遺伝性周期性四肢麻痺(指定難病115)

我々が自分の体を動かそうとするとき、我々の意思は電気信号として脳から脊髄、末梢神経、筋肉(骨格筋)へと伝わって自分の思い通りの動きを実現する。この際、筋肉は電気信号に適切に反応し収縮することで「力」を出さなければならない。しかし、筋肉に存在する「あるタンパク質」の異常により筋肉が「力」を出せなくなり、いわゆる「麻痺」の症状が出る病気がある。これを総称して、「周期性四肢麻痺」と呼ぶ。「周期性四肢麻痺」には、「あるタンパク質」の遺伝子に異常があって起こる「遺伝性(一次性)周期性四肢麻痺」と、他のホルモン異常などが原因となって筋肉の「あるタンパク質」に二次的に影響を及ぼして起こる「二次性周期性四肢麻痺」とがある。ここで紹介しているのは前者の「遺伝性周期性四肢麻痺」についてである。麻痺発作の時に血液中カリウム濃度が変化することが知られており、その濃度によって更に「高カリウム性周期性四肢麻痺」と「低カリウム性周期性四肢麻痺」との2つの病気に大別される。我が国で確認されている患者の数はまだまだ少なく、正確な数はわかっていない。患者ごとに症状の強さが違い、特に軽症の患者の場合には、「すこし力が入りにくかったが、一日寝たら治ったし気のせいだろう」と、病気だと思われずに過ごしている方が多くいることが予想される。したがって、実際の患者の数は、現在わかっている数よりも多い可能性がある。参考までに欧米では、1.5人/10万人以下という報告がある。現在のところ、特定の生活習慣や住んでいる地域などによる傾向などは知られていない。「遺伝性周期性四肢麻痺」に関連の深い遺伝子は主に2つわかっている。どちらも筋肉の膜の上にありイオン(電解質)の出入りを制御しているタンパク質(イオンチャネル)を作る遺伝子。一つは、骨格筋型電位依存性カルシウムチャネルを作るCACNA1S遺伝子、もう一つは骨格筋型電位依存性ナトリウムチャネルを作るSCN4A遺伝子。患者はこれらの遺伝子に変異をもっていて、タンパク質の機能が通常とは変わってしまっていることが病気の原因になると考えられている。「遺伝性周期性四肢麻痺」は、麻痺中の血液中カリウム濃度によって、「低カリウム性周期性四肢麻痺」と「高カリウム性周期性四肢麻痺」とに分類されると述べたが、「低カリウム性周期性四肢麻痺」はCACNA1S遺伝子とSCN4A遺伝子のいずれかの遺伝子異常で起こることが知られている。一方、「高カリウム性周期性四肢麻痺」はSCN4A遺伝子の異常で起こり、時に先天性パラミオトニーとよく似て、麻痺だけでなく「筋肉のこわばり」も感じることがあるのが特徴である。「低カリウム性周期性四肢麻痺」に、心臓の不整脈や身体の小奇形を伴う「Andersen(-Tawil)症候群」では、カリウムチャネル(KCNJ2, KCNJ5)の遺伝子異常が原因となることが知られている。この他、遺伝子変異が同定できない原因不明例があり、上記以外にも原因遺伝子があると考えられている。遺伝性の病気と考えられており、上記で述べた患者で見つかるCACNA1S遺伝子やSCN4A遺伝子の変異は、両親の少なくともどちらかから受け継いでいることが多い。しかし、まれに両親は変異を持っていないのに、突然変異として遺伝子変異をもつ患者もいる。また、患者の子供が遺伝子の変異を受け継ぐ確率は、ほとんどのタイプは優性遺伝性なので50パーセント。一般には、「麻痺発作」が一番多い症状である。その程度は「動けるが、はっきりと実感できる一時的な筋力低下」から「完全麻痺」まで様々。症状は下肢に多い傾向があるが、身体全体のどこの筋肉にも生じる可能性がある。ただし、呼吸や飲み込みは「麻痺発作中」も一般に問題はない。「麻痺発作」の時間は、患者や病型によって異なる。一般に「高カリウム性周期性四肢麻痺」の患者の麻痺は、数十分から数時間程度のことが多い。一方、「低カリウム性周期性四肢麻痺」の患者の場合には、数時間から数日間にまで続くことがある。また、「麻痺発作」の出やすい「条件」や「状況」に特徴がある。「高カリウム性周期性四肢麻痺」の場合には、「カリウムを多く含む食物の摂取」、「運動後の安静」、「寒冷」や「妊娠」が、発作の誘因・増悪因子と言われている。典型的な発作は、「朝食前に生じ15分から1時間ほど持続した後消失する」というものである。発作のないときには「筋肉のこわばり」を感じる患者もいる。「低カリウム性周期性四肢麻痺」の場合には、早朝・夜間に起こりやすく、「前日の激しい運動」、「高炭水化物食・アルコールの大量摂取」に加え、「精神的ストレス」なども誘引となるとされている。典型的な発作は「前日の晩にお酒や御馳走をたくさん飲んだり食べたりして寝たら、朝目覚めた時からからだが動かない」というものである。ほとんどの患者では麻痺発作のみが症状で、発作のないときは全く普通だが、約25%の患者で、筋力低下が持続し進行する病型の方がいる。症状は個人差も大きく、特に幼少期や学童期の患者では、自分では症状を的確に訴えられずに、「朝だるくて学校にいけない」とか「運動のあとは体調が悪くなるから体育の授業が嫌い」などと感じている場合もあり、まわりに誤解されたりしかねない。残念ながら根治的療法は現在のところなく、生涯を通してある程度「症状とうまくつきあっていく」ことが必要。「麻痺発作」の予防には、食べ物や生活習慣に注意することが中心になる。保険適応ではないが、いくつかの薬は発作予防に有効であることが知られている。しかしこれも患者によっては身体に合わず悪化するケースもあるので注意が必要。いずれにしても、完全に「麻痺発作」をなくすことは難しいとされている。

疾患の詳細はリンク先をご覧ください。

http://www.nanbyou.or.jp/entry/4528


引用:希少難病ネットつながる理事長 香取久之

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