言葉は記憶で、命は愛




端が切られることのないままに

宝物箱に仕舞われた私の青いチケット




ひさしぶりに外の空気に触れさせてみる




一年だって、もう一年経ったんだって


早いね





ねえ、私の青いチケットくんよ


私ね、逢えたよ


やっと滝沢歌舞伎に逢えたんだよ





君を目の前に必死に涙を堪えた日もあったけど


やっと やっとね





凄かったよ


もうね、凄すぎたよ




「誰が」とか

「なにが」じゃなく


なんか もう 空気が 空気が凄かった





今から君に

私の心のなかをぜんぶ話すから





君が

全部憶えていてね



私は

多分忘れてしまうから



たのんだよ 青いチケットくん








申し込みがはじまったとき、

私はね

彼らの光を浴びたことが

ありがたいことにもうあったから、




自分の「当選」そのものへの期待以上に


「彼の誕生日、今年こそ幕が上がりますよう」

という 切なる祈りを添えて



「五月五日」

大切に希望を送信したの


とても鮮明に憶えてる






当落の日には、

事前にしっかり覚悟、というか

我儘に傷つかないようこころの準備をして、



目を閉じて 

確認のボタンを押して

そして おそるおそる目を開いて、



そして画面に浮かんだ予想外の文字を

何度見もして 何秒も見つめて



やっと飲み込めた 目の前にある事実に

朝っぱらからたいへん泣かされたこと、




これもまた鮮明に憶えてる








私は我儘で 弱虫だから


私に与えられた席が

皆んなの席を奪ってしまったように思えて


なんにもできやしないくせに

胸がくるしく重たくなったことも、




大好きな人たちから届いた

やさしい「おめでとう」に

心が守られて 泣きそうになってしまったことも、


とっても はっきり 憶えてる









なのに、


なのに、


大事な いちばん大事な


五月五日


当日の記憶がどうにも曖昧で


あの日観た光を

今は未だ現実だと思えていなくって




映画を観ていたような

夢を見ていたような


そんな感覚




細かいレポートや

舞台の素晴らしい魅力は

きっと他の人が遺してくれているはずだけど、


私の記憶

今 在る 記憶だけ

それだけは

ちゃんと掴んでおかないといけないのに、


こまったなあ





そんな こんなで

なかなかここを拓けずにいたけれど、


今日 彼らが閉じる幕とともに

私も ここに記憶を綴じられたら、と



じっくり ゆっくり 思い出してみるからね







まずね、

Snow Man    大きかった



周りには沢山の演者さんが居て、


でも やっぱり 特別に 大きかった



”大きい” 

もちろん実際のからだのサイズ感もそう



大きいよ、あの人たち


高いよね、足がとっても長かった



きっと私と見えている景色は全く違うのだろうな




でも「大きく見えた理由」は

きっと それだけじゃなくって



とっても 


逞しかった



うまくいえないんだけど 


ひとりひとりが樹のように


まっすぐ立っていてね




それがとても格好良くて

凛々しくて、美しくて、力強くて、



とても とても 大きく見えた



シルエットが視界に映った 

その対面 最初の一秒で

私の瞳には涙の膜が張った




オーラ、なんてそんな言葉が安く聞こえるほど


凄まじい圧があった




滝沢歌舞伎の Snow Man は

アイドルじゃなかった


大きな舞台の座長だった




一人一人の心意気や覚悟の大きさを

痛感した たった一秒で






そして、

聴こえる、「ひらりと桜」


音に震えた


”感動してる”ってはっきりと実感した


私はこれに

逢いたくて、

逢いたくて、

やっと 逢いに来た






ずっと ずっと


目の前の舞台から目を逸らせなかった


瞬きがもったいないくらい




ずっと ずっと


知りたくて、知らなかった


逢いたくて、逢えなかった



Snow Man が

深澤 辰哉さんが 居た






釘づけとはこのことか、というほどに


視線が一点に集中していた




なんだろうな



うまくいえないんだけど 


愛だった



好きを通り越した感情




彼の魅せる全てが

私には煌めいて眩しく観えて




胸がぎゅうっと縮んで痛かった




歌声だって


変な話

美しすぎて


私が愛してきた音 


そのまますぎて


リアルか、夢か、よく分からなくなった





言葉にしすぎたら、安くなっちゃうほどに



彼は舞台の上で輝く人だった









幕間になって、

私は自分の腰の痛みに驚いた



ずっと背筋を伸ばしすぎていたようで、

でも

それに気づかないほど夢中になっていたのね



ふうっと深呼吸をついた




そうしたらあっという間に


三〇分が経っていた





会場の灯りと共に

腰の痛みは消えた



なんの我慢もなく、二幕を楽しめる




かと思いきや、


今度は腰の痛み以上に

くるしい我慢を強いられることに







”笑い声をあげないよう堪える”


これが、まあ辛い




ちょっとまって


一幕の あの 逞しい方々は どちらへ?


え?


このひょうきんな彼らはどなたですか?



え?

Snow Man?


ほんとう?



めちゃめちゃおもしろいです、やばやばくんです






でも、もちろんそれだけじゃない


普段テレビで観る 

やさしいまあるい彼らとは異なる


邪悪さ


情けなさ


戦慄が走るような気迫



これまた、「だれ?」となる





お丸さん


女性でした


最初から最後まで


当然のように



でもこれってよく考えたら凄いことで




あたりまえだけれど

私にはなんの違和感もなく

男性の役をこなすことはできない




お丸さん 凄かった

お丸さん 生きてた

お丸さん かわいらしかった


逢えて とっても うれしかった




好きなアイドルの

本気の演技を

目の当たりにできたこと


一生の誇りです











どう?青いチケットくん


え?「なんにも伝わってこない」って?


そうでしょう、ごめんね


もう 

どうにも全部を言葉にすることなんかできないの



でもね、

脳がどう処理できなくたって

どうにも保存できなくたって


きっと

からだは

こころは

ちゃんと憶えてる






誰かも言っていたでしょう


「一度あったことは忘れないもの。思い出せないだけだ。」って





私は 

きっとこれから

「ひらりと桜」を聴くたび、目が潤むだろうし


銀座を歩けば、

簡単にあの日に想いを馳せられてしまう


「命」と書くたび「LOVE」を思い出すだろう



きっと わすれない







だから私は無理をせず

今 この瞬間にあるきもちだけを

ぎゅっと詰めて君に託すよ





空白になってしまった君との思い出だけれどさ、

君が居たことも私一生忘れないからね



君も私の大切な記憶の一部だよ




これからも共に生きていこうね







滝沢歌舞伎がくれた煌

命に換えて

愛と共に生きていく



春の踊りは、よおいや さあ!





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