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【映像クリティカルリスニング】#12 ~ヤクルト「The rhythm in all of as」~

第12回、今回はこちら

一年ほど前に公開されたこちら。
最近またO.Aでも良く見るようになりましたが、何度見ても素敵なCMです。

トランジションが特徴的な本作。
初めて見た時は、本当に圧倒されました。

映像も去ることながら、音も素晴らしいところがたくさんあります。
まず、全体を通して素晴らしいな〜と思ったのは、トランジションに対する音の補完
00:07の顕微鏡から水中へのカット、水中の音が水中カットより先行してまずが、フェードのカーブがトランジションの速度やデュレーションとのマッチングが完璧で、最高に気持ちいい。
また、顕微鏡のカットでのデジタル系の音も、水中の音とクロスフェードするような印象ですが、「顕微鏡のデジタルノイズ」と「水中のきめ細かいバブル」、この二つの音の性質が、かなり近しい効果音で、そのクロスフェードがすごく活きてます。

00:12のトランジションに関しては、逆に余韻的に前のカットの音を引っ張ってます
状況的にも花畑のカット尺的にもそれが自然で、トランジションが多い本作の中で、しっかりとメリハリを作るため、音的には全てのトランジションが強調されてるわけではないのも良いポイントです。

そして、00:15のカットに向けて、ジリジリとベルの音がフェードインしてきますが、本当に距離感の作り方がお上手ですね…。
先ほどのシーンの水や蛙の鳴き声などにも言えるんですが、本作の音は、距離感の表現が素晴らしく、それによってトランジションがすごく効果的に演出できていると感じます。

ただフェードイン、フェードアウトしてるのではなく、フェードインは、遠い音から近い男。フェードアウトは、近い音から遠い音になってます。
つまり、ただのレベルコントロールだけではなく、音のON加減、OFF加減による空気感を動的にコントロールしてます

ちなみに、僕がこういうことする時は、ほぼほぼAltiverbのオートメーションです。
簡単なものだとMIXノブのオートメーション書くだけでそれっぽくなるので是非試してください。
もっと簡単なものだと、ProToolsの方は、原音は残しつつ、原音にAltiverbなどで過ごし環境の鳴りを表現したものを作ってください。
その二つをクロスフェードするだけでぽくなるはずです。

話が少しそれました。
そして、00:16のブレイク
ビートとロッカーの気持ちいいマッチング。
その後、音楽が展開していきますが、このロッカーの二発目が最高です。

この3発のロッカーの音の役割は、おそらくこんな感じです。

1発目:画的にロッカーの音に聞こえるが、おそらくほぼドラムのみ。ブレイクのきっかけ的な音楽的な立ち位置。

2発目:1発とは逆に画的な補完重視な立ち位置。ロッカー音がメイン。

3発目:1発目と同様の役割、これから音楽が展開するというところでのビート感の強調。

テンポ良く見れてるだけにスルーしがちですが、おそらくこういった役割でそれぞれが、映像のメリハリをつける為の大事な効果音です。

そして00:20からのPCを開くシーン。
ここの気持ちいいところは、Whooshの効果音のピークを音楽の3拍目、この音楽のリズムの中でのスネアの位置に合わせているところ。

そして00:30の、ブレスの煽り。
ボリュームでも煽りつつ、とは言え印象としてはリバーブで煽られてる感じです。
だんだんとリバーブのレベルを出してきつつ、リバースの成分が、次カットとのトランジション的に、音楽のリバースシンバルと、いい馴染み方をしててとても効果的だと感じました。

その後の様々なトランジションも素晴らしいですが、00:45の窓を閉めるシーン。
ノイズのリバーブや空気感を瞬間的に殺すようなミックスがされてて、これは効果的だなと感じました。
空間が窓が閉まると同時に変わるのがわかります。
ワンカットの間に状況を変えるというのは、音的にも苦労するところだと思いますが、そこが見事な音作りによる演出がされてると思いました。

ちょっと長くなりすぎたので、この辺で終わります。
本当に凄く素敵で、とても大好きな作品です。
今回もありがとうございました。

ではまた!

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