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ばらの分類と系統を素人目線で勉強No.1

“花の女王”とも呼ばれ世界中で愛されるバラです。品種改良によって数万種もの種類が存在する。一口にバラといっても咲き方・花弁の形など様々です。四季にバラ園に出かけるがネームプレートには「系統名」「花名」の表示がある。バラの歴史はあまりにも古いのですがそれはさておき、素人バラ知識入門レベルの知識を吸収したい。その結果、バラの鑑賞・写真撮影等で見るポイントも違ってくると思われる。これから基本的な項目から勉強していきたい。今年シーズンインしたらバラ園巡りが楽しみだ。

1.バラの大分類(原種・作出時期による分類)

①ワイルドローズ(野生種)

ワイルドローズは原種や野生種ともいう。世界中に200種類があると言われている。主に北半球に分布して、その多くはアジア原産です。この原種からバラの歴史は始まっています

②オールドローズ

古代ペルシャ時代から、香料や薬用としてバラの栽培が始まりました。1867年以前に作出された原種のバラを親に持つバラをオールドローズと呼びます。その殆どの種類が、春に咲く一季性のバラです

③モダンローズ(現代バラ)

1867年に作出されたハイブリッドティー種(HT)である「ラ・フランス」以降に開発されたバラを、モダンローズと呼ぶ。それ以降の作出されたバラの総称をモダンローズと呼ばれる。


2.バラの系統図 

オールドローズからモダンローズの系統

オールドローズからモダンローズの系統

3.原種の代表的な種類

原種(Species)とは、バラの品種改良に貢献した野生種のことをいう。バラの歴史はこの原種から始まっている。原種バラの殆どはシュラブ樹形かつるバラで、春のみに開花する「一季性」が殆どとなります。但し、中国に自生していたとされる「庚申バラ(ロサ・キネンシス)は四季咲き性を有した品種があり、後のバラの発展に大きく貢献した。日本の原種でノイバラが最も有名です。原種バラが自然交雑されて誕生した品種もある。
以下代用的な原種の種類です

◉ロサ・ガリカ☞最も古いヨーロッパの野生種で、赤いバラの祖 (ヨーロッパ)

◉ロサ・ダマスケーナ☞ダマスク香の芳香品種のあるバラの誕生に貢献
(ヨーロッパ)

◉ロサ・モスカータ☞多花性のバラの誕生に貢献 (中国・北アフリカ)

◉ロサ・キネンシス☞四季咲き性のあるバラの誕生に貢献 (中国)

◉ロサ・キネンシス・ミニマ☞ミニバラの祖で、様々なミニバラの園芸品種やポリアンサローズの誕生に貢献 (中国)

◉ロサ・ギガンティア☞剣弁の花弁と紅茶の様な香り成分ジメトキシメチルベンゼン(ティーローズ・エレメント)のあるバラの誕生に貢献 (中国)

◉ロサ・カニナ☞ドッグローズと呼ばれるヨーロッパの園芸品種の台木 (ヨーロッパ)

◉ロサ・ムルティフローラ☞ノイバラ。日本の園芸品種の台木。19世紀初頭にヨーロッパに渡り、ランブラーローズやポリアンサローズの作出にも貢献(日本)

◉ロサ・ウィクライアーナ☞テリハノイバラ。19世紀末にフランスやアメリカに渡り、ツルバラの誕生に貢献 (日本)

◉ロサ・フェティダ☞黄色いバラの誕生に貢献 (中近東)

◉ロサ・ルゴサ☞耐寒性のあるバラの誕生に貢献 (ハマナシ ・日本)

代表的な原種で10種程度に集約され、これらの血筋をもとに、数多くのバラの園芸種たちはいずれかのグループ=系統に分類され、系統名から品種の特徴を大まかに判断できる。原種をベースに、オールドローズ時代品種開発が多岐に行われて主な系統が下記の通りです。

4.主なオールドローズの系統について

1967年に作出された初のハイブリッドティー種である「ラ・フランス」以前のバラを総称して指しますが、学術的に明確な定義がある訳ではなく、便宜上の分類のようです。オールドローズは「前期オールドローズ」と「後期オールドローズ」と区分され、庚申バラの本格的な交配が始まる前と後で区分されている

主なオールドローズ系統

1)〜5)  前期オールドローズ  6)〜  後期オールドローズ

1)  G.   ガリカ系 ☞最も古くからあるバラ。 ロサ・ガリカを起源とする品種群。「燃えるような赤いバラ」との記録の残る赤バラの祖として重要な系統。
・全て一季咲き・半つる性〜立木性・香強い・中輪

