棄てられた者の行方 23

 アブネルはイスラエルの長老たちがいるところで語った「しばらく前からあなたたちは、ダビデが自分たちの上に王となることを求めていました。神はダビデに対し『私はダビデの手によって、ペリシテ人の手から、すべての敵の手からイスラエルの民を救う』と言われました。そこで今、神が語られたようにしなさい」。アブネルはまた、ベニヤミン人にも語りかけ、ヘブロンにも行ってダビデにも語りかけた。彼はイスラエル人、ベニヤミンのすべての家の者が良しとしたすべてを語った。アブネルがヘブロンのダビデのもとに行った時には、従者20人を連れており、ダビデはアブネルと彼と共にいる従者たちのために宴を催した。アブネルはダビデに言った「私は立ち上がって行き、全イスラエルを王、私の主のもとに集めましょう。彼らはあなたと契約を結ぶでしょう。そしてあなたはあなたの心が望むすべてのままに治めるでしょう」。そしてダビデはアブネルを去らせたので彼は平安に帰って行った。するとそこへ、ダビデのしもべたちとヨアブが、多くの略奪品を持って侵略から帰ってきた。しかしアブネルはダビデとともにヘブロンにはいなかった。彼を平安に去らせた後だったからである。ヨアブと彼とともにいた全軍が帰ってきた。人々はヨアブに告げて言った「ネルの子アブネルが王のもとに来ました。王が彼を去らせたので、彼は平安に去って行きました」。ヨアブはダビデのもとに来て言った「あなたはなんということをしたのですか。アブネルがあなたのもとに来たというのに、あなたは彼を去らせたので、彼は行ってしまいました。あなたはネルの子アブネルをご存知のはずです。彼はあなたを欺くために来たのです。彼はあなたの出入りを、あなたが行うことすべてを知るためにきたのです」。ヨアブはダビデのもとから出て行き、アブネルの後から使者たちを遣わした。彼らはシラの井戸から彼を連れ戻した。しかしダビデはそのことを知らなかった。ヘブロンにアブネルが戻ったので、ヨアブは密かに語ろうと言って、門の中の傍らに彼を連れて行った。そして彼の腹を刺したので、彼は死んだ。それは彼の兄弟アサエルの血への報復だった。ダビデは後からそのことを聞き、言った「私と私の王国は、ネルの子アブネルの血に関して、永遠まで神に対して無実だ。それらはヨアブの頭の上に、彼の父の家のすべてに降りかかるように。ヨアブの家からは、体液の流出ある者、重い皮膚病の者、糸車の錘を握る者、剣で殺される者、パンに欠乏する者が絶えないように」。ヨアブとアビシャイがアブネルを殺したのは、ギベオンの戦闘において彼らの兄弟アサエルを殺したゆえだった。ダビデはヨアブとすべての民に言った「お前たちは私とともに自分たちの衣を裂け。そして粗布を着てアブネルの前で嘆け」。そしてダビデ王は棺の後ろから歩いて行った。人々はアブネルをヘブロンで葬った。王はアブネルの墓に向かって声を上げて泣き、全ての民も泣いた。王はアブネルに対して哀歌を作って言った。「愚か者が死ぬようにアブネルは死ぬべきなのか。あなたの手は縛られなかった。あなたの足は足枷に繋がれなかった。悪人の子らの前で倒れるようにあなたは倒れた」。全ての民は彼に対し、さらに泣いた。また彼らはダビデのもとにきて、陽のあるうちにパンを食べるように勧めた。しかしダビデは「パンであれ何であれ、陽が沈む前に私が味わうならば、神が幾重にも私を罰してくださるように」と言った。王が行うことは全ての民の目に全く良いものであると認めさせるものとなった。すなわちその日、全ての民、全イスラエルは、ネルの子アブネルを殺したことが王から生じたものではないことを知った。王は彼のしもべたちに言った「お前たちは今日、イスラエルにおいて、偉大なる君主が倒れたことを知らないのか。この私は油注がれた王としてはなお弱く、これらの者たち、すなわちツェルヤの子らは私にとって手に負えない。神が悪を行う者をその悪に応じて報いてくださるように」。

 サウルの息子はヘブロンでアブネルが死んだことを聞いた。それで彼の腕は萎え、全イスラエルは落胆した。サウルの息子のところには、二人の襲撃隊の隊長がいて、一人の名はバアナ、二人目の名はレカブと言った。彼らはベニヤミン部族の出身で、ベエロト人リンモンの息子たちだった。ただしベエロト人もベニヤミン部族の一員と思われていたにすぎない。ベエロト人たちはギッタイムに逃げて来て、そこで今日まで寄留者になっていたにすぎないからである。ベエリ人リンモンの子ら、レカブとバアナは行って、イシュボシェトの家に真昼に入った。すると彼は昼中に寝床で寝ていた。そこで彼らは麦を受け取るふりをして家の奥に入って行った。彼らが家の中に入った時、彼は彼の寝室の中の寝床に寝ていたので、彼らは彼を討ち殺し、彼の首を切り離した。そして彼の首を持って、夜中アラバの道を行った。彼らはイシュボシェトの首をヘブロンのダビデのもとに持って来た。そして王に言った「ご覧ください。あなたの命を求めたあなたの敵、サウルの子イシュボシェトの首です。神は今日、サウルと彼の子孫に対し、私の主、王のために報復されました」。ダビデはレカブと彼の兄弟バアナに答えた「ベエロト人リンモンの子らよ。私の命を全ての敵対者から贖ってくださった神は生きておられる。かつて私に『御覧なさい、サウルが死にました』と告げた者がいた。彼は自分の目には、自分は良い知らせをもたらす者と映っていた。しかし私はチクラグで彼を捕えて殺した。こうしてその知らせに対し彼に報いた。ましてお前たちは正しい人を彼の家の中で、彼の寝床の上で殺した悪人たちだ。今私は彼の血の報いをお前たちの手から求めないだろうか。私はお前たちをこの地から絶つであろう」。そしてダビデは若者たちに命じたので、彼らは殺した。そして彼らは彼らの手と足を切り落とし、ヘブロンのため池の傍に吊るした。そしてイシュボシェトの首を取り、ヘブロンのアブネルの墓の中に葬った。


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