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なぜ自分の本を路上販売するか?

「麻雀界」4月1日号に書いたコラムです。あまり麻雀ではない内容ですけど、載ったのが「麻雀界」なので「たそ麻」「しょぼ中」の両方に入れます。ほら、月末ですからね。

自分の本を行商して

今回は麻雀とはズレた話を書かせてください。

最近、自分の新しい本が発売され売り歩いてます。新刊が出るたびに、百~2百冊ほど自分で売っているのですね。

場所は路上です。前もってネットで告知し、それを見て来てくれた人にサインして売るイメージです。

告知はこんな感じです。

3/22(月)19:30~20:00 秋葉原 JR秋葉原駅 電気街口を出て右側 回転寿司うず潮の前

3/22(月)21:00~21:30 新宿 西武新宿駅pepe前広場

これは3月22日の例です。売れた数は2冊と0冊で、この日は苦戦しました。

いつも野外で無許可です。数十人集まったら警察に叱られると思いますが、せいぜい10人なので、トラブったことはありません。

今のところ8日間に25ヵ所で123冊売りました。

今回は出版社から150冊買ったので、それを売り切るのが目標になります。

出版社から買うと定価の75%か80%なので、20~25%は自分の取り分になりますけど、交通費などを含めると、利益はほぼありません。

肌感覚のマーケティング

なぜ、こんな手間がかかることをやっているのか?

最初にやったのは8年前のこと。JR中野駅の駅前広場でした。販促活動として何かやろうと考え、どこか路上でサイン本販売会をやるのがいいと思ったのですね。

やってみたら手ごたえアリでした。そのときは20~30人の集客で、来た人は喜んでくれるし、ネット上はにぎわうし、これはやった方がいいなと。

発売まもなくの時期には、何かしら売れてる風の動きをネット上で作り出したいのですね。もっとも簡単なイベントが自分一人でやるサイン販売会です。

来てくれた人と話をすると、いろいろ発見があります。10年前にどこどこで一度同卓したことがあるなど、過去に接点があった話をすごく聞きます。昔の知り合いが来てくれて10年ぶりに会ったみたいなことも珍しくありません。

本を出すとき、自分としては単発のつもりで考えているのですが、この商売って過去の人生の積み重ねを試されてるんだなと感じます。

出版の世界ってマーケティングが皆無ですけど、購入者と接することは肌感覚のマーケティングとなっています。

尊敬する、とある老経営者に路上で本を売っている話をしたところ、「そういうのは絶対やった方がいいよ。それがあなたの財産になるから。手間がかかるとか効率が悪いと言うやつは何もわかっちゃいないんだ。商売ってそんなもんじゃない」と言われました。その言葉に、きっとそうに違いないと思えたんですよね。

単なるいい人からの脱却

これまでの話の流れからすると、すごく前向きに路上販売に取り組んできたように見えると思います。じつはそうでもないんですよ。

本というのは出版社というメーカーの作った製品であって、著者は部品納入業者に過ぎません。1000円の本を売ったとき、自分の取り分は多くて100円。実際には90円とか80円です。ぼくは共著が多く、40円くらいであることも多くなります。しかも、もらえる印税額は売れ行きとは関係なく一定で、増刷されない限り変わりません。

そのため、本が売れるかが勝負であるのは出版社であって、著者は原稿を納品したら、そこから先は自分の問題じゃなくなるんですよね。お金の流れとしてはそういう仕組みです。

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