私の小説の書き方④小説化する

です。

①着想②文章にする③プロットと失敗作、に続きまして今度はいよいよ、アイデアやプロットを小説にすることについて、です。

えーと、どうしようかな。

私がこれまでに書いた長篇を持ってきて文章の呼吸のタイミングとかをやってもいいんだけど、それだとあんまり面白くないので、①の着想で出した、『鬼滅の刃』を発想元にした物語の序盤だけ書くってのをやってみますか。「インスピレーション元」としただけなので権利関係は大丈夫だと思うんですけども………

どんなことを考えたかというと、パクリダメ絶対!できれば要素もかぶらせないぜの精神で【インスピレーション元がやっていないことをやる】をキモに、【主人公の家族や身内は、○日以内に襲われるという予言を受け、主人公はこれを阻み家族を守るため、その場に留まり闘う】設定を考えました。加えて、
【非力な一般人が武器もろくにない状態でその場に留まって闘う方が面白いし、その場合には罠が必要になります。そこで罠作りについて考えてみます。罠を作るのが巧い人……山の猟師か海の漁師か。
鬼滅は山が多いので、海にしましょう。すると、海から来る化け物を待ち受ける、漁村の民たちの物語になります。罠を張り、自分たちを守り、予告された○日を越えるまで生き延びる。】
というストーリーラインにしてみました。あれだったら↑にリンクを貼った①の後半部分を読んでみてくださいね。

海から来る化け物というとまあ日本なら海坊主か人魚ですけど、海外だとクトゥルー神話があるのですよね。ううむ。設定好き人間的にはこのへんちゃんとやっときたいところなんですけど、調査・設定系はまた別にした方がいいかもしれなくて(長くなるから)。
しかし海坊主もなあ。じゃあ人魚かな。半魚人?シャチ。くじら。エイ。
……やばいこれだとアクアマンだぞ。
鬼を想起するようなものはインスピレーション元関連からよくないし、かといって津波を思わせる存在はつらい出来事を想起させる可能性があるので、できるだけ離す。
それなら、たとえば光るもの。とげとげしてなくて、ぶよぶよしたクラゲみたいなものがいいかもしれない。月のように光ってきれいだと手を伸ばすと、吸い込まれてぶよぶよに溶かされてしまう。シオドア・L・トーマスの「群体」みたいな。これでいくか。

月の満ち引きと海の干潮が鍵になって、たとえば朔の日=新月の満潮の晩に化けクラゲが漁民を襲うという伝承があるとする。だけどどういうわけかもう百年ほど化けクラゲは出ていない。最後に大がかりな襲撃があったきり、ただのクラゲは見かけるが、化けクラゲではないので、村人はもうすっかりおとぎ話だと思っている。だが……という設定にしてみる。時代は、これはインスピレーション元とかぶってしまうのですが、明治から大正頃にします。時代が似通うことはさほど問題ではないはず、というか現代にするとあんまり雰囲気が出ないし、そのくらいは元のエッセンスを入れて良いと思います。

どこから話をはじめよう。切り口をまず探る。のどかな日常からのんびりはじめることもできるけれど、怪物の存在ははじめに提示しておきたい。予言のことも自然に触れたい。
クラゲってやっぱり海で泳いでるときに刺されると存在がわかるよな。

ふう、と深呼吸。一文目を書くときはいつも耳を澄ませます。

 海の声を恐ろしく感じなくなったのは、いつの頃だったろう。暗い夜どころか燦々と輝く明るい陽の下でも、何かを隠しているように黒々とたゆたう海に足を竦ませなくなったのは、いつの頃だったろう。
 少年は両親と兄妹が眠った後、こっそりと草履に足をかけて、木戸をそっと開けた。潮風に吹かれて金具が錆びつき、いつもなら大きな音を立てて軋む木戸が、この時は珍しくほとんど音もなく開いたので、少年は幸先が良いとにんまり微笑んだ。彼の名前は辰男と言った。
 木の壁に引っかけた道具袋を手に家を出ると、辰男は小高い丘を駆け下り、指の間にさらさらとした砂が入り込むのを感じながら、眼下に広がる海を目指した。潮の匂いを含んだびょうびょうと吹きつける風が、絣の着物の背を膨らませる。物音にちらりと横を見やると、他の家からも同じ年頃の子どもが出てきて、こちらに頷きかけてきた。
 山から海へとなだらかに繋がる砂の斜面に立つ、潮風に傷みつつある木の家々のそこかしこから、少年が出て行く。夜の海へ向かって、密やかに、白い砂をまき散らして駆け下りる。

 

