見出し画像

2023年5月 活動報告

大槌町地域おこし協力隊の福島です。5月の活動を報告します。

ツキノワグマ立て籠もり事件

大型連休に挟まれた平日こと5月2日、朝から大槌町は大騒ぎでした。
『クマが出没しました』ということで出勤してすぐに役場の方と現場へ急行。『クマが水に落ちたらしい』ということは周囲の会話で理解していましたが、この時はこんな大事件になるとは考えておりませんでした……。

現場到着

クマが……海に落ちている……。

登ろうとするクマ
登れる場所を探して泳ぐクマ

クマが海を泳いでいる姿を見て呆気にとられてしまいました。『クマとは森にいるものだ』と心のどこかで思い込んでいたのかもしれません。『クマだってサケとか貝とか食べるもんな……』と思い出し、役場・警察・猟友会の皆さんと対応を協議。『海から出れないクマをどうするか』という前提で協議を進めていておりましたが……。

クマ、上陸

唯一登れる足場に辿り着いたクマ。ちなみに一度脱出に挑戦したが失敗した。
上陸したけども泳ぎ疲れているのが見て分かる

まさか上陸するとは……。周囲が壁に囲まれているためうまく逃げれないクマは車に攻撃しながら逃げ道を模索。一方人間はクマがどこに逃げるか分からないため周囲に避難を呼びかけます。この状況に気付かずクマがいる方向に接近している歩行者が遠くに見えたため、私も車に乗り込み避難を呼びかけました。

かくれんぼ

避難の呼びかけから現場に戻るとどうやら造船所に逃げ込んだ様子。担当者総出で隠れているクマを探します。建物1つ1つを虱潰しに探し、『いるとしたらこの場所だ』というところまで絞り、いざ確認しようとしたところ『いないと思っていた小屋の床下で休んでいる』ことが発覚。
罠をどう置くか、麻酔をどうするかという協議を進めておりましたが、残念ながらどうしても外せない用事があり私は夕方に離脱。罠設置から翌日の捕獲まで立ち会えなかったのが悔やまれます……。

所感

1.想定外の状況だった
クマ対応は『危険が無ければ追い払う』『危険があれば捕獲する』が基本方針ですが、今回の『海に落ちて出られないクマ』は『追い払うにも自力で帰れない』『(協議時点の前提では)陸に上がれないため"危険"ではない』という判断に困る状況でした。クマという希少でも危険でもある動物ならではの問題だったと感じてます。他地域ではどのように対応しているのか、勉強します。

2.クマを見つけるのは困難
『クマがこの範囲に隠れている』ということがわかっており、なおかつ自分も1回は床下を覗いたにも関わらず、恥ずかしながら見つけられませんでした……。発見したのはハンターの方であり、技術・経験の差(当たり前ですが)を間近で感じました。何より、あれほどの巨体であるにも関わらず気配を消し去るクマの凄さに慄きました。野生動物って凄い……。

田植え体験

「農家さんのことを知らずに被害対策はできない」ということで農家さんにお願いして田植えを手伝わせて頂きました。
私の主な担当は苗と肥料の軽トラへの積み込み、そしてそれらの田植え機への移し替えでした。非常にシンプルな仕事ではありますが、実際にやってみると「次の工程のために今何をすべきか」「如何に効率良く動くためにはどうするべきか」と常に考える必要があり、中々に奥が深い仕事でした。実際、始めてすぐは「一度置いた苗を別の棚に移動させる」「余分な苗を持ってしまい元の場所に戻す」といった無駄が多く生まれてしまいました。先輩方から「やること」と併せて「なぜそれをやるのか」という理由も教わりながら、少しずつではありますが無駄を減らしながら動けるようになりました。
最終日には自分ひとりで作業を担当する時間もあり、一通り作業ができるようになったこと、何より自分に作業を任せて頂いたことが嬉しかったです。

