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馬と娘に関するいくつかの思考-It's an ill wind that blows nobody any good-

風が吹いた。
春風にしては瞬間最大風速が強く、もはや爆弾低気圧レベルの風が吹いている。


そう。「馬のブームが来ている。」



流行の風が吹く

 春競馬シーズンが到来し、昨年無敗三冠を達成したコントレイルやデアリングタクトのさらなる活躍、3歳G1の展開などが楽しみになってくる季節になってきました。私自身も去年はあまり競馬を見ることが出来なかったので今年は全力で楽しみたいと思っています。

さて、大阪杯はご覧になっただろうか。


2017年大阪杯  NumberWebから引用

大阪杯は2017年からG1に昇格し、新たに春古馬三冠というタイトルが追加されたのも記憶に新しく、以前の産経大阪杯は長らく天皇賞(春)の前哨戦とされてきたレースです。個人的には2017年のキタサンブラックを見て競馬を本格的に見始めたのでとても思い入れがあるレースです。


今年の大阪杯はとても激熱でした。

まさに頂上決戦と言わんばかりに、有力馬が集い、もうどの馬が勝つのかよくわからないレベルでした。三冠馬コントレイルが勝つのか……快速女王グランアレグリアが勝つのか……


結果は馬場が雨の影響で重となったことによってレイパパレが制覇し、JRA6戦6勝でのG1初制覇した馬は史上初となる快挙となったわけなのですが、それは別の話……


しかし私が一番驚いたのはこの大阪杯を見ている人の多さだった。

もうね、みーんな競馬みてた。15時にTwitter見たらもう競馬の話題しかないぐらいにはみんな競馬を見ていた。確かに毎年日曜の15時ぐらいには多少なりとも競馬の話題が出て、お決まりのように本田未央の画像が出てくるのはもはや様式美でしかないが、今回の大阪杯はレベルが違った。


毎週競馬を辞める本田未央


えっ、あなたも競馬を見ているんですか!?

これです。競馬といえば特に賭け事のイメージが根強く、敬遠されがちでなんなら「競馬やってるんです」なんて口にしたら、「あっ、関わらんとこ」と思われるのも仕方ないくらいにはあまりイメージは良くない。盛り上がるのも年の瀬の有馬記念ぐらいで、春競馬から見始めている人は結構なファンだろうと思う。そんな競馬が今注目されていることが大阪杯を通して強く感じられた印象だ。ではなぜこんなにも流行っているのか。


流行った原因

原因というのはあまりにもワードセンスが悪いが、ソシャゲ界隈でメガヒットしているものがある。『ウマ娘 プリティーダービー』である。


『ウマ娘 プリティーダービー』は競走馬を擬人化したゲームで「ウマ娘」を育成し、「トゥインクル・シリーズ」と呼ばれるレースでの勝利を目指すという育成シミュレーションゲーム。私はウマ娘自体の存在は結構前から知っていましたが、まさかここまでムーブメントが起きるとは思っていなかったので若干後悔すらしてしまっている。


擬人化コンテンツとしての競馬

ウマ娘の詳しい話をしたかったのですが、いかんせん流行りに乗っかっただけな上、アニメも未履修なので力不足で出来ませんが、競馬周辺の知識は元からぼちぼちあるのでその辺を使いながら少し語ります。

まずは、この『ウマ娘 プリティーダービー』というゲームはさっき言った通り、競走馬を擬人化したものなので競走馬の名前のウマ娘が爆走します。全く興味がない人からすればシュールこの上ない光景です。私もそう思った。ただ、このゲームの力の入れようはその辺のモチーフから擬人化しただけのコンテンツと圧倒的に違う。


ウマ娘ごとのシナリオが熱い

まずは例としてサイレンススズカをご覧いただこう。元となったサイレンススズカ同様のレースが組まれていることが目標でわかる。


現実のサイレンススズカのレース一覧

wikipedia 競争成績より引用


※サイレンススズカ(元ネタ)の簡単な解説

・目当ての馬との種付ができず、偶然予定が空いていた馬から生まれた馬

・ゲート入りまでいた厩務員がいなくなったことで寂しくなってゲートをくぐってしまう人懐っこい性格

・馬房内で左回りにやたら回る旋回癖があり、それを直そうとしたら、ものすごくストレスをためてしまい、レースで惨敗する

・4歳から覚醒し、逃げの戦法を取ることによってライバルに自分の走りをさせないことを強みとして連勝する

・毎日王冠ではエルコンドルパサーやグラスワンダーといったマル外馬(外国生産馬)との決戦により毎日王冠史上珍しい10頭未満のレースになり、G2にもかかわらず13万人もの観衆が詰めかけるレースとなるが、2馬身半の差を見せつけ、逃げ切る


