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ディジタル書斎11 情報の編集 小札法

知識の構造化の技法 こざね法
収集し獲得した知識は断片的です。これを構造化することによって行動につながる大きな知識に変えることができます。そして新しい視点が見えてきます。典型的な例は本を書く、論文を書く、記事を書くということです。これはアウトプットです。
私が学生時代に「知的生産の技術」という知の生産技術を紹介する岩波新書が出版されました。著者は京都大学の梅棹忠夫教授です。著名な文化人類学者でフィールドワークで得られた知識を構造化する、情報整理術を紹介した本で、ベストセラーになり私も読んで紹介された情報整理術を使いました。というより身につけました。カードで知識を整理する手法も京大式カードとして有名になりました。私も使ってみました。
その中で知識の構造化の技法として「こざね法」が紹介されていました。これは今日に至るまで時々使っています。 「こざね」は鎧の部品の「小札」から来ているそうです。
知識の断片を小さな紙に書いていきます。一つの小さな塊の知識です。この小さな紙を机の上に並べて、読みながら関係の深いものを集めていきます。次はそのグループの中で論理的な関係を見ながら並べていきます。それをホッチキスで止めていくとよろいのような塊ができます。そしてグループ間の論理的な関係から全体をまとめます。
この辺は有名な川喜田二郎東工大教授のKJ法とほぼ同じです。川喜田二郎教授も文化人類学者でフィードワークのデータを整理する手法として開発した技法です。ただこのKJ法は「発想法」として教授自身が精力的に普及活動を進めたため、多くの企業や研究者に普及し今でも広く使われています。今ではポストイットがありますからこれを使っている人が多いです。特にブレインストーミングの結果をまとめる手法として適しています。
私は「こざね法」を愛用していますが、その理由は机の上で断片的な知識を読み、その論理的な関係性を見い出しながら、ホッチキスでつなげていく作業とその時間がとても創造的な行為ですから。
「小札」に知識をきちっと書いていく作業は大変でしたが、今ではデジタル技術が使えます。知識はすべてデジタルで保管されていますから必要な部分をコピー&ペーストすれば容易に切り出せます。私はワードで少し空白をとって知識を拾っていきます。そして印刷して空白の部分を切っていくと「小札」ができます。あえて紙の「小札」にして机の上に並べて作業する事は、パソコンの画面ではできない作業です。もちろん色々なソフトが開発されていますがここは感性の問題です。広い面積に並べられた「小札」の一覧性と指による操作が、私の脳の思考回路とぴったり息が合うからです。
本も何冊も書きましたが、部分的にこの「こざね法」の技法をよく使いました。本を書くという事はあるテーマに沿って知識を関係性で構造化する作業ですから。前回紹介した情報の収集で保存してあるテーマに関係する情報、これは「小札」ではなくかなり大きな塊です。新聞の記事や雑誌の記事の部分、読書でマークした部分などです。最近ではWEB情報もあります。これらの内容の関係性と論理的な順序関係を考えて、構造化していきます。それをもとに原稿を書いていきます。むろん書き下ろし部分が大部分ですが基本は知識の構造化で、「小札」としてまとめられた知識はその核となります。記事などは直接引用して挿入することもあります。

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