見出し画像

キヤノン・御手洗会長が明かした、一眼レフの将来

昨年末に発信された、寂しい話題。
キヤノンの御手洗冨士夫会長兼CEOが読売新聞のインタビューを受け、デジタル一眼レフのフラッグシップモデルの方針について、ネット版の記事に掲載されました。
結論から言えば・・・

デジタル一眼レフカメラの『終わり』の始まり

御手洗会長自身の口から、終わりへのカウントダウンが始まった、ということです。

今回は、キヤノン機を使用して撮影業務に携わっている身として、御手洗会長の発言とミラーレスの歴史、業務カメラマンとしての立場、両面から述べて行きます。

御手洗会長が明かした今後の一眼レフ開発・生産体制

御手洗会長が読売新聞から受けたインタビューの話を一部引用すると

従来のデジタル一眼レフカメラの旗艦モデルの開発や生産を数年後に終了して、「ミラーレスカメラに一本化する」
読売新聞ON LINE 『「60万円超」高級ミラーレス、大手3社が続々投入…想定超える予約も』
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20211228-OYT1T50000/2/

とのこと。つまり、現時点で発売されている一眼レフに当てはめると

(左)フラッグシップ一眼レフ「EOS-1D X Mark III」
(右)ミドルクラス一眼レフ「EOS 90D」
※いずれもキヤノンのWebサイトより

フラッグシップ機「EOS-1D X Mark III」は、数年後に生産終了。
エントリー機(EOS Kissシリーズなど)とミドル機(EOS 90Dなど)は、引き続き開発や生産を続ける海外での人気が今も高いことが理由としています。

18年連続世界シェアNo.1の実績と裏腹の、ミラーレス一眼のシェア

キヤノンは2003年から18年連続で、「レンズ交換式カメラにおける世界シェアNo.1」を達成しました。
しかしミラーレスの進出は遅く、2010年代中盤以降は言うまでもなく、ソニーが「フルサイズミラーレス」において事実上シェアを占めていました。
そんなにカメラ関係に触れていなかった大手マスコミもなぜか、ソニーがスゴいかのように紹介されていました。

エントリー機「Kissシリーズ」がミラーレスにも
「EOS Kiss M」

キヤノンとしてはミラーレスは早くから出していたものの、小さく軽いエントリー機が中心でした。
(APS~CフォーマットのEOS~Mシリーズ)
しかもミドル機以上の一眼レフにおける技術向上は、この時が著しい状況だったと思います。
当時のミラーレスといえば、このようなデメリットがありました。

  • オートフォーカスのレスポンスが遅い(特に動体追尾)

  • 一眼レフの光学ファインダーと違い、ファインダーの見え方が違う、動体追尾に弱い

  • バッテリーの消耗が早い

といったものでした。
そのような状況でソニーが「フルサイズミラーレス」のシェアトップになれたのは、技術力の高さ故に、未開拓な市場に風穴を開けるチャンスを見出したからだと思います。
しかし、これが2強(キヤノン&ニコン)の焦りを誘ったのか、否か…

多分、焦りはあったと思いますが…焦りを抑えながらじっくり開発を進めていたのではないか、と後に思いました。

当初は賛否両論あったが、画期的な「EOS R」シリーズの登場

CP+2019キヤノンブースにて

2018年、キヤノンが満を持して世に送り出した「EOS Rシステム」というフルサイズミラーレス。
いよいよ登場したかという思いと、一眼レフはどうなるんだろうという思いがありました。
フルサイズミラーレス機「EOS Rシリーズ」と、対応レンズの「RFレンズ
後発組ではあったものの、EFレンズ登場のように将来を見据えていたのは言うまでもありませんでした。

フルサイズミラーレスの初号機「EOS R」と、コンパクトな「EOS RP」が登場
しかし、画期的なシステムの一方で、性能上で不満な点も色々。(以下省略)
※俗に言うマニアの意見は無視です

フルサイズミラーレス初号機「EOS R」(右)と、2号機の「EOS RP」
CP+2019 キヤノンブースにて

しかし、キヤノンも本気を出してきます。
2020年11月に登場した「EOS R5」と「EOS R6」です。
更にレンズも続々。
EFレンズで定番だったものも、RFならではの特徴を活かして登場しました。
中には、EFレンズにはない超ド級のレンズも、です。

