原発性胆汁性胆管炎(指定難病93)

肝臓は「人体の工場」といわれるほどいろいろな働きをしているが、その中の一つに胆汁という消化液をつくるという働きがある。胆汁は肝臓の中の肝細胞という細胞によってつくられたあと胆管を通り、いったん胆嚢で蓄えられた後十二指腸に流れこむ。原発性胆汁性胆管炎(げんぱつせいたんじゅうせいたんかんえん)という病気は、肝臓の中のとても細い胆管が壊れる病気。英語ではPrimary Biliary Cholangitisといい、頭文字をとってPBC(ピー・ビー・シー)と呼ばれている。肝臓の中のとても細い胆管が壊れるため胆汁の流れが通常よりも少し滞ってしまい、血液検査をするとALPやγGTPなどの胆道系酵素が通常よりもかなり高い数値になる。さらに、血液の中に抗ミトコンドリア抗体(AMA)という自己抗体が検出されるのがPBCの特徴である。研究班が2018年に行った調査によると、PBCと診断される患者は全国でおよそ37,000人と推定されるが、その数は年々増加している。ただ、増加しているのは比較的軽症の患者で重症の方が増えているわけではない。中年以降の女性に多い病気で男女比は約1:4、20歳以降に発症し50~60歳に最も多くみられる。子どもが発症することはまずない。この病気の原因はまだわかっていないが、胆管が壊れる原因として免疫反応の異常、すなわち、自己免疫反応が関与する自己免疫疾患であることが国内外の研究で明らかになりつつある。PBCでは自己免疫反応によって胆管が攻撃されると考えられている。PBCの患者の子供が同じPBCになることはほとんどない。しかし、同一親族内(親子、姉妹等)ではPBCの患者の頻度が比較的高いことなどから、糖尿病や高血圧、癌がそうであるようにPBCの発症にはやはり遺伝の影響があると考えられる。国内外の研究によりPBCの発症に関与している遺伝子がいくつか見出されている。現在PBCと診断される方の多くはまだ病気が進行しておらず肝硬変へ至っていない。この段階であれば肝臓の中の胆汁の流れは多少滞ってはいるもののまだまだ十分に保たれているし、肝臓の働きも正常なので自覚症状はほとんどない。ただ、このような軽い段階の方でもおよそ30%程度の患者は中等度から重度の皮膚のかゆみを自覚していることが分かっている。この段階でPBCと診断されず治療が行われない場合、さらに進行していく。すなわち、肝臓の中の小さな胆管がさらに破壊され胆汁の流れが一層悪くなる。すると、胆汁に含まれる成分が血液中に逆流するため全身の強いかゆみが起こる。また、食道・胃静脈瘤という合併症も起こる。強い疲れやすさやだるさを感じることもある。肝臓の中では胆管だけではなく肝細胞も破壊され、徐々に肝硬変へと進行する。また、食物中のビタミンDを吸収するために必要な胆汁が流れにくくなるため、ビタミンDが吸収されにくくなり、特に閉経期の女性では骨粗鬆症が進行しやすくなる。また、やはり胆汁が流れにくくなる結果血中コレステロールが上昇し、目の周りに脂肪が沈着する眼瞼黄色種ができることもある。さらに肝臓の働きが低下すると、黄疸、浮腫(むくみ)や腹水、肝性脳症を発症して肝不全となり、肝移植を行わない限り救命できない状態に陥ってしまうこともある。一部の患者では肝臓に癌ができることもある。一方、自己免疫を起こしやすい体質の方では胆管だけではなく他の組織・細胞も自己免疫によって攻撃されることがあるため、PBCには他の自己免疫疾患がしばしば合併することが知られている。日本ではPBCの約15%の方に涙や唾液が出にくくなり、口や眼が乾燥するシェ-グレン症候群、約5%に関節リウマチ、慢性甲状腺炎が合併するとされており、これら他の自己免疫疾患の症状が目立つ場合もある。

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引用:希少難病ネットつながる理事長 香取久之


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