見出し画像

2023年8月 活動報告

福島です。猛暑と豪雨が最悪なハーモニーを醸し出すお盆でしたね。雨の合間を縫って墓参りしてきました。被災された方の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。
8月の活動報告です。最後までお読み頂けますと幸いです。


出張!ハクビシン対策(実施編)

釜石の圃場でハクビシン用の柵を設置してきました(経緯は先月の月報にて)。先月末の打ち合わせで先方から「この収穫時期さえ何とかなれば」ということをお伺いしましたので、埼玉県農業技術研究センター(敬称略)が開発した「楽落ちくんライト」を提案しました。「ライト」という名の通り非常にお手軽、そして何よりお財布にも優しい柵だったため、打合せ時にこれでいきましょうと即決して頂きました(余談ですが「ライト」と言っても明るい方のライトはハクビシン対策には効果がないようです)。
今回の圃場は既にシカ用の電気柵がしっかりと張られていたので、これを活かした楽して安く効果的な柵という欲張り作戦をとることにしました。

シカ用の電気柵がしっかりと張られている(施工前)

朝9時に現地に集合、天気は快晴(暑すぎたため『快』という漢字は些か不適切ではありますが)。お集まり頂いた農業普及センター並びに広域振興局の方4名に改めて設置方法をご説明し、役割分担について確認しました。
本来の楽落ちくんライトはネットの端を地面に埋めるのですが、掘るには畑が硬すぎるというハプニングも。こんなこともあろうかと振興局の方が用意してくださっていたシート固定ピン(と黒丸)で侵入口を埋める方法に変更し、マニュアルを読みながらも状況に応じて適宜独自の方法を編み出す手探りスタイルで作業を進めました。

ピンは「ハクビシンが侵入できないよう狭く」且つ「打ち込むのが大変だからできるだけ広く」という間隔で打ち込む必要があったため、ピンを試しに打ち込んでは隙間に手を突っ込み、を繰り返し、ハクビシンが侵入できないギリギリの間隔を手探りで模索しました。

模索の結果たどり着いた間隔は40cmでした

直射日光が照りつける猛暑日ということで適宜休憩を挟みながら地道に作業を進め、お昼に全工程を完了させることができました。30m×30mくらいの畑を5人(途中まで6人)で約3時間かけて仕上げることができたので、中々良い進捗だったのではと感じてます(初めてのことなので比較はできませんが……)。

休憩中とは言え畑のことが気になる皆さん

さて無事に張り終わりましたが、気になるのは「ちゃんと被害を防ぐことができるのか?」の一点に尽きます。被害が出てしまえば猛暑の中頑張って頂いた皆さんに申し訳無いですし、何より仕事である以上引き受けた依頼は完遂したいです。
という訳で、ネットに隙間ができていないか、野菜が食べられていないかを後日何回か確認していました。特に変化は無いようでしたが、収穫直前の一番美味い時に被害が出ると聞いていたので最後まで油断できません。そして……。

叩くとポンと良い音が鳴る

無事収穫!
畑を見に行ったタイミングで偶然収穫しており、被害が無かったよと声をかけて頂きました。嬉しい~~~!!!
トウモロコシの一部が小動物に齧られてしまっていましたが、当初の目標であった中型獣による被害をゼロに抑えることができました。対照区を設けていないため「本当に楽落ちくんライトにより動物が撃退されたのか?」ということは判断できませんが、周辺の農家さん曰く「何もしないと全部食われるよ」というほどには動物がいるようなので、きっと効果があったのだろうと思います。

この成功を見て「スイカ作ろうかしら」と仰る農家さんがいらっしゃるようなので、この楽落ちくんライトが広まっていくことで地域の農業が盛り上がれば鳥獣被害対策担当の人間としてこれ以上嬉しいことはありません。

出張!大学講義

今年の春修了した岩手大学大学院(農・博士課程)の宿泊研修が大船渡で開催され、その研修の一部で「どのような学生生活だったのか、今何しているのか」ということを話してきました。「後輩へのアドバイスを含めてほしい」と依頼されておりましたので、研究テーマ問わず全員に共通するであろう「しっかり寝よう」「整理整頓しよう」ということについて熱弁を振るって参りました(基本中の基本の事項ですが、最低でも3年かかる博士論文の完成を目指す上で非常に重要だと考えています)。

この春からは、今いる場所(=大船渡)からちょっと北の場所にある「大槌町」にいるんだ、という話から、地域おこし協力隊についても触れてきました。留学生の方には特に馴染みがないであろう地域おこし協力隊という制度・活動について、私の英語力で上手く説明できたかはわかりませんが、少なくとも「福島という男が何か楽しそうに活動しているようだ」ということは伝えられたのではないかと感じています。

半分くらいが留学生だったので英語スライド

出張!ジビエ塾

「大槌ジビエ」の盛り上がりを県内に波及させて「岩手ジビエ」にしよう、ということで度々開催されている「ジビエ塾」が、この度宮古市で開催されました(私は主催者側ではないので飛び入り参加の見学ですが)。開催地である宮古市やその周辺市町村は勿論のこと、隣接していない遠方の市町村からもご参加頂きました。

市町村ごとに現状や考えを共有する時間では、私はオブザーバーとして岩泉町さんのお話を伺いました。狭い大槌町と異なり「本州最大の町」である岩泉町ではシカの搬入だけで一苦労だというお話を伺い、地域の方から直接お話を伺う重要性(そして同時に、「狭いからこそ1つの拠点にすぐアクセスできる」という大槌町の利点)を再認識しました。

また、岩泉町では岩手大学の研究室と連携して「捕殺後の処置でシカの肉質がどう変わるか?」(西山・村元,2020)ということを調査したことを伺い、このような人の繋がりも岩泉町が有する利点であるとも思いました。特に、『科学的根拠』は客観的で説得力がありますので、地域では実施しにくい解析をできる大学の研究室との繋がりは大きな強みになるのでは、と長いこと大学にいたので大学びいきな私は考えています。

龍泉洞と同じ水を飲んで育った鹿肉、いつか食べてみたいですね。

会場内は沢山の人がいたので人が写ってない写真を

余談

論文掲載

昨年8月に投稿した英論が公開されました(私が気付かなかっただけで7月末に公開されていたようです)。初めて英語で書いた論文なので、無事に受理され非常に嬉しいです。「盛岡の都市部に生息するハクビシンはどんな場所をねぐらにしているのか?」ということをまとめていますので、ご興味ある方は是非御覧ください(有料記事のため、全文を読むためには購入して頂くか、大学など雑誌と契約している施設からアクセスする必要があります)。

また、先日刊行された岩手大学農学部演習林報告54号にも拙稿が掲載されています。こちらは「アナグマ・タヌキ・ハクビシンは餌の好みが違うのか?」という内容です。まだオンラインでは公開されていないため、ご興味ある方は図書館で御覧ください。

「拙稿が論文で引用される」が夢のひとつなので、どなたか引用して頂けると泣いて喜びます。宜しくお願いします。

英語ってだけでなんか知的な感じがする(という発想が既に知的じゃない)

以上、出張三本立てで月報をお送りしました。
デスクワークも勿論しているのですが、月報として中々まとめにくいので必然的に月報に使いやすい出張に偏ってしまいました。デスクワークの成果は報告できるタイミングで報告致します。
最後までお読み頂きありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?