エリートヤンキー三郎
三連休の中日。
晩ご飯を食べたあと、夜のデートに誘ってくれた夫氏。
夜のデートは、お決まりのコースがある。BOOKOFFに行ってから、帰りにスタバに寄って帰るという、いつものコース。
私たちは、ジャンルは違えど、読書が趣味という共通点がある。
同じ空間でソファーや炬燵でくつろぎ、黙々とそれぞれの本を読んで、まったり過ごす休日は至福の時間。
たいてい彼は、欲しい漫画があるタイミングにそのデートに誘ってくれる。
私は特に今これといって欲しいと思っている古本はない。あえて言うなら、新書で気になっている本はあるが。
それなのに、デートのお誘いに乗ったのは、自分の意思で本屋に行こうと決めた時じゃなく、
誘われて何となく古本屋に行ったとき、面白そうな本や運命的な出会いもあるからだ。
むしろ、そんな時のほうが宝探し的な気持ちになるから、欲しい本が見つかった時に運命的なものを倍に感じられるのかもしれない。ジャケ買いもあり。
ワクワクした気持ちで、助手席に座る。
漫画はあまり詳しくない私に分かるはずはないが、隣に座る運転手さんに聞いてみた。
「何ていう漫画を探してんの?」
そう質問すると、彼の横顔には優しい笑いジワが現れて、楽しそうにどんな漫画なのかお話ししてくれた。
「エリートヤンキー三郎」
名前の通りヤンキーの学園モノ?と思いきや、どうやら私が想像する学園モノじゃないらしいが、私にもハマりそうな漫画と教えてくれて、気になってきた。
そんなところで、目的地のBOOKOFFに着いた。(早。)
いつものように、私はまず一直線にビジネス書コーナーへ、彼は漫画コーナーへ。
私はというと、そのコーナーで計2冊のタイトルが気になり、ウチに迎えることにした。
その後、漫画コーナーへ行くと、彼の姿をすぐに見つけた。
残念ながら「エリートヤンキー三郎」は置いていなかったらしい。
お店を出て、私はスマホを手に他の近くの古本屋をググる。
2件ヒットしたので
電話をして在庫があるか聞いてみることに。
「お伺いしたいのですが、ヤンマガのエリートヤンキー三郎という漫画は置いていますか?」
「エリートヤンキーサブロウ…」
「出版社は?」「作者名は?」
と、
電話口のお姉さんはエリートヤンキー三郎のことを知らないようだ。
別に驚くことでもないか。
ひと通り情報を伝えて、保留音になる。
保留音が切れ、「その本は置いていない、ごめんなさい」と返事が返ってきた。
そしてもう一軒の古本屋にも同じように電話で問い合わせたが、その店舗にも在庫なし。
なぜ、こんなにも面倒なことをして探し回るのか?
目的買いをするときは、今の時代ネットで買うことがスタンダードになっているし、
だいたいの人はそれが普通だと思っていた。
夫氏に出会うまでは。
デジタル人間とアナログ人間
私がデジタル人間と言うなら、彼は生粋のアナログ人間だ。
LINEのやりとりは滅多にしない。電話は頻繁にする。
ネット通販はあまりしたことはない。
昔からある地元の酒の問屋さんでお菓子や飲料を買う。その時は必ず店主のお爺さんと世間話をする。
もちろんコンビニも行くが、どちらも空いてる時間帯ならその酒屋を選ぶ、という具合だ。
そのすべてが、会話を生むきっかけを作っている。
このあいだも「世間話の中で、ミカンをお爺さんにおすすめされた」と言って買ってきたことがある。
それはほんとうに甘く美味しくて、それからリピート買いしているほどだ。
打って変わって、私はまさにネット通販を運営することを生業としている。
新しいモノ好きだし、仕事柄トレンドを追いかけることは必要不可欠、そして何でも効率化を求めるのだ。
そのサイクルは自然に身に染み付いているのかもしれない。
そう言う部分では、凸凹夫婦だが
デジタル人間の私としては、彼と一緒にいてハッとさせられることがほんとうに多いから面白い。
忘れていたものを取り戻すアノ感覚
” あえてめんどくさいことをする ”
という意味では、コロナ禍で急激に流行ったキャンプにも近い部分はあるかもしれない。
現代、火はライターがあれば一瞬で点けられる。
だがあえて摩擦を起こして汗をかいてまでして火を起こす。
火が起こせた達成感はもちろんのこと、
” 忘れていたものを取り戻すアノ感覚。”
便利になった世の中だからこそ味わうことができるのだ。
あえて直ぐにネットで買おうと言わず、ひと通り近くの本屋巡りを楽しんでから、
最終的にリアル店に無ければ、ネットで最安値の探しものを見つけて買う。
私の中で決めていること。デートに出かけるきっかけにもなる。
通販業界人だから思うコト
「メルカリは良いなあ。わりと古い漫画やから年季は入っているものの、状態がキレイやし、しかも早く届いた。出品者に「〇〇ママ」って書いてたから、息子さんの本やったのかな?それとも旦那さんの本なのかな?」
「とにかく、見つかって良かったね!しかも全巻セットやし安かったね!」ふたりでそんな話が生まれた。
いつものようにAmazonで買っていたらどうだろうか。
検索してポチッと購入して、翌日届く。
無機質なクラフトの紙袋に入って当たり前のようにポストに届くだろう。それ以下でもそれ以上でもない。
そして、私の夫が彼でなければ、今書いているこの記事も生まれることはなかった。
届いた品物を開けると、感謝のひと言が書かれた手書きのメッセージカードが入っていた。
いつもは受け取りの評価には思考停止で「良い」を選択するだけだが、
今日は評価欄に感謝のメッセージを送った。
ネットと人の温かさの両方の良い部分を感じられる、CtoCのプラットフォームが、彼には受け入れやすいのかもしれない。
彼の温かさが、周りに広がり
一緒にいてホッとする部分なのかもしれないなあ。
こんなことを、考えさせられた。
エリートヤンキー三郎の話じゃなくてごめんなさい。
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