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「思い込み」からの抜け出し方

私たちの思考には「速い思考」と「遅い思考」があります。
スピード重視の世の中ですが、
両方の思考をうまく使い分けることも必要です。

速い思考は省エネ・遅い思考は柔軟で合理的

速い思考は、直観的、感情的、自動的な思考です。
時間をかけて考えなくてもよいので、
省エネで、コスパがよさそうに思えます。

速い思考は、複雑なことをシンプルに置き換えるので、
考えるプロセスをショートカットでき、
一度に複数のことを並行処理できるマルチタスクも可能にします。
生産性も上がりそうです。

しかし、速い思考は、思い込みがあっても修正しずらい。
いつもと同じ考え方だと、外れることもあります。

一方で、遅い思考は、意識的、論理的な思考、推論です。
熟慮や計算など、頭を使う努力は欠かせませんが、
合理的な意思決定ができます。

コンピュータで例えると”遅い思考”は、1つずつのシリアル処理です。
時間はかかりますが、理性的であり、弾力的で柔軟な思考ができます。

省エネ型の速い思考 と 柔軟性のある遅い思考。
どちらを多く使っているでしょうか? 

直観の多用は危険

「人は判断をするとき、直観を多用する傾向がある」

ダニエル・カーネマン(心理学者)

直観とは ”思い込み” です。

直観は、ときに非合理的なことがあるのですが、にもかかわらず
特にリスクがある状況で、直観を使う傾向があるようです。
省エネ型の速い思考で、速く楽に解決したいのでしょうか。

思い込みで行動した結果、
うまくいっていない場合は、修正が必要です。

コンピュータのプログラムで例えると、
うまくいっていない時はこうです。
 
・資源だけを浪費して先に進まない状態(永久ループ)
・お互いに待ち状態で動けない状態(デットロック)
・作業を途中で放り出して異常終了(アベンド)
・作業が異常に遅くなる(スローダウン)
 
プログラムは、ただちに修正しなくてはいけません。

人の場合は、
・時間や体力だけを消費するが、事態が良くならない。
・相手の出方を見て、活動が停止して先に進まない。
・作業をあきらめてしまう。無力感に陥ってしまう。
・パフォーマンスが落ちてしまう。

このような状態だとストレスがあるので、
早く思い込みから抜け出して、正常な状態に戻す必要があります。

思い込みを引き起こす5つの罠(トラップ)

悪影響を及ぼす思い込みには、「5つの罠(トラップ)」があります。
間違った思いこみの原因です。
 
1. 相手の頭の中を読みすぎる
2. 自分が悪いと決めつける
3. 相手や環境のせいにする
4. 心配しすぎて大災害をおこしている
5. 打つ手がないという思い込み

出典:ペンシルベニア大学 ポジティブ心理学オンラインコース

「相手の頭の中を読みすぎる」
 
相手の頭の中を読みすぎると、
自分は相手の全てを知っていると思い込み、
確信があって疑わないので、
事実を確認する行動がとれません。

相手とのコミュニケーションが遮断され、
間違った情報がいつまでも修正されないのです。
 
その結果、 誤解が生じ、相手との関係がこじれてしまうというワナです。
苦手な相手とは話しづらい。
このワナに引っかかった経験は誰でもあるのではないでしょうか。

「自分が悪いと決めつける」「相手や環境のせいにする」
 
自分が悪いと決めつけると、必要以上に悲しくなり、
相手が悪いと決めつけると、不満や怒りの感情が強くなります。
これらは共に、エネルギーを浪費してしまうワナです。
 
いつまでも悔やんで行動が停滞する。
他人や環境のせいにして、自分でやることはないと決め込んでしまいます。
このワナもなかなか抜け出せません。

「心配しすぎて大災害をおこしている 」
 
小さな心配事を考えすぎると、
妄想がふくらんで大災害になってしまい、
何をしてよいかわからなくなります。

パニック状態をひきおこすワナです。
心配を大きくしすぎると、適切な行動がとれません。

小さなボヤなら消せるけど、
大災害だと想像すれば、身動きがとれなくなります。
 
「打つ手がないという思い込み」
 
打つ手がないというのは、英語ではHelplessness
助けがない、万策が尽きたと、天を仰ぎます。

無力感やあきらめを感じることで、
問題解決のエネルギーをなくしてしまうワナです。
 
問題を放り投げ、何もしない状態では事態はよくなりません。
打つ手がないと決め込むことが常態化すると深刻です。 

トラップから抜け出す方法

さて、トラップから抜け出すには、どうしたらよいでしょう?

1.思い込みを巡らせることを止める

思い込みを何度も反芻すれば、その分、脳が疲れます。
何度も思い巡らせて、活動エネルギーを低下させないこと。
無駄なコストを削減するように、思い込みを考えることを止めます。

通常なときなら、「なぜ?」を3回繰り返すのはよいことです。
遅い思考で、じっくり考えて行動することができます。
ただし、思い込みがある状態では、逆効果です。

2.正しくない前提で情報を集める
  
思い込みが「正しくない」という前提で情報を集めます。
思い込みは、思考にバイアス(偏り)がかかった状態なので、
疑ってみる必要があります。

人に聞く、調べる、事実のみを集める。
コミュニケーションを閉ざさない点でも、情報収集は有効です。

3.捉え直す(リフレーム)
 
「思い込みは正しくない。なぜなら・・・・」というふうに、
集めた情報をもとに、現実を捉えなおし、
思い込みを訂正します。

正しく捉えられると、「なんだそうだったのか」と、
納得して一歩前に進めます。

4.次の行動を計画する

「ありそうな結果は、・・・だ。」
「そうだとしたら、・・・ができる」 といったふうに
自分でできることを、考えてみます。

思い込みは「速い思考」なので、直観的、感情的、自動的な思考です。
もし、間違っていたなら、
「遅い思考」を使い、意識的、論理的な思考、推論によって、
現実的で合理的な方向に、落ち着かせます。

感情の一時停止ボタンを押す 

心理学者のダニエル・カーネマンは、
直観を使いすぎることに警鐘を鳴らしています。
 
特定の状況で繰り返し起きる「思考のエラー」は、
本来なら予測できるはずだといいます。

思考のスピードを落とせば、間違いを防げるといっています。
速い思考に頼らず、遅い思考を使うべきということです。
 
速い思考は、なかなかスィッチを切ることができないので、
思い込みの修正は、何度も繰り返し実践するしか方法はありません。
 
動画再生の一時停止ボタンを押してみるように、
自動再生や早送りしそうな状態を止め、
自分で何度も感情の「一時停止ボタン」を押して、
思い込みに気づくことです。
 
「今のはどうかな?」
「正しい情報を集めよう」
「正しくない。なぜなら・・・だから」
「ありうる結果は・・・だ。だったら、・・・ができる。」
 
感情の一時停止ボタンは、ストレス軽減にも役立ちます。
 
 
参考:
「ダニエル・カーネマン 心理と経済を語る」 
ダニエル・カーネマン 楽工社

「ファスト&スロー(上・下) あなたの意思はどのように決まるか?」 
ダニエル・カーネマン  ハヤカワ・ノンフィクション文庫

ペンシルバニア大学 ポジティブ心理学オンラインコース


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