ケーキの切れない非行少年たちを読んだ

ケーキの切れない非行少年たちの本自体は知っていて、概要もなんとなく知ってた本。そういえばちゃんと読んでなかったなと新書が出てたんで読みました。自分用の印象に残ったところメモ

筆者は医療少年院という、少年院版特別支援学級とでも言うところでの体験を元に考えを進めていっている。

少年院にいる子ども達は 言わば教育、支援の網ですくえなかった子ども達。

本の目的

・どうすれば非行が防げるのか

・非行化した少年たちに対してはどのような教育方法が効果的なのか

・そうした問題意識を共有し、加害少年への怒りを彼らへの同情に変えること

・それによって少年非行による被害者を減らすこと

・犯罪者を納税者に変えて社会を豊かにすること

非行少年の多数

・簡単な計算ができない

・簡単な図形を写せない

・短い文章すら復唱できない

苦手なことは?と聞くと「勉強」「人と話す事」

この子ども達はどんな学校生活を送っていたのか

・2年生くらいから勉強についていけなくなる

・友達にバカさにされたりイジメにあう

・先生からは不真面目だと思われる

・家庭内で虐待を受けていたりする

・小学校では「厄介な子」としって扱われるだけで軽度知的障害や境界知能(明らかな知的障害ではないが状況によっては支援が必要)があったとしてその生涯に気づかれることはほとんどない。

・中学生になると手が付けられず犯罪により被害者を作り、逮捕され少年鑑別所に入ってそこで初めて「障害があったのだ」と気づかれる

非行は突然降ってこない。

生まれてから非行に至るまですべてが繋がっている。

もちろん多くの支援者が様々な場面でかかわってきた例もある。でもその支援がうまくいかずどうにも手に負えなくなった子どもたちが最終的に行き着くところが少年院

子どもが少年に行くということはある意味、教育の敗北 でもある。

こういった子ども達を作らないためには、早期からの発見と支援が必要。

だいたい小学校の低学年からサインを出し始めるので、そのサインを見逃さず支援していからねばならない。

褒める教育だけでは問題は解決しない

子どもからのサインを見つけてどのように対応するのか

現在の支援スタイルの多くは「いいところを見つけ褒める」「自信をつけさせる」

子どもの能力に凸凹があると、苦手なことはそれ以上させると自身をなくすので、得意なところを見つけて伸ばしてあげる。良いところを見つけて褒めてあげる。という方向に行きがち

しかし”苦手な事をそれ以上させない”というのは、とても恐ろしい事

支援者は「そこは伸びる可能性が少ない」としっかり確かめているのか。もし確かめずに「本人が苦痛だから」という理由で苦手なことに向かわせていないとしたら 子どもの可能性をつぶしていることになる。

ある意味支援者が障害を作り出していることにもなり兼ねない。

褒めて良くなる事はある。しかしそれでも根本的な問題解決にならないのであれば「褒める教育」は問題の先送りにしかならない。

必要なのは具体的な支援

非行少年に共通する特徴5点セット+1

保護者の養育上の問題は別とする

1.認知機能の弱さ…見たり聞いたり想像する力が弱い

2.感情統制の弱さ…感情をコントロールするのが苦手。すぐキレる

3.融通の利かなさ…なんでも思いつきでやってしまう。予想外の事に弱い

4.不適切な自己評価…自分の問題点がわからない。自信がありすぎる。無さすぎる

5.対人スキルの乏しさ…人とのコミュニケーションが苦手

+1身体的不器用さ…力加減ができない、身体の使い方が不器用

このような特徴は教育現場で先生が頭を抱える子ども(相談ケースとして挙がってくる子ども)とほぼ同じだった

病名のつかない子ども達

現状クラスで下から5人は困っているにもかかわらず診断がつくことはない。診断がつけば周囲からの理解も得られやすいが。

病院に行って色々な検査を受けてもIQが70以上あれば 知的には問題ありません。様子を観ましょうといわれ何らかの支援を受ける機会を逃している

そもそも知的障害自体は病院の治療対象ではないため軽度知的障害であっても気づかれる場合は少なく診断がつくことも少ない。

自尊感情が低い事は問題なのか

我々大人の自尊感情は高いのか 自尊感情が低くなってしまっている大人の方が多いのではないのか

だからと言って、ほとんどの人が社会で犯罪を行っている、不適応を起こしているわけでもない。

つまり自尊感情が低くても社会人として何とか生活できている。

逆に、自尊感情が高すぎると自己愛が強く、自己中のように見えてしまうかもしれない。大人でもなかなか高く保てない自尊感情を子どもにだけ「低いから問題」と言っている支援者は、矛盾している。

問題なのは自尊感情が低い事ではなく、自尊感情が実情と乖離していることにある。何もできないのにえらく自信をもってる。逆に何でもできるのに自身が全然持てない

要は等身大の自分をわかっていないことから問題が生じる

教科書教育以外はないがしろにされている

「先生方が、この3つの中で最終的に子どもに身に着けてほしい為に行う、最も大切な支援は何か?」

という質問に 社会面 と答える先生が殆ど

具体的にどのような事をしているかの質問には 

何もしてない 子ども同士のトラブルになった時、その都度指導している。

つまり、今の学校教育には系統だった社会面への教育というものが全くない。これは大きな問題。

社会面の支援とは、対人スキルの方法、感情コントロール、対人マナー、問題解決力といった、社会で生きてい行く上でどれも欠かせない能力を身に着けさせること。

それらが学べないと、多くの問題行動に繋がりやすく非行化していくリスクも高まる。

すべての学習の基礎となる認知教育への支援を

以下はコグトレによりどのような効果が期待できるかが記載されてあった。

感想

コグトレ自体は1年前程から取り入れており、どのような狙いがあるかも細かく記載されていた。今回の本を読むことで、教材の背景や 見捨てられた子ども達の行き着く先を知る事ができた。

ブレーキを踏む練習になる、と記号探しのトレーニングについて記載があったのが印象的だった。自分の行動にブレーキをかけるのが苦手な子ども達にやってもらい様子をみたい。

コグトレの効果はまだ筆者の経験からしか語られておらず、検証もされていない段階(だと思う)でもコグトレで重要なことは、(学習時間の枠の中ならば)子ども達が自分からやりたがり、それが結果トレーニングになるというところ。

個人的に褒める教育の勘違いは、楽しく取り組んで褒められる環境を用意してもいないのに褒める教育をしようとしていることだと思っている。

楽しく取り組むための下地作りも楽しくやれなければ意味が無い。その点コグトレは難易度さまざまで子どもに合わせて選びやすく、スモールステップでクリアできるので楽しんできるようになってるのが良かった。

コグトレも色々な形で商品展開されて、商品の数も増えてきた。どんどん商品展開され一般的になっていってほしい。そうすればコグトレ自体の検証もされたり、さらにブラッシュアップされより良いものになるだろう。

そしてケーキの切れない非行少年たちの内容が世間一般へ広がり人の目や意識を変える事が、何より社会的に子ども達の支援になるように思える


とりあえず以上


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