録音の練習とか

 ボイトレ記事を書こうにも、読む人がどういった前提知識を持っているかによってかなり見え方が異なってしまうので、読むだけ無駄なのではないか?と思っている。
 というのも、私は素直ではないのでボイトレ記事を「そうはならんやろ」と思いながら読んでいる。どう読まれるかは公開する以上その人次第である。

 そして、語弊のある言い方だが、私はあまりボイトレをしない。「ボイストレーニング」単体をあまり行わないという事だ。基本的には曲を使う。面白くないもん。
 非常に単純だが、ワンフレーズを録音しては顕微鏡のように判断して精度を上げていくというスタイル。リズムは遅めから始め、キーも低めから始める、歌詞を「バ」とか「ニ」とか「ラ」とか歌いやすい言葉、歌いにくい言葉で固定して歌う(何でもいい)。歌詞の組み合わせというのは複雑なので、恐らく歌詞ありが一番大変だからだ。それから徐々に難易度を上げていくやり方をするとより効果が出やすいと思われる。

 ワンフレーズ録音は、得られるメリットは想像の通り「精度が上がる」に他ならないのだが、その実デメリットも無視できない物がいくつかある。まずそちらを挙げていく。実は1つの事を言っているのだが、細分化して記述する。

・ブレスのペースを適当にしがち

 こと人間が歌う事を基本とした歌に関しては、ここはかなり気を付けなくてはいけない。
 目的のフレーズをなんとか良い感じに歌えるようになったとしても、実際通して歌ってみると全くのグダグダ、という事が起こりうる。
 対策としては、前のフレーズを挟む事によって自然な流れを掴みやすくすることができる。

・リズム(ノリ)を見失いがち

一般的な楽曲では、最初から最後までBPMが統一されている事が多い。二拍三連やテンポチェンジが多様されるようなプログレなどを除けば、基本的にはずっと同じリズムで展開されている。
 という事は、平たく言えば3分から5分程度同じリズムが体の中を流れる訳であり、ワンフレーズだと長くて5秒程度しか前提リズムを把握するタイミングがないため、リズムがちゃんとグリッドに合っていても「曲のノリ」は合っていない、なんてことが良く起こる。ドッタンドッタンのリズムで繰り返される曲にタンタンタンタンで合わせてしまうような物である。
 対策としては、前のフレーズを挟む事によって自然な流れを掴みやすくすることができる。

・喉の形が決まってしまう

 高い負荷のフレーズを絶え間なく何度も繰り返して練習していると、体は硬くなり息は浅くなり喉は乾燥する。
 そもそもワンフレーズとは「曲の中の1場面」にすぎないので、そのフレーズを何度も何度も絶え間なく繰り返す事はそれほど多くない(ボーカルの場合)
 対策としては、前のフレーズを挟む事によって自然な流れを掴みやすくすることができる。

・視野が狭くなりがち

 これまで言った通り、そのワンフレーズばかりを練習していた所で曲の全体像からはかけ離れてしまったりする。練習している最中はそのフレーズが全てになりがちなので、俯瞰してみると「浮いてね?」と思う出来になる事も多い。
 その為、前後関係は少なくとも明らかに統一性を持たせておくのが吉である。
 理想は1曲を通して軽く歌いながら目的の所はバッチリ決める、という練習を出来るだけ範囲を広げていくやり方である。時間が無い場合は違和感のない所までフレーズを短くする。
 このメリハリをつけた「ペース配分」を意識的に練習していると、1曲を通して歌う際にすぐバテる問題に関しても少し改善されるかもしれない。

 このようにワンフレーズで練習すると「曲を通して表現する」ことに対してはデメリットが多く含まれるが、いきなり1曲を丸ごと練習するよりは効率的に攻略できることも多い。
 そしてメリットを最大限に活かす為には録音は必須だ。録音をしないとそこまでフルパワーで歌わなくても良いのでは?というフレーズに気づかず、ずっと100%中の120%だという歌になる事もある。常に前後関係のフレーズを意識しながら、たまに全体で客観視をするという作業を繰り返したい所だ。

  私は幸い歌ってみたにおいては締め切りが無いので、曲を何度も聞き直したり、何もしない時間を職業シンガーより多めに取っているため、ワンフレーズ録音をしていても全体的な違和感には気づきやすい環境に居る。そしてワンフレーズの精度もそれなりに上げる事が出来る。もちろん職業シンガーはあまり一人で録音する事が無く、エンジニアやプロデューサー、ディレクターにああしろこうしろ言われるものなので本人はあまり気を配る事ではないが、ライブを意識しなければならない職業シンガー達にとっては録音より1曲通しの歌が本番なので、少し練習に対する優先度が違ったりする。
 そのため歌ってみたならではの練習の仕方と言えるだろうが、「曲を歌う」という目的に関しては同じなので、ワンフレーズと謂えどフレーズの前後や全体像には常に気を配りたい。

 歌いまわしの決定はこの時に同時に行うが、それはまた別の思考が必要なので、今回は「録音の練習」という点のみである。

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