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オフィスビルのあるべき姿~清水建設北陸支店


清水建設北陸支店の新社屋を視察に行きました。2021年5月に新設され、1年間で220組の視察が訪れたという正に注目の再エネ・新エネ・省エネ社屋です。この社屋、様々の部分で工夫があるのですが、今回は水素エネルギーに関連する分野だけお伝えします。140KWの太陽光発電から水電解装置でグリーン水素を製造し、水素吸着合金で貯蔵、電力需要によって燃料電池を使って水素と酸素で発電する、という水素エネルギーシステム「Hydro Q-BiC」を採用しています。こうした水素関連設備は、社屋内の1階に設置されています。社屋の外に設置するケースもありますが、都市部など限られた面積の場合は社屋の中に設置することもあり得ます。社屋内での二酸化炭素削減設備に関しては、容積率にカウントしない等、施策の充実も望まれます。

水電解装置は日立造船、水素吸着合金は、清水建設と産業技術総合研究所(産総研)が独自開発したものだそうです。水素吸着合金は、水素を金属に吸着させる為、消防法上は非危険物、また、1MPa(10気圧)未満の圧力での取り扱いのため高圧ガス保安法の適用外にもなります。そして、常温常圧での水素に比べると1000倍の貯蔵ができるのです。燃料電池は東芝製のH2Rex、北陸支店では最大で電力2000kWh分を蓄えることが出来るそうです。

北陸支店には、水素で蓄える仕組みとは別に、蓄電池も装備されているので、両者でエネルギーを蓄えています。太陽光パネルで電気を発電し、社屋にそのまま使う。蓄電池に電気として蓄える。水素にして、吸着合金で蓄える。この3つのルートをBEMS(ビルディング・エネルギー・マネージメントシステム)によってコントロールしています。また、汲み上げた井戸水で水素の蓄電設備を冷やしているのです。

休日は会社がやっていないので、社屋の通常使用がありません。その為、太陽光で発電した電気も社屋では使わないので、水の電気分解に回して水素をつくって貯蔵する、蓄電池に回して蓄電するというシステムが稼働します。平日は、太陽光発電による電気は、そのまま社屋の電気として使用し、電力需要が高まる時は、外部からの電気を減らし、燃料電池、蓄電池からの電気を使います。災害時等、外部からの電気が手に入らない場合は、太陽光発電による電気、蓄電池の電気、燃料電池の電気をフルに使って北陸支店の運営を72時間継続できます。

2050年にカーボンニュートラルを目指すなら、全ての業界、全ての国民が足元から協力しないと達成することは出来ません。「誰かがやる」から「自分がやる」に意識改革をするということです。清水建設北陸支店の試みは、正にこれからのあり様です。先ずは、北陸支店に視察に来た220組の方々が、見ただけではなく、自分たちとの違いを見つけ出し、出来ない理由を構築することではなく、具体的にどうやってやるかを早期に決め、実行に移して欲しいと願うばかりです。

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