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Mリーグで雀鬼流はアリか? 大介麻雀を診断する


第一打で炎上

9/18 第2試合、鈴木大介さんが打った麻雀はXの話題をさらった。

とくにこれ↓だよな。

ここから第一打に8pを切るなんてありえるかと。

こんな感じの意見↓が多数。

ダンスの弟子にも言われたわ。感情的なことはあまり語らないやつなんだけど、珍しく熱く語られた。

個人戦ならいいですよ。でもチーム戦でしょ。
あれがファイナル最終戦で、優勝がかかってる一戦だったらどうするんですか? オーラスにあの配牌がきて、第一打に8pを切ったら次に4pがきて、すぐ3pがきたらどうするんですか?
そういうリスクを考えたら重要な局面では出せないですよね。それってチームとしてどうなんですか?
以前、瀬戸熊さんでも似たようなやつがありましたよね。落とした牌ではアガらないという個人の美意識を持ち込んでアガリを逃したやつ。それと比べても、こっちは毎局起きることだから問題が大きいでしょ。

んー、それ込みで選手の実力と考えるしかないでしょ。格闘技の試合に、個人的な信念によって他の人が付けてる防具を付けずに出るようなもんだよね。雀鬼会経験者にこういうことを言っても意味ないんだよな。

第一打に字牌を切らないのは絶対なんだわ。理由とか語っても意味ない。イスラム教徒は豚を食わないとかヒンズー教徒は牛を食わないのと一緒だ。有利とか不利とか関係ねーんだよな。決まりは決まり。

雀鬼様がこんなふうに説明したことがあるらしい↓けど、こういう説明は時期によって変わる。

昔ね、「近代麻雀ゴールド」って雑誌があって、雀鬼会の機関誌となってたんだけど、あるとき雀鬼会何切るの小冊子が付録についた。それがすげーマニアックで面白かった。

第一打が多いんだけど、字牌が何枚かあって、数牌はどれも必要で、何を切ればいいか悩ましい問題ばっか。究極の選択みたいな問題がずらりと並んでた。答えを見るとまた異次元なんだわ。

そういう世界なので、世間がとやかく言っても彼らには関係ねー。

第一打字牌切り禁止は、やってみるとわかるんだけど、確かに第一打から脳が覚醒する感じがする。そういう効果はあるよ。

ツッチー破門の経緯

じつは、ツッチーが雀鬼会を破門になった経緯も似たような問題だった。

※正式に破門になるのは、佐々木秀樹さんとか、かなり格上の人たちだ。実質的には破門でも、正式な破門じゃない人はいっぱいいる。ツッチーも格は高いけど、たぶん正式な破門じゃないと思う。

大昔、1997年の最強戦決勝、オーラスを迎えて、ツッチーと故安藤満プロとの一騎打ちとなっていた。ツッチーが1800点上。安藤さんは親。親のアガリ止めありだから、2人はほぼアガリトップだ。

序盤にツッチーは役牌がアンコったかポンしたかで役は確定した。手牌の3つのトイツのうち、どれが1つをトイツ落としして、残りどっちかをポンするか、そのシャンポン待ちになったらアガリという状況になった。

トイツの1つはドラだった。ツッチーは少考した結果、ドラのトイツ落とし。脇の2人はアガりにこないし、2人はほぼアガリトップだからドラは関係ないんだけど、それでもドラは切りにくいもんだから。

この対局はツッチーが優勝した。

後日、雀鬼会関係者にツッチーがインタビューされたんだわ。あれはどういう判断だったのかと。雀鬼会関係者って、第一打字牌切りとかノーテンでのドラ切りって、もう美意識的に受け付けないんだよね。インタビュアーの口調がやや詰問調になってしまった。

それが悪かったのか、ツッチーも変なことを言ってしまった。雀鬼会には裏と表があると思う。あの場では勝つために雀鬼会の掟を破ってしまったけど、自分は雀鬼会の精神はわかった上でやったつもりでいると。

大昔、「子連れ狼」という漫画で、柳生新陰流やぎゅうしんかげりゅうには表と裏があって裏柳生うらやぎゅうというのがあるという設定だった。それと同じような話だなーと思ったわ。

ツッチーの言ったことはすぐ雀鬼様に全否定された。裏なんてねーよと。そりゃそうだよな。いつも自分が言ってる掟を場合によっては破ってもいいなんて言うわけない。こうしてツッチーは破門(扱い?)になってしまった。

※ここでの記述にもし間違いがあったらあとから修正します。

そんな感じで、彼らには決まりって絶対なんだよね。そもそも麻雀は勝つためのものじゃなく、道の追求みたいな感じだから。

なので、ファイナル最終戦オーラスみたいな局面になったら、第一打に字牌を切ってくれといっても、そういうのは受け付けないんだよ。

雀鬼会代表というわけではない

大介さんは中学時代に牌の音に通っていたにすぎず、その後の長い麻雀人生は自分流で打ってきてる。骨の髄から雀鬼会というわけではないから、先行きMリーグの場とかチームのほうが大事という判断もありえると思う。彼は鈴木大介という選手であって、雀鬼会代表じゃないからね。なので狂信者的に扱うべきとまでは思わねーわ。

じつはね、個人的には第一打に字牌を切らないのはそこまで大きな不利じゃないと思ってた。最悪フリテンになっても、致命傷となるフリテン(カンチャンとか、高目とか)にはならないから、フリテンリーチしてツモればいい。

もっと大きいのは、テンパイするまでドラを切るなって縛りじゃないかと思ってた。これはドラ入りペンチャンを払ったりできなくなって手組みに大きく影響する。これだと戦えないんじゃねーか。

この心配は、この1戦を見ることで解決した。

それでは実戦を追っていこう。

厳密な雀鬼流ではない

東1局

心配がいきなり出た↓

形としては2pを切りたい。でもさ、ここで2pを切って、つぎに3sとか引いたらどうすんの? 雀鬼会ではノーテンでのドラ切り禁止でしょ? ドラの1pが浮いてるめちゃ広い1シャンテンになっても、そこで浮きドラを切れないようじゃ麻雀になんねーよ。その進行を避けるには7s8sを切るしかないの?

その心配は不要だったようだ。大介さんは打2p。ふーん、形通りに打つんだね。

次巡、ドラの1pが重なってトイトイに決定↓ 悩むことなし。

最終ヅモで4枚目のドラを引いた↓

これ雀鬼会ではカンできない。鳴いた手は一律に明槓禁止なので。

しかし大介さんはノータイム明槓。絶対すべきだよな。リンシャンで引けたら8000オールなんだから。これが最終ツモなので、リーチを受ける心配もない。

こんな感じで、大介さんの麻雀は雀鬼会の人から見たら、雀鬼じゃなく雀鬼らしい。そうじゃないと戦えねーから、そのほうがいいわ。多少の制約はいいけど、制約が多すぎたら戦えない。

この局は流局。

大介さんが雀鬼会の一律明槓禁止を知ってるかどうかは不明。雀鬼会のルールもだんだん変わってきたからね。

第一打の字牌切り禁止だって初期は絶対じゃなかった。字牌しか切りようがない手だったら「失礼」と言って切ることも許されてた。しかし、バビィが「失礼」「失礼」「また失礼」と連発したせいで雀鬼様がキレて、絶対禁止になってしまった。

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