原発性硬化性胆管炎(指定難病94)

食物の消化や吸収に関わる胆汁は、肝臓で1日あたり約1リットル生成されて胆管という管に排泄される。胆汁は肝臓内の細い胆管を経て空腹時に胆嚢で濃縮されたのち,食事(食物摂取)による胆嚢収縮によって太い胆管を経て十二指腸内に排泄される。胆管が障害されると胆汁の流れが悪くなり黄疸が起こることがある。原発性硬化性胆管炎(げんぱつせいこうかせいたんかんえん)はその胆管が障害されて胆管が狭くなり、胆汁の流れが滞り悪くなるとともに肝臓の働きが悪くなる病気。肝臓の中・外の比較的太い胆管が障害されるのがPSCの特徴である。英語ではPrimary Sclerosing Cholangitisといい、頭文字をとってPSC(ピー・エス・シー)と呼ばれている。同じく胆管が障害される病気であるPBC同様、血液検査をするとALPやγGTPが上昇するが、特徴的な自己抗体は存在せず血液所見だけで診断することはできない。通常はERCP、MRCPなど胆道造影を行って診断する。また、PSCにはしばしば潰瘍性大腸炎、クローン病などの炎症性腸疾患が合併する。ことに若い患者に多く、日本のPSC患者全体のおよそ40%、若い患者では60%に炎症性腸疾患が合併すると報告されている。PSCに合併することが多いのは炎症性腸疾患の中でも潰瘍性大腸炎であるが、潰瘍性大腸炎・クローン病のいずれとも診断がつかない非典型的な大腸炎を合併する場合もある。2007年に行った疫学調査では、日本におけるPSC患者の総数は約1,200人と推定されていたが、2018年には推定2,300人であることが分かり、この10年間でおよそ2倍に増加していた。世界的にみてもPSCの患者は増加している。頻度は男性にやや多く発症年齢は20歳代と60歳代に2つのピークがみられる。10歳代の子どもに発症することも珍しくはなく、前述の全国調査では18歳未満の患者が55例登録された。原因はまだ分かっていない。炎症性腸疾患を合併することが多いことから、炎症を起こした大腸の粘膜を通して腸内細菌が肝臓へ流入してくるのではないか、また、大腸でリンパ球が異常に活性化され肝臓に流入して胆管を傷害するのではないか、などの仮説も提唱されているが、まだ解明には至っていない。また、およそ30%の患者で抗核抗体が検出されることなどから自己免疫の関与も示唆されている。遺伝はしないが、他の自己免疫性疾患と同じようにPSCの発症に遺伝の影響がある程度存在することは確かめられており、海外では発症に関与する遺伝子がいくつか同定されている。PSCでは黄疸やかゆみで発症することが多いが、無症状のまま人間ドックや健診で肝機能検査や腹部エコー検査の異常を指摘され、それをきっかけとして診断される場合もある。診断された後特に症状はないまま経過する方もおり、胆管が狭くなり胆汁の流れが滞ることによって起こる黄疸や皮膚のかゆみ、そこに細菌が感染して起こる胆管炎などの症状を伴うことが一般的である。PSCと診断されず治療が行われない場合、あるいは治療の効果が低い場合には、これらの症状を繰り返しながら肝臓の機能が徐々に低下し肝硬変へと進行する。その結果、他の原因による肝硬変同様、食道・胃静脈瘤、腹水、黄疸、肝性脳症などを伴い、肝不全へと進行して肝移植を行わない限り救命できない状態になることがある。また、PSCでは胆管癌を合併することも比較的多いことが知られている。

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引用:希少難病ネットつながる理事長 香取久之



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