2) D.    ダマスク系 ☞「ロサ・ガリカ」と「ロサ・モスカータ」「ロサ・フェニキア」の交雑で生まれた品種群。「ダマスク香」の名前で有名。その香りが評価されブルガリアや南フランスでは香料として利用。庚申バラとの交配で新系統を誕生させています。白〜淡いピンクがメイン。
・一季咲き・半つる性・香強い・中輪

3)  A.  アルバ系 ☞ 「ロサ・カニナ」と「ダマスク系」との交配で生まれた品種群 (欧州と西アジアに分布する野生バラの自然交配とも?)
白バラの祖として重要な系統。清涼感ある芳香が特徴
・一季咲き性・立ち木性・香り強い・中輪

4)  C.   ケンティフォリア系 ☞ダマスク系品種とアルパ系品種の交雑で16世紀ごろ生まれた品種群 系統名は「100枚の花びら(又は葉)の意味。重ね多い花でカップ咲きの品種が多い。
・一季咲き性・つる性・香中・中輪

5)  M.  モス系  ケンティフォリア系品種の突然変異で17世紀末生まれた品種群。多くの棘に覆われて、優雅な雰囲気に溢れたている。一部にダマスクローズ起源の品種も存在している
・一季咲き性・つる性・香強い・中輪

6) Ch.    チャイナ系 ☞中国のロサ・キネンシスを起源とする品種群
・主に四季咲き性・つる性〜立木性・香中・中輪〜大輪

7)  P.   ポートランド系 ☞オータム・ダマスクとスレイタース・クレムソン・チャイナ(庚申バラ)の交雑で生まれたと推定。基本品種ダッチェス・オブ・ポートランド(1800年)をポートランド侯はく夫人がイタリアで見つけ、イギリスに持ち帰ったとされる。
ブルボンローズより返り咲く品種が多く見受けられる
・返り咲き性・半つる性〜立木性・香中・中輪

8)  N.   ノワゼット系 ☞ ロサ・モスカータとオールド・ブラッシュの交雑で生まれたとされるチャンプニーズ・ピンク・クラスター(1811年)が基本品種。このバラの実生品種ブラッシュ・ノワゼットがノワゼット兄弟によりフランスで広められた。例外もありますが多くの品種が返り咲き性に優れている。家庭用のつるバラとして現在も人気の高い系統です。特にアーチなど適性を持つ品種が多い。
・返り咲き〜四季咲き性・つる性〜半つる性・香中・中輪

9)   B.   ブルボン系 ☞植物学者ブレオンによってブルボン島で発見されたオータム・ダマスクとチャイナーズローズの交雑で生まれたと推定されるローズ・エドゥアール(1819年以前)を基本品種とする品種群。つる性としての性質が強いため返り咲きは少なめですが、カップ状であったりロゼット状であったりと優雅で魅力的な花容を持つ品種が多い。
・返り咲き〜四季咲き性・つる性〜半つる性・香強い・中輪

10) T.   ティー系 ☞庚申バラの仲間であるヒュームズブラッシュティーセンティッドチャイナと又はパークス・イエロー・センテッド・チャイナを片親にして作出された品種群。多くは系統名の由来と言われる紅茶の様な甘い独特の香りを持つ。クリーム色や淡いサーモンピンクなど黄色味の感じられる色調が多い。四季咲きながらつる状に仕立てられるものも存在する。
・主に四季咲き性・つる性〜立木性・香強い・中輪

11)  HArv   ハイブリッド・アルウエンシス系 ☞ヨーロッパの原種ロサ・アルウエンシスの交配品種。Ayrshire(エアシャー系)ともいわれる。

12) HMult   ハイブリッド・ルムティフローラ系 ☞アジアの原種ロサ・ルムティ・フローラ(ノイバラ)の交雑品種

13)  HSet    ハイブリッド・セティゲラ系 ☞北米の原種ロサ・セティゲラの交配品種群

14)  HP   ハイブリッド・パーペチュアル系 ☞ポートランド系・ノワゼット系・ブルボン系の品種の交雑品種群。
オールドローズの最後の品種群となる。大輪で強健な四季咲きバラを生み出すべく誕生したがまだつる性です。パーペチュアル(四季咲き)というほど返り咲きは得られるなかったものの魅力的な花容や芳香に注目された。
・繰り返し咲き〜四季咲き性・つる性〜半つる性・香中・中輪〜大輪

