下垂体性TSH分泌亢進症(指定難病73)

甲状腺は首の前側、のどぼとけのすぐ下にある臓器で、食べ物に含まれるヨウ素を原料として甲状腺ホルモンを作り血液中に分泌する。甲状腺ホルモンは体の発育を促し新陳代謝を促進する働きがあり、体にとってなくてはならないホルモンである。この甲状腺ホルモンの分泌は主に脳の一部である視床下部と下垂体により調節されている。視床下部より分泌された甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(Thyrotropin-releasing homorne:TRH)が下垂体を刺激され甲状腺刺激ホルモン(Thyrotropin:TSH)が分泌される。そして、下垂体から分泌されたTSHは甲状腺を刺激し甲状腺ホルモンが分泌される。下垂体性TSH分泌亢進症は下垂体からのTSHが過剰分泌された状態と定義される。疾患としては下垂体にできた腫瘍からTSHが過剰に分泌されるTSH産生下垂体腫瘍が原因となる。その他に甲状腺ホルモン不応症が原因となる。下垂体性TSH分泌亢進症のうちTSH産生下垂体腫瘍は全下垂体腫瘍の1~2%とまれで、約100万人に1?3人とされている。下垂体性TSH分泌亢進症のうちTSH産生下垂体腫瘍が発見される年齢は8歳から80歳代まで広く分布しているが、50?60歳代に診断される場合が多い。やや女性に多い傾向にあるが、ほとんど性別で腫瘍のできやすさに違いはない。下垂体性TSH分泌亢進症のうちTSH産生下垂体腫瘍の原因のほとんど判っていないが、一部のTSH産生下垂体腫瘍は多発性内分泌腫瘍症1型の一症状として発見されることがある。その場合は遺伝子の異常が原因となっていることが多い。ほとんどのTSH産生腫瘍は遺伝しないが、前述した多発性内分泌腫瘍症1型としてTSH産生腫瘍が発生した場合には下垂体腫瘍へのなりやすさが遺伝する可能性がある。下垂体性TSH分泌亢進症ではTSHにより甲状腺が刺激され、甲状腺ホルモンが増加することから動悸や脈拍が速くなったり汗をかく量が増えたりする。また、体重が減少したり、イライラ感、手の指のふるえなどの症状が見られることがある。これらの症状は人によって様々で、まったく症状のない人もみられる。さらに、下垂体腫瘍が大きな場合は視野の一部が欠けたり頭痛を生じる場合もある。また、TSH以外の下垂体前葉ホルモンの分泌低下により全身倦怠感などの症状がみられることがある。TSH産生下垂体腫瘍の多くは大きな腫瘍であり、治療の第一選択は手術で腫瘍を摘出することである。手術により約75%の患者で治癒することが報告されている。手術を希望しない、あるいは手術ができない場合、または手術で完全に取り切れなかった腫瘍に対してはガンマナイフという放射線治療も行われる。手術、放射線による治療でも効果が不十分な場合には薬による治療がある。薬としてはドーパミン作動薬、ソマトスタチンアナログ製剤(保険適応外)が用いられる。現在では長時間作用するソマトスタチンアナログ製剤があり、月1回の筋肉注射で長期間のコントロールが可能。また、症状改善効果ならびに腫瘍縮小効果を期待して手術の前に使用されることもある。TSH産生腫瘍は手術により完全に取り除くことができれば治癒できるが、大きな腫瘍も多く完全に摘出できないことや再発することもある。その場合も多くの患者では薬で甲状腺機能を正常化できるが、薬による治療を続ける必要がある。

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引用:希少難病ネットつながる理事長 香取久之



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