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プロ連盟 終わりのはじまり 堀内正人×加藤博己×福地誠

麻雀プロを辞めると幸せになれる?

麻雀プロを辞めると幸せになれるのか? 一般論として確かなことは言えない。でも、ある程度はそういう傾向があるかもしれないなーと思う。末尾の「その後の堀内正人」「その後の加藤博己」を読むと、そんな感じがするんじゃないか。

麻雀プロとは違うんだけど、昔、竹書房に常駐して仕事してた時期が長くて、あるとき気がついたのね。会社の景気が悪かったり、雑誌が潰れたりして首になるバイトっているんだけど、首になった人の方がまっとうな大人になっていくんだよね。SNSで見る限りでは。

ラッキーにも生き残れた人は、そのときはいいようだけど、その後を見ていると、30歳になっても40歳になっても大人にならない。ガキのまま年齢を重ねている。外から見る限りは、あまり幸せそうじゃないなーと感じたりする。

麻雀漫画の雑誌を作るって、子どもの遊びを仕事にしちゃったみたいなタイプの仕事でしょ。それをずっとやってて、仕事相手も俺とかウヒョ助さんみたいな頭おかしい人ばっか。そういう環境で、まっとうな大人になるのって難しいんじゃないか。

麻雀プロも同じような感じがあるんじゃないかと思う。若いときに麻雀にハマって、雀荘勤務を仕事にしちゃったり、麻雀プロになってしまうのはしょうがない。熱病みたいなもんだ。麻雀にそれだけ魅力があるんだろう。

ただね、実需がある落ち着いた仕事とは言えないから、その環境でまっとうな大人になっていけるのか?

麻雀にハマる若者は山ほどいて、そんな熱病にかかった人の一部が麻雀プロになる。それを5年くらいやって、自分が1万人に1人とか10万人に1人の天才じゃないとわかったら、まっとうな仕事に行った方が幸せになれるんじゃないのかね。

天才というのは人間として壊れてるもの。そこまで壊れてない人は、麻雀プロを何十年もやって、それに見合うリターンがあるのか?

これは本当に人それぞれで、たとえばプロ協会の金さんはマーチャオグループの幹部だよね。これはまっとうな仕事だから、麻雀プロを生きがいとしてもおかしくない。また、たとえば隆晴は、見るからに一生大人にならないタイプだよね。そういう人は麻雀プロが合ってる。

魚谷さんみたいな姿勢でガリガリやって、5~10年で見切りをつけて次に行くのが、長い目でみたら幸福度が高くなる生き方なんじゃないか。俺もずっと麻雀ライターという同様に大人になれないタイプの仕事をやってるから、偉そうに語れる立場じゃないんだけどさ。

ホーリーのポーカープロも厨二病を仕事にしよう的なやつだから、あんま変わらないか。麻雀プロよりは職人的でいいとは思うけどね。麻雀プロは、博打打ちとして職人になるルートはなくて、メディアに出る麻雀芸能人化する道しかないからな。

とりあえず、ホーリー、加藤さんの2人は、プロ連盟を辞めて人生が好転してるように見える。加藤さんは完全に具合よくなってて、ホーリーはポーカープロとしてまだそれほどのレベルに到達してないようで、先は見えないけどね。ポーカープロも一生できる仕事じゃなく、若いときしかできないものになってると思うので、ホーリーは10年後くらいにはまた次の道を考えることになるんだと思う。

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以下は『神速の麻雀』(2015年2月刊)からの再録です。
冒頭に「麻雀プロを辞めると幸せになれる?」を、末尾に「その後の堀内正人」「その後の加藤博己」を追加しました。
なお、こんな題名がついてますけど、別にプロ連盟が終わると思ってるわけじゃありません。

2014年9月、日本プロ麻雀連盟を同時に退会した堀内正人と加藤博己。20代を麻雀一筋に送ってきたお2人に、堀内失格事件を中心として、プロ連盟生活を振り返っていただいた。彼らの胸に去来するものは!?

【堀内失格事件の概要】

日本プロ麻雀連盟が主催する第30期十段戦の決勝戦は、2013年11月3日、9日、16日の3日間に渡って行われた。2日目を終えてトータルトップだった堀内は、3日目になっていきなり、2日目に悪質な行為があったとして失格処分になった。その説明が納得いかないとしてネットは大炎上。一般ニュースサイトにも取り上げられるほどの騒ぎとなった。

※悪質な行為=日本プロ麻雀連盟のHPによると「危険牌を引いてオリたと思わせるような動作とため息とともに、手中の3索を仕方なさそうに切り出すという三味線まがいのアンフェアなトリックプレー」

同時に辞めた二人

―― 今日は、プロ連盟を同時期に辞めたお二人に、堀内失格事件を中心としてプロ連盟のお話を聞いていけたらと思います。
お二人のプロ連盟在籍はどれくらいでしたっけ?

