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西洋中世マンガにハマってる

最近は西洋中世マンガが増えてる

これはジャンルなのか、一時期の流行なのかわからないけど、最近は西洋中世マンガが増えている。

この分野はファンタジーと近くて、たとえばドラクエだって西洋中世的だ。具体的な史実などは皆無だけど、雰囲気は西洋中世から持ってきてるよね。マンガでいうと『ベルセルク』もかなり西洋中世的だ。あれはイギリスだね。

そういうのは分類としてはファンタジーになるんだと思う。ここで西洋中世マンガとするのは、史実や実在の人物に基づいたもの。そういうマンガが増えてるのよ。

『アルテ』

以前も紹介したことある『アルテ』。

ルネサンス期のイタリアが舞台。その時代の少女がひたすら画家を目指してがんばる話だ。読むのに歴史的な知識はまったく必要なし。これがめっぽう面白い。アニメにもなった。

ふつう長編マンガって、新刊を1冊読むだけだと、あっという間に読み終わってしまい物足りない。長いストーリーのほんの一部にすぎないから。しかし『アルテ』は、最新刊を1冊読んだだけでも、1話ごとに意味があって面白かった。すげーなーと思ったわ。

『チェーザレ』

数ヵ月前に読んだ。惣領冬美という少女マンガの大家が描いてる。

ルネサンス初期イタリアに実在した歴史上の有名人チェーザレ・ボルジアが主人公。形としての主人公は、架空のボンボン風にーちゃんなんだけど、それは読者がその人の目を通して共感しやすくなるように設定されたレンズにすぎない。その架空の主人公以外はみな実在した人物だ。

これがね、6巻までは普通のマンガなんだわ。西洋中世を舞台にした普通のマンガ。それが7巻からいきなり変貌する。歴史それ自体が主役になるんだわ。

歴史自体が主役ってどゆこと?って思うよね。たぶん作者の惣領先生がハマっちゃったんだわ。西洋史の面白さというか、ローマ教皇庁での権力闘争の面白さにハマってしまった。

監修者の先生と相談して、現地イタリアの歴史書にも書かれてないことを、たぶんこれが真実だとして描いていく。

イタリアでは教皇庁を悪者にはできないらしい。バチカンが進化論を公式に認めたのは1996年なんだっけ? カトリックはそれくらいお堅い。

ローマ法王やその側近が悪事を犯しても、歴史書にはそう書かない。何かしらの落としどころをつける。だから歴史的な真実は推測するしかない。

『チェーザレ』は7巻からいきなり変貌して、ローマ法王選出の権力闘争マンガとなり、異常なまでに緻密になる。緻密すぎてヤバい。

内容もけっこう難しい。俺は世界史に関しては全然たいした知識はない。受験で世界史を選択してない文系大学生くらいのレベルだ。そういう知識のなさもあって、漫画で描かれてることがよくわからず、巻末の文字による解説を読んでようやく理解した部分もあった。

正直ね、この7巻以降が面白いかは人によると思う。そんなに一般的な面白さではない。詳しすぎるし、けっこう難しい。歴史に興味ある一部の人に馬鹿受けし、その他の大勢の人にはマニアックすぎると感じられるんじゃないか。

俺はこれを読んだとき、むちゃくちゃ面白いと思ったんだけど、こんなマンガは他にあるわけないし、こういうのを面白いと感じてる以上、今後は文字の本を読む方向に向かった方がいいと思った。これは読者をマンガ離れさせるマンガという恐ろしい存在だ。

『チェーザレ』はフランス語版も出てる。フランスって日本マンガの最大の消費国なんだわ。そのフランスでも評判いいというからすごい。ローマ法王選がどうたらって、日本よりよっぽど身近だもんね。

話が異常に緻密になってしまい、なかなか進まない上に、最新刊が出るまでに前巻から4年もかかった。

なぜ停滞してるかというと、作者の惣領先生が同時並行で『マリー・アントアネット』の連載を開始したから。これはベルサイユ宮殿公認だというのがすごい。日本マンガ史上で唯一無二の存在だわ。

そんな超大型企画の『マリー・アントアネット』が面白いかというと、全然面白くない。「ベルバラ」を読んでたら十分だ。絵はきれいだけど、話は普通だ。きちっとした団体がバックにつくと、普通のことしか描けなくなり、マンガならではのトンデモな部分がなくなっちゃうんだよね。

失敗を認めて、『マリー・アントアネット』はさっさと終了させ、『チェーザレ』の続きをバンバン描いてほしいわ。失敗した大型企画は勇気を持ってバッサリ切り、意義ある名作を進めましょう。惣領先生お願いします。

『チェーザレ』があまりに面白かったから、文字の本で「チェーザレ・ボルジア 優雅なる冷酷」(塩野七海)を読み始めたけど、こっちは挫折した。マンガ『チェーザレ』の続きみたいな話だから、舞台設定は理解できたけど、3行に1人くらい新しい人名が出てくる。もちろん教科書に出てくるようなメジャーな人じゃなくて、もっと細かい当時の人たち。塩野七海先生の処女作として名高い本だけど、面白いかどうか判断できる段階まで至ってない。俺には厳しかった。

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