神経細胞移動異常症(指定難病138)

神経細胞移動異常症は、生まれつきの脳、特に大脳の形成異常である。大脳は人間でもっともよく発達しており、おおまかには①細胞産生、②細胞移動、③細胞分化の3段階の過程を経て作られる。神経細胞移動異常症は②細胞移動の異常で生じる疾病。①細胞産生は脳の内側で細胞が増えて作られるが、神経細胞が集まっている大脳皮質は大脳の外側(表面)にあるため内側から外側に移動しなくてはならない。細胞の正しい移動によって6層の大脳皮質が作られ脳の表面積が増えることによって決まったパターンで大脳の表面にたくさんの「しわ」ができあがる。しわの出っぱり部分を脳回、くぼんでいる部分を脳溝と呼ぶ。神経細胞移動異常症では6層の正常な大脳皮質が作られなくなり、しわのパターンが変化して脳回の大きさや脳溝の深さに異常が生じる。神経細胞移動異常症には脳のかたちが異なるさまざまな疾病が含まれる。
①神経細胞移動異常症の代表的な疾患である滑脳症は、表面が滑らかな脳の病気(症)であり、脳のしわ(脳回と脳溝)の数が少なくなって平滑になった状態。脳回の作られ方や大脳皮質の厚さにより無脳回、厚脳回、単純脳回に分けられる。
②異所性灰白質は神経細胞の移動が全く行われないか途中で停止し、本来神経細胞が存在しない部位(異所性)に神経細胞の集まり(灰白質)が作られた状態。異所性灰白質の存在部位により皮質下帯状異所性灰白質と脳室周囲結節状異所性灰白質に分けられる。
③多小脳回は小さな脳回がたくさん入り組んで集まった状態。
④敷石様皮質異形成:神経細胞とグリア細胞が脳表面の停止線を越えて移動し脳の表面を突き破って新たな脳回をつくり、脳の表面が石をしきつめたようなごつごつした外観を示す。
⑤裂脳症:脳の一部が割れて表面の大脳皮質が内側の側脳室に到達し境界部分に多小脳回がみられる。
⑥孔脳症:生まれつき脳室との交通を有する嚢胞または空洞がみられ、脳の表面に達している場合もある。裂脳症と異なり多小脳回は伴わない。
⑦脳梁欠損:左右の大脳半球を連絡する線維で結ばれている脳梁の一部または全部が生まれつき失われている状態。脳梁が薄いだけの場合は脳梁欠損に含まれない。
正確な患者数はわかっていない。MRIが普及する以前のデータでは滑脳症については約10万人に一人と言われているが、現在はMRIで診断されるようになり前よりも患者が増えている。一部の病気で遺伝するが、生まれつきの病気であり、なりやすい体質というのはない。疾患により遺伝子の異常や先天性サイトメガロウイルス感染などの胎内感染が原因であることがわかっている。一部の病気では親が保因者の場合に遺伝する。一部の例外を除き突然変異もしくは遺伝とは関係のない原因の場合は遺伝しない。けいれんなどのてんかん発作や発達の遅れ、知的障害、運動障害など脳の症状が起きてくる。異所性灰白質、裂脳症、孔脳症、脳梁欠損では成人でも無症状のことがある。根本的な治療法はない。症状に応じ、てんかん発作に対する服薬や発達の遅れに対する指導やリハビリテーションなど、対症療法が中心。基本的に進行することなく慢性に経過する。重症例では肺炎などの感染症を繰り返したり、栄養障害や呼吸障害によって全身状態が悪化することがある。重症例は感染症で悪化することが多いので、同居家族はうがいや手洗いなど感染予防が大切。適度な運動や活動、日光浴、栄養のある食事も大切。

疾患の詳細はリンク先をご覧ください。

http://www.nanbyou.or.jp/entry/4396


引用:希少難病ネットつながる理事長 香取久之



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