避難所の生活で大切なこと(ぼうさいペディア#5)
第4回のぼうさいペディアで、自然災害の直後3日間は自力で生き抜き、そのあとの避難所の生活をする時期(応急対策期)では、困った時に声を上げようという話をしました。
今回は避難所の生活をとりあげます。
前回お話した、地震などが起きた直後の対応は、みなさん一人一人の状況に応じて臨機応変に対応するもので、具体的な正解となる行動はありません。
これに対して、避難所の生活というのは、市町村が提供するもので、その内容や水準は、国の補助の対象となるための要件とリンクしています。この内容や水準は一つの答えがあります。ただし、逆に、人間が作った基準ですので、もっとこうしたらいい、ああしたらいいという意見もでてきます。
しかし、こうあったらいいなという意見まで一緒に理解すると、実際にみなさんが大きな自然災害にあったときに経験することと異なってしまいます。
このため、今回は、本当はこうあるべきという議論ではなくて、現時点(2020.1.26)で、法律や国が決めている基準に基づいて具体的に避難所で過ごすことのできる生活の内容や質について説明していきたいと思います。
今回のぼうさいペディアのポイント
①避難所は市町村が運営しますが、生活の内容や質は国の補助基準にリンクしています。
②被災した方は、補助対象で避難所で不足していることがあれば、市町村の職員に要望してください。
③市町村の職員の方も、補助対象の設備や物資への市町村の財政負担はありませんので、積極的に被災した方の要望に応えてください。
避難所の生活の質や水準を決めている基準
まず、避難所の運営は行政が行うことですので、前提となる法律があります。災害対応で関係する法律には、自然災害発生直後の対応、例えば、前回のぼうさいペディア(第4回)ででてきた避難指示などを決めている災害対策基本法という法律があります。これに加えて、実際の避難所運営などの応急対策を実施する時には、国が補助する内容を決めている、災害救助法という法律が大事になってきます。今回のぼうさいペディアはこの災害救助法の説明になります。
この災害救助法に基づく基準は国の補助金がでる範囲なので、それ以上に避難所を運営する市町村が質の高い設備などを用意しても別にかまいません。
しかし、実際に大きな自然災害にあった市町村は、大きな財政支出に備えなければいけませんので、実態としては、災害救助法に基づき、国の補助対象になる内容に避難所の生活の質や水準が限定されることになります。
この避難所の生活を支える様々な物資や人などに対する補助内容は災害救助法とこれに関連する政令・府令などによって決まっています。このうち特に大事なのは、災害救助法事務処理要領という冊子です。
この事務処理要領で書かれている内容に加えて、大きな自然災害ごとに、その特殊性から特別基準というものがだされます。
過去の災害の特別基準も内閣府(防災担当)のHPにのっていますが、詳細を確認したい場合は日本災害復興学会の以下のサイトがまとまっていて便利です。
避難所に、補助金を出すきっかけとなる主体
大きな自然災害が起きると、避難所などに国庫補助をするための災害救助法の適用地域が指定されます。この指定主体は、都道府県知事です。大きな自然災害が起きたら、素早くこの指定をすることが知事の責任です。
大きな自然災害が起きたら、市町村の職員はすぐに都道府県の担当者に連絡して災害救助法の補助が使えるようにしてもらいましょう。
避難所を運営する主体、お金を負担する主体
避難所運営それ自体は、知事から市町村に委任されていていますので、避難所運営の主体は市町村です。
避難所運営の費用は国と都道府県が分担します(国は5割から9割の間で、都道府県の財政事情と災害の規模によって異なった補助率で負担します)。これに対して市町村は負担しません。
ただし、今まで述べた例外として、一部の政令指定都市については、これまで述べた都道府県の役割を既に担っています。
避難所生活の内容と質
避難所で、どういうサービスを提供したらいいか、どういう物資を提供したらいいかは、これまでの災害からみると、事実上、国が定めた補助の基準で決まっています。
この基準の範囲内であれば、被災者のみなさんは、避難所を運営している市役所の職員に提供をお願いすることもできます。また、被災者から要望を受けた市役所の職員の方も、災害救助法の補助対象になり、費用も国と都道府県が負担しますので、安心して地元の企業に物資などの注文をだすことができます。
また、企業などから物資や設備の提供が避難所にあった場合にも、補助対象内の物資や設備であるのであれば、市町村内での他の避難所と不公平を招きませんので、積極的にこれらの提供を受けることもできます。
以下、紹介する内容は、災害救助法を担当し補助対象を決める内閣府のホームページから転載したものです。
特に、避難生活が長期化したときに被災した方から要望の強い、簡易ベッド、間仕切り、仮設トイレ、エアコンや暖房機など大事な物資や設備については、補助対象を定めている災害救助法事務処理要領でも具体的に対象となることを明記しています。
国は、大きな自然災害が発生するごとに、補助対象となる物資や設備を充実してきました。この情報が、市町村の職員や都道府県の職員の方に十分に行き届いていない可能性もあります。みなさんが被災者になったときには、これらの情報をもとに、避難所の生活の改善に声をあげてください。
また、市町村や都道府県の職員の方も、災害が起こる前にこれらの内容を、ぜひ、頭に入れておいてください。
避難所が被災者であふれてしまった時の対応
市町村はあらかじめ災害に備えて避難所を指定しています。このため、本当は避難所が被災者であふれることは、災害対策としてはあってはいけないことです。ただし、事前の想定以上の大きな被害が起きると、現実にあらかじめ市町村が決めていた避難所が人であふれかえってしまうかもしれません。
災害救助法事務処理要領では、そのような場合に民間の建物(例えば、私立学校とか商業施設など)を借り上げて避難所として運営する場合には、その賃料(要領では「建物の使用謝金」という言葉を使っています)も補助対象になると書いてあります。
避難所運営の第一歩は、被災された方を避難所に受け入れることですので、受け入れが難しくなったら、市町村の職員の方は、民間の建物を借り上げて、避難される方のためのスペース拡大に対応してください。
これは市町村職員の方、特にお願いします。
まとめ
避難所は市町村が運営しますが、その生活の内容や質は、国の補助基準にリンクしています。
補助できる対象
①食事や生活環境の整備について具体的に補助基準で定められています。
②近年要望の強い、簡易ベット、エアコン、暖房機、仮設トイレについても対象になることと法律で示されています。
★被災した方は、この補助対象になる部分で足りないことがあれば、声をあげて避難所を運営している市町村の職員に要望してください。
★市町村の職員の方も、ここに掲載されている内容はすべて補助対象で、市町村の財政負担はありませんので、積極的に被災した方の要望に応えてください。
次回もまとめていますので、しばしお待ち下さい。
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