15)  Ram    ランブラーローズ
つるバラを代表する系統です。日本の「ノイバラ(ロサ・ムルティフローラ)」や「照葉ノイバラ(ロサ・ルキアエ)、中国の「ロサ・モスカータ」「ロサ・セティゲラ」など交配親とする品種群を呼ぶ。
小輪咲きで一季咲き(一部例外がある)で伸長力も強い。枝の自由度も高い

5.モダンローズ

1867年フランスのギョーがモダンローズ第一号「ラ・フランス」を作出し、バラの歴史が大きく変わる。1867年以降に誕生したバラは、総称してモダンローズ(現代バラ)と呼ばれる。

モダンローズ「ラ・フランス」の誕生は、モダンローズを語る上で欠かせない品種です。バラの理想とされる「真直ぐ立ち上がる太い枝先に、剣弁高芯の香高い大きい花が定期的に咲く」という姿を具現化した最初のバラと言われています。花の重心が高く先の尖った花びらを持ち素晴らしい香りも備えた上、チャイナローズ由来の完全四季咲き等の特徴が画期的。交配親が自然界に存在しない人為的に作られた品種であり、それらを交配し生み出されたのが「ラ・フランス」であり、モダンローズの始まりです。

モダンローズの系統

1)  HT   ハイブリッド・ティー系
ハイブリッド・パーペチュアルローズ(HT)とティーローズ(T)の交雑で誕生。完全な四季咲き性の大輪1輪咲きが特徴です。1867年に生まれたラ・フランスが第1号で新たなバラの歴史(≠モダンローズの歴史)が始まった。
・四季咲き・立木性・香 中・大輪

2)  CIHT   クライミング・ハイブリッド系
ハイブリッド・ティー・ローズの突然変異で生まれたつる性の品種群

3) Min    ミニチュア系
ロサ・キネンシスの突然変異で生まれた矮性のロサ・キネンシス・ミニマを祖とする交配品種群。ポリアンサ(Pol)系統と交雑によって誕生した小輪で花も小さく樹高も大きくならない系統です。
・四季咲き・立木性・香 中・小輪房咲き

4) Pol.  ポリアンサ系
日本に自生した原種ロサ・ムルティフローラ(ノイバラ)とチャイナの
ロサ・キネンシス・ミニマの交配種。花付きが良い房咲きの小輪の系統になります。パケレット(1875年)が第1号。
・四季咲き・半つる性〜立木性・香 弱〜中・小輪房咲き

5)  F.   フロリバンダ系 
ポリアンサローズとハイブリッド・ティーローズの交配で生まれた品種群
今までにない花付きの良さと強靭さが特徴です。
・四季咲き・立木性・香 中・中輪房咲き

6)  Gr.   グランディフローラ系
ハイブリッド・ティー・ローズとフロリバンダローズの交配によりアメリカで生まれた品種群。

7)  HMsk.   ハイブリッド・ムスク系
ロサ・モスカータを交配親に用いた交配品種群。

8) HRg.   ハイブリッド・ルコサ系
ロサ・ルコサ(ハマナス)を片親にして交配されて生まれた品種群。

9) S.  シュラブ系
広義では立木性のバラを、狭義では半つる性のバラ中のシェラブ(モダン・シェラブ) 所謂、モダンローズのどこの系統にも属さない系統を纏めて呼ぶ事がある。その為、花の咲き方も樹形も多様な種類が存在します
▷「イングリッシュローズ」はシュラブ系に分類される

10) HWick.  ハイブリッド・ウイクライアーナ系
ロサ・ウイクライアーナ(テリハノイバラ)の交配品種群。

11) CL.   クライミングローズ系
最もつるバラらしい系統です。・様々な交配のつるバラや・立木性のバラからの枝替わりで誕生した系統。 花の大きな品種はLCI (ラージフラワードクライマー)と称される。
▷LCI. CIF.  CIHT.  等
▶︎クライミングローズには成り立ちが2つある。1つは元々つる性として作出された品種。もう一つは四季咲き立木性バラから枝替わり(突然変異)により生じた品種です。四季咲き品種からの枝替わりのバラは「つる○◯」と命名され、つる化する事で四季咲き性は失われます。

12) HBrum.   ハイブリッド・ブルノニー系
中国西部やブータン、ネパールに自生するロサ・ブルノニーの交雑品種群

13)  Patio.    パティオ系
ミニチアローズとフロリバンダを交配して生まれた品種群

以上 バラの系統分類の概要です。この分類と現実咲いているバラにリンクはなかなか難しいですね。バラ園では、モダンローズがほとんどです。原種系、オールド系は極僅か浜寺公園バラ園で見る事ができる。今年のバラシーズンには意識して観察することにする。
次回、No.2では、花の咲き方や樹形などをまとめてみます。



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