EOS R6+RF28-70mm F2 USM
キヤノンフォトハウス大阪にて開催の「EOS R3特別展」にて
EFレンズの定番モデルが、RFレンズとして軽量コンパクトに登場
RF70-200mm F2.8 L IS USM
現時点で最上級のフルサイズミラーレス
「EOS R3」
2021年11月発売

そして2021年11月は、現時点で最上級となる「EOS R3」が発売。
防塵防滴、縦撮り用グリップ、視線入力によるAF機能搭載など、EOS Rシステムの現時点での最上級が出来ました。
キヤノンユーザーの方ならお分かりかと思いますが、「3」が出たということは、これはまだフラッグシップではない、ということです。
モデル名から見るに、次はいよいよフラッグシップ機の開発・発売が待っているということです。

12月には、動画の制作において画期的な
「デュアルフィッシュアイレンズ」
EOS Rシステムだからこそ設計できた、VR動画対応レンズ。
※当該レンズ対応ファームウェア搭載のEOS R5のみ対応

メーカーは「ミラーレスへの移行」を軽視するな

2020年2月開発発表、11月発売となったEOS R5
ボディ内手ぶれ補正とサーボAFの効きなど、格段に向上した
(キヤノンからのレンタル品)

私はEOS Rシリーズを指を咥えて見てただけでなく、
実際に「EOS R5」をレンタル・試用するチャンスをいただきました。
解像度、手ぶれ補正など性能の高さを実感しました。
ここに、キヤノンの本気度を感じさせます。
素晴らしいカメラでした!(詳細は改めて紹介します)

確かに、EOS Rシリーズはすごかった!
しかし、感動してばかりではいけない。
と言うのは、御手洗会長の発言の中で

「市場のニーズがミラーレスに加速度的に移っている。それに合わせて、どんどん人を移している」
読売新聞ON LINE 『「60万円超」高級ミラーレス、大手3社が続々投入…想定超える予約も』
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20211228-OYT1T50000/2/

ともありました。
ちょっと待って!
確かに、一眼レフからミラーレスに移行が進んでいるのはよくわかる。
しかし、それは一流のカメラマンが続々と移行している、という点でしか見えてないのかな、と思ってしまいます。
市場のニーズというけど、趣味で使っている人は簡単に移行できるでしょう。
しかし、
確かに、一流のカメラマンは一眼レフからミラーレスへの移行は一気にできるかもしれない。
経済的な面での恨み節ではない。
プロカメラマンと言っても、オリンピックやモータースポーツ、サッカーなどのように世界中を巡って撮影している人ばかりがプロではないのです。
地域密着型で、写真スタジオや学校関係、地域活動などを中心に撮影しているプロもいます。(私もその1人です)
有名無名に関係なく、写真で生計を立てている人は数多くいるのです。 

EOS R5の高解像度は素晴らしいですが、業務においてオーバースペックな方もいます。
(極端に大きく引き伸ばす必要がないから、など)
しかも、流行病など社会的状況により受注が減り、写真で収入を上げることが厳しくなったこのご時世。
オーバーホールしながら使い続けるしかない、という人もいるのです。

御手洗会長は、その辺を理解して発言なさっているのでしょうか?
会社という以上、新製品を開発し売上を立てながら利益を上げるのは当たり前なので、異議はありません。
しかし、カメラ(レンズを含む)は単なる機械ではなく、「写真という文化」を育てるための重要な部分が絡んでいます。
音楽でいう楽器、絵画でいう筆や絵の具など…(ちょっと違うかな?)

キヤノンは世界シェアNo.1のシェアに慢心することなく、技術革新の傍らで「フォトハウス」「EOS学園」など拠点を開設することで、写真文化の発展にも供与されています。
初心者から一流までくまなくカバーしているだけに、難しい部分があるかと思います。
しかし、

利益の追求だけがカメラメーカーの使命ではない

これを忘れないでいただきたいと思っています。

お読みいただき、ありがとうございました。
ご意見、ご感想がありましたら、お気軽にどうぞ♪(メンバーのみ)

私自身の作品づくりはもちろん、カメラや写真の明るい未来を信じて活動します。 いただいたサポートは、喜んで有効に使わせていただきます。