・天皇賞(秋)では1枠1番になり圧倒的人気で1番人気になる。スタートし、いつも通りのハイペースの逃げを見せるが、突如失速し競争中止になり後に了後不良と判断されこの世を去る。「沈黙の日曜日」として語られている


サイレンススズカ自体、涙なしには語ることのできない存在であり、のちの競馬界に革新をもたらした存在でもある。しかし、記録上では宝塚記念しかG1を制覇できていないため、「名馬とはいえない」と評されることもあるが、間違いなくドラマを見せてくれた馬として愛されている。



……すみません。普通にサイレンススズカについて書こうと思ったら泣きそうになりました。ウマ娘に戻ります。



このように激熱な馬が原作のウマ娘サイレンススズカ、目標はもちろん天皇賞(秋)を制覇することですが、ゲームシナリオとしてはトレセン学園の秋川理事長が設立した「URAファイナルズ」を制覇する『新設!URAファイナルズ』である。


秋川やよい理事長


で、擬人化したサイレンススズカがこちら。レースで着る衣装を勝負服と言うらしく、実際のジョッキーが着る勝負服と同じ感じ。始めて聞いたときなるほどと言ってしまった。メンコとか勝負服が黄色と緑が入ったものを使用していたので緑のアクセントが入っている。かわいいね。



育成する前に「継承ウマ娘」というものがあり、育成が終わったウマ娘が所持していたスキルや距離適性、馬場適性を引き継がせることができる。つまり、因子である。


いや……普通にすごくないですか??このシステム

競馬というものはブラッドスポーツと呼ばれるほど血統が重要なスポーツなのだが、因子として継承させることで競馬にとって重要な要素をカバーしている。かわいい女の子に擬人化させるときに一番つまづくのは血統という点だろうし、繁殖なんてものは絶対にNGな世界なので、これが一番の最適解だと感じ感動した。


次に育成についてだが、体力を消費してトレーニングを行ったり、テンションを上げさせるためにお出かけしたり……と目標であるレースまでにどのようなパラメータを上げるかというのを調整していくゲームシステムは最近散見され、カジュアルに育成できる手軽さと、強いウマ娘を作るために徹底的に仕上げることのできるやり込み要素もあるこのシステムはとても良いと思う。




「シャニマスみたいなものよ」とサービス開始直後は言われていたが、たしかに「アイドルマスターシャイニーカラーズ」もこのシステムだし、なんなら「パワフルプロ野球」もこのシステムなので育成ゲームはこのシステムが一番カジュアルに遊びやすいと感じる。


アイドルマスターシャイニーカラーズ 
レッスンや仕事をこなし、パラメータを上げ、W.I.N.G.優勝を目指す、シナリオ激重育成シミュレーション


さて、サイレンススズカを育成するからには天皇賞(秋)は是非とも優勝したい。優勝したスクリーンショットがコチラ。










そう。このゲームは““ちゃんと””現実をリスペクトし、IFを最高に楽しめるゲームなのである。











ありがとうウマ娘。












そして、優勝したウマ娘はウイニングライブという勝利後にライブをするというカロリーのおかしい催しがあり、そのセンターを務める。恐らくウイニングランの要素をライブに変えたんじゃないかと思うが、実際にキタサンブラックが優勝した時も馬主であるサブちゃんは歌ってたのでよくわからん。

さらに、URAファイナルズをも制覇するとこのゲーム屈指の電波ソング「うまぴょい伝説」を聞くことができる。しかも育成できるウマ娘すべてに歌い分けがあるという狂気である。やべーよ。




最初に聞いたときは爆笑したが、結構難しいURAファイナルを制さなければ聞くことが出来ないので達成感とともに少しずつ洗脳される。



レースについて

レースは現実の障害レースを除いたほとんどのレースが存在している。中でも大井競馬場で行われるナイター競馬(トゥインクルレース)もレース場が夜になるのですごく細かい。他には東京の大欅、中山の直線、京都の淀の坂など、実際にあるコースで走る。すごい。レースも牝馬牡馬関係なく出場できるし、たとばGⅢの「京都牝馬ステークス」とかは「京都ウマ娘ステークス」に名前が変わっていたりして、どのレースにも適正さえ合えば出場できるやさしい世界。えっ、元が牡馬のウマがトリプルティアラをとってもいいんですか!?!?