加藤 在籍13年で今32歳です。広島県呉市出身なんですけど、高校の文化祭を休んでプロ連盟を受験し、ずーっとやってきました。

―― 加藤さんには以前、十段戦のデータノートを見せてもらったとき、あまりのガチっぷりに圧倒されました。手作業でデータを取るのは大変すぎる(笑)。

加藤 ガチでしたねえ。私は雀荘で働いたことがなくて、ずっとサラリーマンなんですけど、面接を受けるたびに、麻雀のプロ活動をやってるので、それと両立できる仕事という条件をつけてました。

堀内 ぼくは在籍9年の30歳です。

―― お二人は年齢と在籍期間が近いだけじゃなく、最初は地方支部から始まって、すぐ東京に移ってきた点も一緒なんですよね?

加藤 そうですね。私は関西→東京です。

堀内 ぼくは東北→東京です。

加藤 メディアに出られるのって、東京のリーグ戦で上位になったプロだけなので、地方でプロになる意味はあまりないです。

―― そこらへんの話はのちほど聞いていくことにして、まずは十段戦での堀内失格事件について聞いていきましょう。

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※一番左が堀内正人、左から2番目が加藤博己、女性は洋泉社(当時)の編集者、腕だけが福地。

なぜ3日目直前になって?

―― あの事件について、ネットでは「えげつない」とか「弱いものいじめ」とか「アトミック裁定」とか、これは全部失格事件について書かれたブログのタイトルから取ってきた言葉なんですけど、とんでもない陰謀みたいに書かれてます。

まぁ実際、とんでもないことはとんでもないんですけど、さすがに、何もないところからいきなり死刑にしちゃう昔の独裁国家みたいなことはないわけです。なので、どういう経緯で失格になったのか、事実経過や内情を聞かせていただければと。

まず疑問点として、なぜ事件が起きた決勝2日目の当日ではなく、翌週の3日目直前になって失格が決まったかです。

加藤 2日目が終わったとき、その場で藤原隆弘さんに何か言われたんでしょ?

堀内 「ため息とか三味線(しゃみせん)まがいの行為をすると、後日、何かペナルティがつくかもしれない」って注意されました。

―― 対局中に?

堀内 終わってからですね。

―― そしてそれから数日間は何もなかったんですよね?

堀内 前日の金曜日に緊急理事会が開かれて、そこで決まったんです。失格だと。

消されたブログ

加藤 自分なりに整理したことをお話しますね。2日目の放送の解説で、ホーリーの所作について、タッキー(滝沢和典)は「これはグレーですね」と問題視してました。でも、ヒサト(佐々木寿人)は「そうですか?」って何も感じてない様子でした。つまり、タッキーの中では違和感ある行為でしたけど、ヒサトの中では違和感ある行為ではなかったと。また対局者の一人にも聞いてみたんですけど、その人は「違和感を感じていなかった」とのことでした。

ですから、プロ連盟の公式発表では、対局者の中では全会一致でホーリーの所作は違和感ある行為だったと説明してますけど、そうではなかったんです。

―― プロ連盟公式の「堀内ブロ失格処分についてのご説明」という動画を見るだけで、その温度差は感じられますよね。タッキーはすごく問題視していて、ヒサトは気がついてすらいない。

加藤 瀬戸熊(直樹)さんの1索を叩き付ける動作がすべての証明だと思ってます。危険だと思ってなかったら、叩き付ける理由がない。小島(武夫)先生のリーチには現物ですから。

―― 勝負!って感じで1索を切ってますもんね。

加藤 つまり「当たるかもしれない」って思ってるんですよ。そして瀬戸熊さんはブログでつぎの日に、「あの打牌が甘かった」って書いてました。それが堀内失格処分の説明の当日になったら消されてた。

堀内 そうなの?

加藤 間違いなく書いてた。見たもん。どうして消す必要があったかですよね。つまり、ホーリーの所作に関して、その場では違和感を感じた人と感じてなかった人がいて、審判の藤原さんは注意だけしました。そのまま過ぎ去りそうだったけど、それをあとから問題視して、緊急理事会を開いて審議すべきだって主張した人がいたんでしょう。

あるいは森山(茂和)さんに報告したところ、「なに!」って問題視されたのかもしれません。

―― そうして開かれた理事会では、実際にどうだったかわからないから、藤原さんの判断にゆだねるって森山さんが決めたみたいですね。「どうなんだ、率直なところを言ってみろ」と。そしたら藤原さんは「確かに三味線まがいのプレーだった」と答えて、処分が決まったと。

突然襲ってきたマナー論

―― 堀内さん的にはどうだったんですか? 悪質極まりない行為だとされたやつについて。

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