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肉体労働地獄に潜入

このnote↓の反響がやけに良かった(当社比)。

なので、もう一度、各論として、この本の一部を紹介しようと思います。この本です↓

決してネタがないからこの本に頼ってるわけじゃないす。なんだかYouTubeの本の要約チャンネルみたいだなーとは思うけどさ。

この本でぼくが印象的だったのは過酷な肉体労働系の職種なのね。ピンサロのボーイとか新聞拡張員よりも。

というわけで、肉体労働を何件か。

産廃分別

産廃分別って言葉だけでビビらない? ぼくだけ? 産廃って言葉は猛烈感がすごい。まあ実際には、産廃といっても範囲が広いだろうから、すべてに対してビビるのは、ぼくがお子ちゃまだってことかもしれないけどさ。

では、第1部「ドヤ街、寿町から派遣されるお仕事とは? 横浜市寿町編」のあらすじ行きます。

* * * * * * * * * * *

まず著者は、ドヤ街で早朝に、肉体労働を派遣する手配師を探します。

公園にいる作業着の男に別の作業着の男が話しかけてるので、そいつが手配師じゃないかと行って話かけてみた。

すると年齢を聞かれ、最低でも作業着と安全靴がないと紹介できないと、あっさり落とされてしまった。

他に手配師らしき人は見当たらないから、あちこちに貼ってあるビラの求人に電話してみることに。

しかし、土木の経験なし、作業着と安全靴がないということで、片っ端から断られる。

なかば諦めかけたとき、住み込みなら紹介できるかもしれんという人がいた。「決まったら電話するよ」と言われ、数時間後に電話を受け、決定。

仕事は翌日早朝から。寿町で待ち合わせて寮に案内され、そのあと現場に向かう。仕事の内容は知らされてない。

翌日になった。朝6時に待ち合わせ場所の駐車場にあった白いバンに乗る。

「野村君だっけ。今日からよろしくね。後ろに乗ってくれるかな」

白髪のおっちゃんに指示される。車に乗って出発。

仕事内容を聞くと「君を連れてこいってことしか頼まれてないからさー」と。

「野村君は肉体労働の経験はあるの?」
「いえ、ほとんどないですね」
「そっかあ、外での仕事は経験がないとかなり疲れるから覚悟しておいてね」

その道のプロに「かなり疲れる」と言われるって怖すぎないか?

「もし、ツライ現場だったら、場所替えしてくれるかもしれないから、早めに言うんだよ。うちの会社はいろんな現場に派遣してるからさ」というのもあるらしい。

神奈川県の中央部にある団地風に到着。ふつうの住宅街。あまり寮ってイメージじゃない。

寮の食堂で面接となり、30代くらいのチャラ男と世間話5分ほどで面接は終了。

給料を聞いた。未経験者は1日9000円(経験者は9500円)。そこから寮費1900円、食事代1400円が引かれる。なので1日に稼げるのは5700円。つらいね(´;ω;`)ウゥゥ

前借りは、入社して10日までは1日3000円まで。

部屋は6帖。一人部屋。エアコン、テレビ付き。一人部屋なのはホッとするよね。

部屋に荷物を置き、作業着(買ったの?借りたの?)に着替えて、食堂で弁当を受け取り、集合場所の駐車場に向かう。

集まってきた作業員たちは重苦しい雰囲気。みな無言。

「今日から入社しました野村です。よろしくお願いします!」

挨拶したけど、「ウッス」と1名が言っただけで、あとはしかと。

面接したチャラ男が「〇〇さんは2号車、××さんは4号車」と読み上げ、分かれてワンボックスカーに乗り込む。現場ごとに違う車。

「じゃあ野村君は5号車に乗って」

年齢バラバラの5名のグループになった。

発車してまもなく、前の席のジジイが話しかけてきた。

「おい、あんた今日が初めてだってな。今運転してる高橋さんって人が班長だから、あの人から教えてもらいな」

以降は車内で会話なし。みんな無言。

20分ほど走って現場に到着した。なにやら工場みたいな場所。

班長に説明された。

「ここは産業廃棄物の中間処理場といって、業者から持ち込まれたゴミを仕分ける場所なの。その中から売れそうな物を取り出すのがうちらの仕事だよ」
「ガラスの破片とか、先がとがった物も多いから、怪我だけは気をつけてね」