ウマ娘の評価

競馬というスポーツのハードルの高さは情報量の多さも関与している。この競馬新聞でよく見るオッズだの、◎だの▲だの、騎手が誰だの、まさに情報過多である。

Winning Post 8 2017 競馬新聞より 

ウマ娘をプレイした人ならこのような現象に陥っているのではないか。





今までわからなかった情報(競馬新聞)が急にわかるようになった





英語が急に分かるようになる現象みたいなもの。恐らく実際の競馬を初体験した人はこうなっている。

この競馬に一切興味がなかった人がやってもある程度実際の競馬が理解できるレベルによくできているといえる。運営はホントに競馬が好きで理解があるんだなということが強く感じられてとても楽しい。また、全く競馬が知らない人でも興味が湧き、実際の競馬まで見るようになっているという現象が起きているということが、どれだけ偉大かが分かる。マジですげぇ。




もう少し競馬に詳しくなりたい人たちへ

ようこそ競馬の世界へ。ブラッドスポーツと言われる所以を知る前に、ある程度競馬の史実を知った方が楽しいです。スペシャルウィークとかライスシャワーとか、当時どんな感じだったのかを知ると2度うまいです。ウマ娘は平成の競走馬が多いのでそれ以前の競馬を知るのも良いですし、サンデーサイレンスが覇権を握った後を追っても面白いです。系統の話をすると無限に話が終わらないくらいに歴史が深いので、歴史が好きな人はハマりやすいのかもしれない。

そんなあなたにWinning Post を紹介しよう。

Winning Post は馬主となって馬を育成するシミュレーション。マジの馬が走ります、自家生産馬で三冠を制覇したり、凱旋門賞などの国際G1に殴り込みが出来たりと日本のレースのみならず、世界で競馬が出来るのが特徴となっている。

しかし、情報はウマ娘の倍くらいあるのでご注意ください。

例えば……
サイアーラインだったり……

調教指示だったり……

繁殖牝馬の管理だったり…いろいろあります。

たぶんチュートリアルを見てもよくわからんと思います。

そして、Winning Postはボジョレーヌーボーの如く毎年出てるが、4月15日に今年に対応したWinning Post 9 2021が発売される。特徴は何といってもシナリオが選択できること。今までは8では82年からの開始で平成の競馬をやるためには20年ほどプレイする必要があったが、9からは91年スタートとなり、逆に昭和の競馬はプレイできかった。(最初からシナリオ選択を実装しろとはずっと思ってはいる)


そしてPVがあるのだが……


海外競馬が新たに増えたりとか、家族イベントが増えたとか言ってるのはいいのだが、肝心のグラフィックとかカメラワークの話は一切していないので全く変わっていないのではないかと感じる。なんたってコーエーですからね。

フルプライスで買う勇気がある人、もっと競馬に詳しくなりたい人は是非買ってやってみてください。私は正直様子を見た方が良いと思います。




最後に

ウマ娘レビュー記事ではなくウイポ批評記事だったというのが本性です。なんかすいません。でも今年のウイポは少しぐらいは期待してます。いつも圧倒的不評だけれども。「シナリオ追加ぐらい無料アプデで出来るやろ」とは思いますがコーエーなので仕方ありません。インタビュー記事が上がっていたので一通り見てみましたが、新要素以外の改善点は挙げられていなかったのでまあそういうことなんだろうと思う。


こんなにも競馬を知って「面白い!!!」ってなる人が増えて元から見ている側の私からすれば毎日ニコニコしちゃうぐらい嬉しい。あの「ファミリーや、女性、若者のみなさん、競馬どうですか?」みたいな迷走しているJRAのコラボじゃなくてホント良かったなというのが感想です。Cygamesサンキューな。

少し前に麻雀が流行ったように、競馬もイメージが変わると良いですね。もっと好きな馬の話だったりウマの話だったりし足りないのでどこかでまた書くかもしれません。

それではさようなら。








あっ、忘れてたけど、競馬用語はJRAの「競馬用語辞典」がおすすめだぜ!!!!!!

さらばだ!!!!

牧草が増えます