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【本】『売春島』

過去のブログの再録です。

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今はもうさびれてしまったが、三重県にある売春島として名高い島の話。

2カ月で1万5000部売れてるノンフィクション。面白かった。

著者は元エロ雑誌の編集者。過去、売春島に取材に行ったこともあったけど、その当時はなんとも思ってなかったのに、なぜか最近になって取りつかれてしまい、関係者を尋ね歩き、歴史的な経緯や全容をつかもうとする。

今どきって、ルポはいっぱいあるけど、歴史的経緯を調べようとするノンフィクションって珍しい。

ノンフィクションは金にならねーから、今では新聞社やNHKの人じゃないと、大きなテーマを追うノンフィクションは書けなくなってきてる。今どき珍しい労作だわ。執念の取材だ。

売春という非合法が絡む領域なので、関係者にいろいろ事情を話してもらうのは難しいんだが、著者の熱意にほだされたのか、尋ね歩いたキーパースンが昔の事情を語ってくれる。

泳いで逃げたネーチャン伝説は本当か?
沈められた女がいっぱいいたって本当か?
ヤクザが絡んでいたのか?

という当初の疑問から出発して、中心となったホテルの経営者の近いところまで迫っていく。

だんだん核心に迫っていくドキュメント的な面白さがある。

ただね、最後まで読み終えてみると、著者が一番言いたいことを書いてない気がするんだわ。著者はかつての売春島に魅せられてるけど、非合法だから称賛できないってことなのかな?

衰退が始まってから、中心となったホテルの経営者に食いついて、すべてを失わせたY藤という事件屋がいる。その人のことだけはかなり憎々しげに書いている。そういうところから見ても、著者はかつての売春島シンパなんだと思うけど。

著者が自分のことをあまりさらけ出してないんだよな。こういう本では、自分のことを出した方がいい。

俺は売春ってもんに興味がないせいか、売春という特殊な領域の話というよりも、ある特殊産業によって、かつては栄華を誇ったけど、時代が変わってすっかり凋落してしまった一地方の話に読めた。

今はデルヘルってもんがあるから、売春島というものの特殊な存在価値がなくなってしまったという。

最盛期は1970~1980年代。
バブル崩壊以降は凋落。
伊勢志摩サミットにより、とどめを刺された。

以下、面白かったフレーズなど。

地元の同級生だったクミは、昔から俺に惚れていた。
俺には嫁がいたんだけど、それでも惚れていたクミを随分利用させてもらった。
俺が『100万円用意してくれ』と言えば、サラ金で借りてでも必ず用意する女だった。
高級車も貢がせたし、現金も3000万ほど引っ張った。

多重債務に陥ったクミには、もう借りるアテはなかった。
それで冗談半分で『実家がある』と言ったら、親を説得し、家を担保に1500万作ってきた。
それをも使い切った俺は、『悪いけど、頼む』と1995年頃に売春島に送り込んだ。
最初は泣いていたが、そのまま実家に荷物を取りに行き、その足で渡鹿野島に向かった。

また別の人↓

ギャンブル狂いは私らの後の世代の話や。
だから悲惨なコは一人もおらんかったよ。
『どんだけ男に貢ぐか』ってみんなで競争しとったんやから。

そうやな、私は家3軒分くらいのカネを稼いだんと違う?
いい男やったからな。
騙されとると思ったら、せいへんから。

こういう貢ぎ属性というのかね、女性の一部にある属性は理解できん。

ヤクザはセックスを武器にして女に貢がせるというから、メロメロになっちゃうと貢ぐのが快感になるんかね?

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