非ジストロフィー性ミオトニー症候群(指定難病114)

我々が自分の体を動かそうとするとき、我々の意思は電気信号として脳から脊髄、末梢神経、筋肉(骨格筋)へと伝わって、自分の思い通りの動きを実現する。この際、筋肉は力を入れた時にはすばやく収縮し、力を抜いた時にはすばやく弛緩する必要がある。しかしながら、筋肉に存在する「あるタンパク質」の異常により、力を抜こうとしても筋肉が弛緩しにくい(収縮したままになってしまう)という症状が起きることが知られている。この症状のことを専門用語で「ミオトニー(筋強直)」と呼びます。この「ミオトニー」は患者の実感としては、「筋肉がこわばる」と感じる方が多い。このミオトニーをもつ患者の中には、筋肉が痩せていく病気の方と筋肉の量はほとんど正常か逆に隆々と発達する病気の方と大きく分けて二種類ある。前者は筋ジストロフィーのひとつである「筋強直性ジストロフィー」と呼ばれる病気。一方、後者の「ミオトニー」をもち筋肉の量はほとんど正常か逆に発達する病気を「非ジストロフィー性ミオトニー症候群」と呼ぶ。我が国で確認されている患者の数はまだまだ少なく、正確な数はわかっていない。患者ごとに症状の強さが違い、特に軽症患者の場合には、「すこし筋肉のこわばりは感じることはあるがこんなものだろう」と、病気だと思われずに過ごしている方が多くいることが予想される。ですので、実際の患者の数は、現在わかっている数よりも多い可能性がある。参考までに欧米では、1人/10万人以下という報告がある。現在のところ特定の生活習慣や住んでいる地域などによる傾向などは知られていない。「非ジストロフィー性ミオトニー症候群」に関連の深い遺伝子がこれまでに2つわかっており、一つは骨格筋型電位依存性塩化物イオンチャネルというタンパク質を作るCLCN1遺伝子、もう一つは骨格筋型電位依存性ナトリウムチャネルというタンパク質を作るSCN4A遺伝子である。いずれも骨格筋の電気信号の伝達に重要なタンパク質。今までにわかっている患者はこれらの遺伝子に変異をもっていて、タンパク質の機能が通常とは変わってしまっていることが病気の原因になると考えられている。少し込み入った話になるが、「非ジストロフィー性ミオトニー症候群」は原因がCLCN1遺伝子変異なのか、SCN4A遺伝子変異なのかで詳しい病名の呼び方が異なる。CLCN1遺伝子変異が原因の場合には「先天性ミオトニー」と呼ばれ、遺伝の形式によって更に「トムセン病」と「ベッカー病」とに分かれる。一方、SCN4A遺伝子変異が原因の場合には、「ナトリウムチャネルミオトニー」と「先天性パラミオトニー」と呼ばれる2つの病気に分けられる。「ナトリウムチャネルミオトニー」と「先天性パラミオトニー」とは、症状の特徴がすこし違う点があり、区別される。ただ、一般には「非ジストロフィー性ミオトニー症候群」として多くの共通点があるので、大きなくくりとしてはこの病名で理解頂くのがわかりやすい。遺伝性の病気と考えられており、上記で述べた患者で見つかるCLCN1遺伝子やSCN4A遺伝子の変異は、両親の少なくともどちらかから受け継いでいることが多い。しかし、まれに両親は変異を持っていないのに突然変異として遺伝子変異をもつ患者もいる。一方、患者の子供に症状の出る確率はほとんどのタイプは優性遺伝性なので50パーセントの確率で子供に変異が伝わり、症状が出る可能性がある。ただし、ベッカー型先天性ミオトニーの場合は劣性遺伝性なので、子どもには稀にごく軽い症状が出る可能性があるのみ。一般には、「筋肉のこわばり」が一番多い症状。具体的には、「強く握った手が広げられない」、「まぶたが開けにくい」、「歩き出しがスムーズにできない」などの症状がある。また、その症状の出やすい「条件」や「状況」に特徴がある。「寒いとき」や「カリウムを多く含むもの(果物など)をたくさん食べたあと」、「運動を始めようとしたとき」、「繰り返して何度も目をつむったり開いたりする(手をにぎったり開いたりする)」、などで症状が出やすいことがある。人によっては、このこわばりが大変痛いものである場合もあり、「ひどい筋肉痛」や「筋肉のつった感じ」を訴える方もいる。そのほか、患者によっては、運動をしていないのに筋肉が発達してたくましい体格になることがある。時に、一時的に力がはいりにくい(麻痺)といった症状が出る場合もある。
このような「筋肉のこわばり」は個人差も大きく、特に幼少期や学童期の患者では自分では症状を的確に訴えられずに、「なんとなく運動が苦手」とか「冬になると体が痛くて体育の授業が嫌い」などと感じている場合もあり、まわりに誤解されたり、いじめ・からかいの対象になりかねない。このようなことを避けるためにも、きちんと診断を受け、日常生活上の対応を行うことは重要であると考えられる。残念ながら、根治的療法は現在のところなく、生涯を通してある程度「症状とうまくつきあっていく」ことが必要な病気。「筋肉のこわばり」やそれに関連した「痛み」については、保険適応にはなっていないがメキシレチンという不整脈でも使用される薬や、そのほかにてんかんに使われる薬などが有効であることが知られている。それでも完全に「筋肉のこわばり」をなくすことは難しいとされている。遺伝性の病気であることから、多くの方は幼少期や若いころに既に何らかの症状を感じている場合が多いが、程度には個人差がある。また、年齢とともに症状の程度も変わることがあり、こわばりは思春期に強く、中年以降軽くなる傾向がある。
一般には、生命の危険が及ぶような病気ではありません。ただし、生活面や社会面などの「体の機能」としては医学的にサポートを必要とする状況が考えられます。そもそも「非ジストロフィー性」という名前は、「筋肉自体が痩せることはない」、という点で、ミオトニー症状を合併する筋強直性ジストロフィーと区別して付けられた名前ですが、実際には、長い経過の中で「筋肉の痩せ」が見られる患者さんも知られています。高齢になると「力が弱る」「こわばりが強かった部分の関節がかたくなってしまう(関節拘縮)」など、生活面で支障がでてくることが知られています。このような長期的な観点から、早期から治療にあたることで少しでも生活面の支障がでてくることを減らせるかどうか、今後も研究が必要だと考えられています。

疾患の詳細はリンク先をご覧ください。

http://www.nanbyou.or.jp/entry/4519

引用:希少難病ネットつながる理事長 香取久之



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