麻雀小説はなぜないのか?
弟子が麻雀小説を書くという。
弟子というのはダンスの弟子であって麻雀の弟子ではないのよ。とはいえ、歌舞伎町のピン東フリー雀荘で働いてるやつだから麻雀は強い。
彼は麻雀noteを何本か書いたら数万円売れた。1本あたり1万円以上だ。知り合いにも買った人がいて、おおむね好評だったという。女性にも受けが良かった(ここ重要)。それでクリエイター気分がむくむくと湧き上がってきたという。女にモテたい彼にとっては、女がほめてくれることは重要なんだわ。
続編として書く話を考えてるうちに、リアルの話よりも、複数人のエピソードを合体させたほうが面白くなるから、頭の中で小説化していった。ならば小説にしちまおう。そうすればもっと売れるんじゃないか。そんな経緯で麻雀小説を書く気になってる。
麻雀小説はこれまで阿佐田哲也の「麻雀放浪記」、白川道の「病葉流れて」くらいしかなかった。その系譜を継ぐのは俺だ。俺こそが令和の阿佐田哲也だ( -`д-´)キリッ
そんな感じで書く前から盛り上がりまくっている。
いいんじゃね。はよ書きなよ。自分の経験を通さない知識はほとんど意味ないから、全力で書いてスカッと空振りすればよろしい。そう思うから、分別ある老人の知恵は不要なんだけど、それでも老人だから余計な知識を語りたくなっちまうんだわ。
まずね、麻雀小説はそれしかないというのは違う。有名なのはそれしかないというのが正しい。無名なのは無限にある。というかあった。
俺がガキのころ、古本屋には麻雀小説が山のように積まれてた。俺は麻雀小説がたくさんあった時代にはガキすぎて、たいして読んでないんだけど、麻雀を覚えて以降、中高生時代に図書館で麻雀小説を見つけたら全部読んでたわ。家の最寄り駅前の北浦和図書館には1冊、高校の近くの小平図書館には2冊だったかな、あった。
「麻雀放浪記」や「病葉流れて」は小説としてしっかりしてて、若者が成長していく青春小説として読める。文学的な感じがある。他はそういう感じじゃねーんだよな。もっと娯楽的でもっと読み捨て的だ。わかりやすく言うならエロ小説の麻雀版だな。
大雑把はパターンとしては、流れ者の麻雀打ちが謎の美女と出会い、まずは一発やって深い仲になる。その女に導かれて怪しい賭場に行き、麻雀勝負をすることになる。みたいな話だ。
昔はそういうのが山ほどあったんだよ。売れたんだろう。なので、三流の小説家に「先生、最近は麻雀小説が手堅く売れてるんでひとつ」と二流の編集者が依頼してたんだろうね。
なぜなくなったのか? 売れなくなったからだよね。売れてたら出版社は出すし、三流小説家は書くだろ。
じゃあ、なぜ売れなくなったのか? 麻雀漫画に取って代わられたからだよね。そのあと麻雀漫画が山のように出る時代に移った。俺が中高生のころは本屋の外にエロ漫画誌と麻雀漫画誌が山ほど並んでたよ。
最近は麻雀漫画って売れねーじゃん。今は動画の時代だ。小説→漫画→映像と娯楽は発達していくんだよね。発達するほど視聴者は楽になり、作り手のコストは上がる。YouTubeの動画など無料で見られるから、安くなってるように見えるけど、動画の作り手側の手間は上がってる。なのでトータルして見ると、作るコストは上がって、受け手側には楽なメディアになっていくんだね。
だから麻雀小説はないわけじゃない。かつては大量にあったけど、今では名作しか残ってないだけだ。ちょい前に伊集院静さんが書いたやつもあったけど、それは全然売れず話題にもなんなかったな。
そんな老人の知識を弟子に語ったけど、弟子は揺るがない。そうなんですか。俺には関係ないです。すげー面白いの作れるんでと。
noteで小説を書いてるやつって見かけないじゃん。いるんだろうけど、そんなに見かけない。どうせなら、でかいサイトで書けよ。「小説家になろう」ってサイトがあるからさ。
話してみたら、弟子は「なろう系」について何も知らなかった。
「小説家になろう」って巨大サイトがあって、山のように投稿があるんだよ。そこから書籍化されたやつも山のようにある。細かく分類されてて、麻雀小説だってあるよ。そこで勝負すればいいじゃん。知り合いのヤマサンブラックさんはそこで麻雀小説を連載してるよ。
弟子はピンとこない様子だった。
全般的な傾向として、今はリアリティある描写とかシリアスな展開が受ける感じじゃねーんだよな。君が考えてるのは、歌舞伎町の住人がシビアに勝負する感じだろうけど、今のトレンドは異世界に飛ばされたら無双しちまった系なんだよ。麻雀でいうなら、なぜか50年くらい昔に飛ばされちゃって麻雀新選組の時代に行き、当時の麻雀は牌効率なんて概念もねーから、楽に無双しちまう。すると女にもモテモテ。麻雀強いあなたの遺伝子をちょうだいとか絶世の美女に言われる、みたいなやつなんだよ。
なんすかそれ。そういうのを書かなきゃ受けないんすか?
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?