……はい、アナウンス入ります。切り口/一行目にはいろんなやり方があるので正解はなく、私のこの一行目よりもうまい文はきっとあると思います。ただなんとなくこれかなーと。それじゃ解説になりませんね、ちゃんとやろう。うーん、自分の書いてる文章が「こういう効果あります」って説明しながら進むのってなんか気恥ずかしいですけども、がんばるぞ。

【海の声を恐ろしく感じなくなったのは、いつの頃だったろう。暗い夜どころか燦々と輝く明るい陽の下でも、何かを隠しているように黒々とたゆたう海に足を竦ませなくなったのは、いつの頃だったろう。
最初にこの一文を選んだのは、今が平穏であること、けれども海を恐れていた時期が・時代があり、やはり今もなお何かを隠しているような不穏な予感がしていること、恐れを忘れていることへの警告、という意味があります。
あくまでも私の場合はですけれども、視覚と、耳が大事だなと思ってます。リズムと言葉の音感。「いつの頃だったろう」を二回続けるのは、その方が音として印象に残るからです。定石だと同じ言葉は続けない方がプロっぽくてかっこいいんですけど、あえて続けてみるのも手です。
一文目はここからはじめた方が良いというイメージがまず浮かび、それに応じたぴったりくる一文を書けると、耳元でりんと鈴が鳴るような感じがします。
……わかりにくいですね。たぶんコツは、「これな気がする」という自分の直感を信じて、形にしてみることです。
この物語の一文も、たとえば海の描写を自然に書いたって良いし、いきなり誰かが叫んでたって良いと思います。でも私の場合は上のように、この作品の〝核〟は何なのか、これからどんな雰囲気をまとった話がはじまろうとしているのかを、おとぎ話のように語りはじめることを選びました。

ちなみに私がこれまで書いた作品の一文目はこんな感じです。
オーブランほど美しい庭は見たことがない。】(短篇「オーブランの少女」)
「オーブラン」という謎の名前が庭であること、そしてこの類い希なる美しいから話がはじまるよ、という導入です。ダフネ・デュ=モーリア『レベッカ』の「昨夜、私はまたマンダレイへ行った夢を見た。」という一文から影響を受けています。知らない地名を突然出す、そこが魅力的であることがわかる、というのがキモ。
人生の楽しみは何かと問われたら、僕は迷わず「食べることだ」と答えるだろう。】(長篇『戦場のコックたち』)
これは主人公のキャラクターを最初に示すこと、これからはじまる物語が「食べる」に関連するのだとわかるように書きました。この長篇は戦争を扱っているので、当然明るくはなく、暗い展開が待ち受けているのですが、主人公のこの価値観が大事だったのでこんな感じに。プロットの詳細が決まっていなかった時から(四章の終わりの展開は最初から決まっていました)この一文にしようと思っていました。

さて、話を戻します。
次の文、少年が出てくるところからは、ここが海ぞいの集落であること、草履、着物などから、ある程度古い時代であることを読者に伝えるようにします。明治時代とか江戸時代とか大正時代とか直接時代背景を言ってしまうより、人物の動きの中に自然に要素を溶け込ませると、読者をこちらが見せたい世界観へと引っ張り込みやすくなります。そして、
【潮風に吹かれて金具が錆びつき、いつもなら大きな音を立てて軋む木戸が、この時は珍しくほとんど音もなく開いたので、少年は幸先が良いとにんまり微笑んだ。】などから、この少年が何らかの目的を持ち、こっそり家を出なければならないのがわかります。ちなみに名前がつきました、辰男くんです。辰年生まれかな。

特に出だしは、スピードを落とさないように状況を伝え、世界観を理解してもらうことが大事です。簡潔でありつつ描写も盛り込む。難しいように感じるかもしれないですが、リズムを摑むとそんなに難しくないです。
たとえば「動き+描写、動き+描写、まわりの状況説明」などといった構成で段落を書いてみます。以下。
木の壁に引っかけた道具袋を手に家を出ると、少年は小高い丘を駆け下り、指の間にさらさらとした砂が入り込むのを感じながら、眼下に広がる海を目指した。(※これは道具袋を取る動きから、彼の家がどの位置にあるのか、またどんな場所であるか=砂+眼下の海ということは海沿いに住んでいることがわかる)潮の匂いを含んだびょうびょうと吹きつける風が、絣の着物の背を膨らませる。物音にちらりと横を見やると、他の家からも同じ年頃の子どもが出てきて、こちらに頷きかけてきた。(※いきなり服装を説明して「今はなんとか時代」とか言っちゃうのはなんとなく無粋なので、潮風に演出をお願いします。風のおかげで絣の着物を着ていることが書けました。そしてどうやら付近には少年の家だけでなく、似たような家々が他にもあり、少年たちは示し合わせて外へ出ているらしいこと、がわかります)