無駄がないルートを走る田植え機は枯山水の箒目を彷彿とさせる

所感

現在は個々の田畑を電気柵で囲っていますが、「集落全体を電気柵で囲えないか?」というのが率直な感想でした。その理由として、
1.電気柵自体が作業の邪魔である。田植え機がぶつかってしまうほか、田植え機に苗や肥料を運び込む際にも障害になる。
2.個々を囲うとそれだけ修繕すべき電気柵が延びる。
3.被害対策に費やす労力は少ない方が望ましく(被害対策はいくら頑張っても「収益」にならない)、そもそも農家さんは農業に忙しい
という問題を軽減できるからです。頭では分かってたことでしたが、実際に田植えを体験すると肌感覚で理解できました。

一方で、「多数の地権者との共同管理になるため、役割や責任の所在を明確にする必要がある」というデメリットもあり、一筋縄ではいかないことは明らかです。
各地に点在する田畑を地権者同士で換地できれば、一枚の大きな田畑に作り替えて電気柵が張りやすくなります(しかも農機具も使いやすくなる)が、そもそも先祖代々の田畑の換地がスムーズに進むのか?という大きな問題が。

「鳥獣問題に取り組むと社会問題に突き当たる」ということを大学時代の研究でも感じましたが、まさに同じようなことを感じた電気柵問題でした。
お世話になった農家さんも集落全体を囲みたいと仰っており、地域の皆さんのお考えを一度伺ってみたいです。

その他諸々

クマ、クマ、クマ

クマが多いのなんの。連日「どこそこに出没しました」という通報が寄せられており、個別に紹介できないほど。もしクマがホエールウォッチングのような観光対象だったらベアーウォッチングの名所として大槌は有名になっていただろうと思うほど出没しています。
そして先日は恐れていた人身事故が発生……。別の日にはクマの錯誤捕獲も発生してしまいました。事故を繰り返さないためにも、クマと人の距離を保つ良い方法がないか模索しています。

2ヶ月連続で同じ場所に出没。地元の方曰く去年もたくさん出たらしい。

農業×コミュニケーション

畑(今はまだ耕作放棄地)の周囲に電気柵を張るお手伝いをしました。至るところに落ちているシカの糞、シカの糞、そして時々クマの糞。『ここに植えたら一晩保たないだろうな……』と思いながら柵を構築しました。
5人ほどで数時間作業し、畑をぐるりと囲むことができました。

電気柵が張られたことで「畑感」が生まれた

そしてこの耕作放棄地を畑に蘇らせようとしている伊藤さん(ちおこ)のご厚意で、畑(別の場所にあるちゃんとした畑)の一角をお借りして私も土いじりを始めました。ここ数年は毎年ジャガイモとサツマイモを家庭菜園的に作っていたので、今年もできて嬉しい限りです。
何より、他のちおこの方との関わりが持てて嬉しいです。趣味の土いじりを通して他の方と繋がっていければ良いなと思ってます(川原田さんいつもありがとうございます)。

お借りした2畝。無事に育ってくれることを願う

バナナは経費に入りますか?

諸々の準備が整ったので、ハクビシンの駆除を始めました。
『シカが増えすぎて大変だ!』『クマがまた出没したぞ!』と大型獣はよく話題になりますが、ハクビシンもひっそりと、着々と増えています。
実は大槌町の農作物加害ランキングの2位はクマじゃなくてハクビシンなんです(1位は断トツでシカ)。なんと被害金額ベースだとクマの4倍。さらに住宅地に棲み着くと空き家問題も悪化するので、シカやクマとは違った問題も抱えています。
そこで、個体数を減らす「攻めの被害対策」に着手しました。

捕獲のベストシーズンは春先(私調べ)なので機を逸した感は否めないですが、設置しなければ捕まらない(≒宝くじは買わないと当たらない)ので罠の運用開始。
この活動報告を書いている時点で捕獲1日目、撒き餌のバナナすら食べられていないけど今後どうなるか。次回の活動報告で吉報をお伝えできるよう頑張ります。

初めての吊り下げ式罠(大学では踏み板式を使っていました)

以上、5月の活動報告でした。最後まで読んで頂きありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?