik-im-abseits-100.html

3月にベルリンのドーム合唱団で50名の集団感染が起きました。この状況を調べていたミュンヘン防衛大学は、歌は咳やくしゃみと違い、空中に細菌をばら撒く濃度が違う。空中感染というよりも、特に接触挨拶が盛んな合唱団の慣習、休憩時の談笑から起こる感染の可能性が高い、としています。

動画では、1.人間の普通の呼吸、2.叫び声、歌、トランペットでの空気の動きは限定的。ファゴットでは1m。フルートでは1m。次にマスクをかけない場合とかけた場合の違
い。結論として歌と大きな管楽器はよく換気された部屋で、1,5メートルの人との間隔を保てば感染確率は低い、という事です。木管楽器に関しては薄い布のような物で防御する事を推奨。

ベルリンのシャリテ大学とミュンヘン防衛大学の研究がを総合的にまとめたのがバイエルン放送局のニュース。管楽器奏者にとっては朗報です。
https://www.br-klassik.de/aktuell/news-kritik/corona-infektion-gefahr-musiker-blaeser-studie-charite-bundeswehr-100.html

◆研究者の重要な提言

◇管楽器
●最低1,5 m間隔(ミュンヘン防衛大学)、最低2m間隔(シャリテ大学)
●できればフルートの歌口の20センチ前に薄い布を配置する
●金管楽器をアクリル板などで囲む
●管内の水滴を布で吸収

◇他の楽器と歌手
●最低1,5 m間隔
●指揮者1,5 m間隔、できれば2m

◇基本的条件
●よく換気する
●手を良く洗う
●できる限りマスク着用

両方の研究をまとめると、管楽器の演奏はしゃべるよりもずっと外へ出る空気の勢いが弱く、感染につながる危険は少ない。金管楽器は0,5 m、フルート以外の木管楽器は1m強、フルートの場合は離す場合よりも前に空気が出る事がある、という事で、この危険範囲内よりも外側に居れば、感染の危険性はほぼ無い、という事です。
シャリテ大学では空気中に感染が広がるエアロゾール現象より、管楽器の水滴が危険である、と警戒しています。今までは金管楽器では排水キーや管を外して水滴を床に垂らしていました。木管楽器も水滴を床に落としています。ここにウィルスを室内に蔓延させる危険があると指摘。

その他、ドイツのオーケストラ組合は弦楽器に関して、一人に一つの譜面台を提案しています。

◇上記研究のもっと詳しい内容は(ドイツ語)
https://orchesterland.wordpress.com/2020/05/07/wichtiges-update-aktualisierte-covid19-sicherheitsbedingungen-fuer-orchester/?fbclid=IwAR1CbXFIZVWb8y6_yveE6HDbbhRIDzVdxr_RLs2YQiaGqVGy4gxZtbM8Guk

◇どれくらいの安全距離がフルート奏者に求められるか?(ドイツ語)
https://www.deutschlandfunkkultur.de/corona-konzept-der-charite-fuer-orchester-wie-viel-abstand.2165.de.html?dram%3Aarticle_id=476280&fbclid=IwAR3kR_LFJHcXxng80KJKnyRcdvRTZLKktE_eh_AoLcZf5-EcJwe2c4mUoVA


■何時から歌劇場、コンサートホール、映画館が再開できるか?
バイエルンの文化展望■
https://www.muenchen.de/home/veranstaltungen/aktuell/2020/corona-wann-oeffnen-theater-konzertsaele-kinos-wieder.html?fbclid=IwAR2f4FlIVGsVogpwXNjonWVyUAYYcG7wKBqk4SeF8LjYJoevNlXSSJmgSAo

ドイツの文化芸術大臣は劇場を徐々に再開するに当たっての注意事項をまとめました。(バイエルン放送、5月18日)
https://www.br-klassik.de/aktuell/news-kritik/kulturminister-oeffnungsstrategie-theater-konzerte-planvolle-oeffnung-merkel-sibler-100.html?fbclid=IwAR2VkUZ0x4-oNUvu1n7jkaNzVyDhAs4x_GX3UbvcnjPl403CQbt4fW1kWxs

連邦と州の文化芸術大臣の会議で、コロナ感染対策により閉鎖されている芸術活動の再開方法について話し合われ答申を提出。この元に首相と州知事会議による芸術活動再開が決定されます。主な概略は次の通り

〈観客〉
客席を制限し、席(隣の)(前後)一列を空けるようにする。チケット販売により席の最低間隔をコントロールする。チケット購入の列を避けるために発売をオンラインと時間枠を設ける。入場の流れをスムーズに行うために、チケットもぎりを止め、スキャンと、入場の時間を区切って行う。ホールや会場のエアロゾールを軽減するための措置を取ることを推奨する。観客のデータを、後に感染の為に追跡が必要になった時の為に記録する。

〈出演者の保護〉
出演者に関しては、舞台のソリスト、オーケストラ団員、合唱団員、ダンサー、役者などにより、個々に合ったルールが必要である。練習場やロッカールームはより人員制限が必要である。出し物に関しては、これらの条件に叶った変更が必要で、柔軟的に行う必要がある。

〈野外公演と小さな編成を推奨〉
首相と州知事への答申には、なるべく早い時期の、全ての芸術分野での練習の再開をうながし、屋内、屋外での小さな編成の公演に許可を出すべきである。並行して野外公演、または小さな編成での短い出し物を何度も上演する方式を提案する。

ヴィーンフィルも独自でエアロゾール検証を行いました。
https://wien.orf.at/stories/3049099/?fbclid=IwAR3Q0zrC88jAfVVRfT4SzJHuk-ZOQAwkInlnn5nIYktPar5S-8hpiJ1H-zc

ヴィーンフィルの検証では、最高でフルートの75センチ。80センチ以上、楽器演奏によるエアロゾール飛散は無いだろう、というのが結果の様です。ドイツよりも数値が低いですね。

オーケストラ代表のダニエル・フローシャウアー氏の弁では、「演奏中に他人に感染させる可能性は殆どあり得ない。管楽器においても、考えられているずっと安全。」
オケピットでは透明なアクリル板を使用しますが、ステージでそれを用いることは考えられない。
「我々はウィーンフィルで、最高の芸術を提供する仕事をしています。各々がプラスチックの囲いに入ったら、それが困難になります。」

オーケストラは、6月に、ニューイヤーコンサートのバレエ場面の録音に入りたいと考えております。記念コンサートを観客無しでオンラインストリームで流す計画もあります。また夏のザルツブルク音楽祭で、9月18日に延期した「夏夜のコンサート」の実現の夢を捨てていません。

一つ問題があります。定期演奏会で、客席を一列づつ座れない状態で、半分の客を断らなければいけない事です。
「同じプログラムを単純に2回演奏する事は、芸術として考えていない。」

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