さて、では続きを書きます。

 月も雲もない晩だった。夜空は満天の星が輝くが、海は一層暗く沈み、かえって水平線がよくわかった。浜辺には魚や餌の生臭いにおいがむわりと立ちこめ、漁師小屋や船小屋がいくつも並んで、係留された船が、潮位の高まった波にゆっくりと揺れている。
 その小屋のまわりに、すでに到着した子どもたちが集まっていた。汗ばんだ鼻の下を袖口で拭いつつ近づいていくと、年かさの少年がちっと舌打ちした。辰男は自分が何かまずいことをしでかしたかと体を強張らせたが、どうやら違うらしい。
「あいつ、灯りは点けるなとあれほど言ったのに」
 視線を追って振り返ると確かに、深い眠りについた集落、薄暗い斜面を、丸くほのかに赤い灯りがぽんぽんと跳ねるように下りてくる。浜木綿の家の息子、実だ、と辰男は思った。提灯とどこか似た体型、おっとりした性格の持ち主で何をするにも半歩遅く、いつもみんなにからかわれる。家は丘の一番高いところにあり、美しい浜木綿の咲く庭を持ち、造りも他より少し大きかった。
 他の大勢は実が来る前に着物を脱ぎ、褌一丁の裸になって、次々に海へ飛び込んでいった。ただ辰男だけは浜木綿の家の子どもを待った。そして実が息を切らし汗だくになりながら現れると、提灯を奪い取って海に投げ込み、その丸く開きかけた口を手で覆った。
「黙れ。いいか、みんな真剣なんだぞ」
「でも……でも」
「何だよ」
 手のひらに唾がかかったのを嫌がり、辰男は口から手を離す。解放された実はぐっと唾を飲み込むと勢い込んで言った。
「危ないよ。今日は朔の日だ」
「朔だからなんだ。俺たちは海の子だ、満潮も怖くないぞ。それよりも遠泳大会で隣村のやつらに負けたくないだろう」
 みんなでもっと練習しよう、と約束したのだ。泳ぎを教えてくれる岡島家の爺さんは、必要以上に海に浸かってはいけん、潮水と陽に疲れるだけで何にもならんよ、と少年たちをさっさと浜へあげてしまう。しかし当の少年たちは、これではいつまでたっても上達しない、隣村のやつらはもう三里も泳いだという噂があるのに、自分たちはまだ二里がやっとだと焦った。それで年かさの少年秀雄の声かけで集まり、夜のうちに密かに練習することになったのだった。
 夜の海は、本当のところ辰男も少し怖い。黒々とした海水はまるでよどんだ沼のように感じるし、魚か海藻かわからないものがぬるりと体に触れるからだ。しかし秀雄が実に向かって舌打ちしたのを思い出すと、仲間はずれの方が怖くなる。俺も早く行かないと、同じ根性なしだと思われてしまう。
  そうして飛び込もうとする辰男の腕を、実が握りしめて止めた。
「冗談じゃないよ、朔の海で泳ぐなんて。化けクラゲが出るかもしれないのに!」
 その言葉を聞くや辰男は吹き出し、夜のしじまを破ることも忘れ腹を抱えて笑い出した。化けクラゲだって!化けクラゲだって!ぼんやりしたやつだとは思っていたが、迷信まで信じてるとは。
「お前は家に帰れよ。寝小便してもいいように今晩は褌をたくさん穿いておくんだぞ」
「馬鹿にするな、本当なんだから。お社さんが……不吉だって」
 辰男はまた笑おうとしたが、実の瞳があまりにも真剣で、口をつぐんだ。唇は色がなく小刻みに震えている。
  生ぬるい風が吹く。船の舫い綱がキイキイと嫌な音を立て、死んだ魚のにおいが鼻につく。
「お社さんの杯が割れたんだって。ここ百年ずっと割れなかったのに、割れたんだって」
「……それがどうしたって」
 そう言いかけた時、辰男ははっと顔を上げ、耳をそばだてた。
 悲鳴が聞こえた気がした。満天の星と漆黒の海、二層に分かれた彼方から、悲鳴が聞こえた気がした。
「提灯が」
 暗くたゆたう海面を、一粒の灯りがゆらゆらと揺れている。熟した柿のような、落ちる直前の線香花火の火のような赤色の灯りだった。先ほど実の手から奪い、海に投げ込んだ提灯だ。
 ……本当にそうだろうか。
「辰男、提灯なわけがない。あれは火が消えてる。君が水につけたから、あっというまに火が消えたんだ」
 今や実よりも辰男の方が震えていた。悲鳴は更に大きく、耳をつんざく叫びとなり、それは明らかに友の少年のものだった。辰男は思わず飛び込もうとしたが、実に止められ、ふたりは踵を返して大人を呼びに行った。
  漁村は明くる朝まで寝ずの救出作業に励み、ほとんどの少年は助かったが、秀雄の体は右の足一本を残して見つからなかった。


