モーターサイクル・ダイアリーズ

~ ストーリー ~
 ブエノスアイレス出身の エルネストとアルベルトの2人による南米大陸横断の放浪記である。およそ12,000㎞を横断する中で、2人の成長が描かれた作品。

~ 感想 ~
 性格が対照的な2人のやり取りに、とても楽しめた。宛てもなく、バイクにまたがる2人乗りの姿に、温かい気持ちになることができた。

 出発当初は、威勢の良い軟派な動機での旅行であったが、チリを訪れたあたりから、エルネストの心境に変化が表れる。この頃から彼は少しずつ逞しくなっていく。

 現地の先住民の生活に触れ、その土地の厳しさを目の当たりにしていく内に、次第にエルネストの目には、彼らがモノクロに映るようになる。
 文字通り、色のない景色の中で生きる人々の過酷さと、社会的に蔑まれた扱いを受ける人々に、エルネストは彼らに対して、何か力になれないか? 彼自身が何か役に立つことはないか?を考えるようになる。

 彼が、現地の人々の声を聞き取ろうとした きっかけは、銅山で出会った夫婦に「なぜ、旅をしているのか?」ということを聞かれたことによる。このとき、エルネストは「旅をするために、旅をしている。」と答えていた。おそらく、エルネストはこの旅にて、何か答えを見出だそうとしていたのだと思う。

 ペルーでハンセン病の患者に寄り添うことができたのも、患者一人一人の境遇に真摯に向き合うことができたからである。
 それも、壁とも表現できる、隔てた大きな川を必死に泳ぎ、渡りきったシーンからも感じ取ることができる。エルネストにとって、これらの煩わしい障害を、障害とも感じていなかったのだろう。

 物語の終盤に、エルネストとアルベルトが別れるシーンがある。エルネストはこのときすでに、南米社会の現実を思い知らされたことから、彼が出会ってきた人々の力になる決心をしていたのだろう。

 彼にとって、ただ苦境に立たされた人々の力になりたいという、単純で純粋で、強い想いが、のちのキューバ革命へと繋がることになる。本作品は、その起源となる出来事の一部に過ぎなかった。

【モノクロの
  蔑まされた
    その世界】

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