過去には、安全靴を貫通し、釘が足に刺さって破傷風になった人もいるとか。

初心者に「ミスするな」とか「怪我するな」とか無理だろ。この説明を聞くだけで帰りたくならねーか?(´;ω;`)ウッ…

この本には写真がそこそこ載ってる。その写真がリアルさを増す。

時は9月。かなり暑い。

8時になって朝礼が始まった。作業員は約50名。派遣会社ごとに並んでいる。長ったらしい訓示を聞いたあと、全員でラジオ体操。たった15分でもう汗が出る。

作業が始まった。

クレーン車が、産廃の入ったでかいゴミ袋を持ってくる。その中身を手作業で分別し、周囲に置かれているコンテナに放り込んでいく。

コンテナは15個もある。それだけ分類は細かい。コンテナごとの分類は、コンクリ、木片、段ボールなど。難しいのは、汚れた廃プラスチックときれいなプラスチック。泥がついていてもきれいで、ペンキがついているのは廃プラらしい。

とりあえず目の前のビニール袋を手に取って、カッターで切って中身を調べる。木片や段ボールに混ざって、大量の吸い殻や腐った弁当まで入っている。気持ち悪い。

家庭ゴミではなく、建築資材やスクラップなどの産廃なのだが、工事現場で出た飲食物のゴミなども混ざっており、臭いがきつい。

「おい、ちまちまやってないで一気に運べや」
「ったく、時間かけんなよ」

70のジジイから叱られる。他の人たちはコンテナの項目を把握しており早い。テキパキ動いている。まねできない。

必死でやってると、

「ちょっと! 気をつけて!」「おーい、死んじまうぞ!」とクレーンの運転手からマイクで言われた。クレーンが頭の上をかすめていった。危ないよ(´;ω;`)ウゥゥ

作業してるうちに、よくわからない臭い汁が手袋にしみこんできた。最初のうちは、汚そうなゴミは先輩にまかせようというつもりだったけど、やってるうちに、どうせ全身汚れてるから、関係ないという気になってくる。

無心になって手を動かしているうちに正午になった。もう帰りたい。

「お腹はすいてないだろうけど、食べておかないと午後死ぬからね」

そう言われて、弁当を無理やり詰め込む。気持ち悪い。

班長の高橋さんと話をした。

「高橋さんはこの現場は長いんですか?」
「そうだねえ、もう3年になるから結構ベテランだね」
「その前は何を?」
「あはは、ネットカフェ難民をやってたよ」

彼は41歳。

「野村君は若いんだから、違う現場の方がいいんじゃない?」
「ここは何歳になっても身体さえ動いたら雇ってくれるからさ。別の現場に行った方が経験も積めるよ」

たしかに、ここにいる人たちは60歳以上が半分以上。

13時から作業再開。

温度計は34度。地獄だ。場内では、ゴミの粉塵対策として大量のミストが噴出してる。そのせいで余計に蒸し暑い。滝のように汗が出て、熱中症でぶっ倒れそうだ。

あまりの暑さで意識がもうろうとしたところで10分休憩。詰め所に行って水をがぶ飲みする。

班長以外の人に話しかけてみた。

「お疲れ様です。やっぱり大変な仕事ですねー。もう長いんですか?」

スマホに目を向けたまま、こっちを見もしない。数秒後に一言だけ「…ああ」。話しかけるなオーラがすごい。

他の2人も同様。舌打ちされるだけ。交流拒否。

夕方になって終了時刻が近くなると、歴戦の同僚たちも疲労を見せてスピードが大きく落ちていた。

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