……という感じで、いかがでしょうか。
話の展開としては、これからこの二人の少年が見かけたものをなかなか大人が信じてくれないとか、お社さんという長い白髪にはちまきを巻いた老婆の予言があったりとか、ようやく化けクラゲの存在を理解した大人たちが対策を打とうとするが、大襲来の日がわかって、それまでに罠や準備を整えるとか、でもなかなか殺し方がわからないとかそういうかんじで、分量的には長篇になるんだろうなと思います。

ここまでの小説的な技巧としては、不穏な気配を醸成すること、それから辰男と実というふたりの少年に命を吹き込むことなのかな、と思います。あとこれから何の話をはじめますよっていう導入部ですかね。
化けクラゲなるものがこの地域にはいるらしく、でも迷信だと思われていて、それがどうも朔の晩に出るらしい、などの条件をある程度出してしまいます。
細かい技法としては、辰男が実の提灯を奪って海に投げ込んだことが、化けクラゲの出現と様子がかぶる、ということでしょうか。
こういうのはホラーの常套で、使えるテクニックだと思います。

今回はかなり即興で書いているので、ろくに調べていないため潮の満ち引きだったり大正時代あたりの言葉遣いなどあやふやでかなり怪しいですが、本当に書くときはちゃんと調べましょう。ちなみに辰男と実、秀雄は、明治安田生命の名前ランキングから大正時代あたりをぱっと確かめて、そこから名前を取っています。

情景描写の言葉選びは、わかるかな、伝わるかな、どうかな、くらいでも全然大丈夫だと思います。自分に酔ってしまうのもいけませんが……
オノマトペは部分的にちょっとだけ使うと効果的でよいような気がします。
あと②で触れたように、語彙を増やしておくと役に立ってくれます。たとえば「年かさの少年」。これひとことでリーダーっぽい子だとわかります。
あと「浜木綿の家の子」、というのもなかなか使える描写だと思います。その子の家の特徴、庭にきれいな花があって他よりも少し造りが大きい、というだけで、ああ集落の中では裕福なんだな、と情報が伝わります。まあ浜木綿はラフに咲いてる気はしますけど、庭という存在自体が珍しい規模の集落なんだと思います。

現在進行で起きていることと情景描写、それから過去を持ってきて(岡島家の爺さんがあんまり海に浸かりすぎるなという台詞とか)ミックスさせると、テンポ良くかつ重量のある文章になったりします。ただこれは私の癖で、「重い!」と引かれることもあるので最善とは言えません。もう好みでとしか言いようがない。

ただ、たとえば【暗くたゆたう海面を、一粒の灯りがゆらゆらと揺れている。熟した柿のような、落ちる直前の線香花火の火のような赤色の灯りだった。】などの実際どんな風に見えたのか、などは、記憶を掘り返して「これ」っていうものを見つけてください。ありがちな表現ではなく、これだな、ってやつを。

それから文章の構成についても、行ったり来たりしてなんども修正してください。今し方書いたばかりの文章を繰り返し繰り返し何度も読んで、余分なところや言い足りてないところをちゃんと見て、削ったり足したりする。
この文章でもそうです。特に実が登場して、みんなが海に入ってしまった後からの展開は、書き進めつつ戻って足りない部分を補完しました。
たとえば【夜の海は、本当のところ辰男も少し怖い。黒々とした海水はまるでよどんだ沼のように感じるし、魚か海藻かわからないものがぬるりと体に触れるからだ。】という部分は最初はなくて、その前の【それで年かさの少年秀雄の声かけで集まり、夜のうちに密かに練習することになったのだった。】から、すぐに【しかし秀雄が実に向かって舌打ちしたのを思い出すと、仲間はずれの方が怖くなる。】へと繋いでしまっていました。けれども【夜の海】に対して辰男が本当はどう感じているのかをしっかり書くことによって、どんな心根を持つ子なのかもわかりますし、不穏さの醸成にも繋がります。実とはそんなに遠くないというか、ひょっとすると仲良くできるかもという伏線にもなります。

情報を出しつつ物語を進められるようになる一番の近道は、本を読むことです。とにかく読む。特に文体に惹かれる小説を読んでみましょう。私の場合はその一人が遠藤周作で、『海と毒薬』の冒頭部分は今でもめちゃくちゃ参考にしてます。あれは物語をすすめつつ簡潔で要を得た描写で情報を出す、の最高峰だと思います。
導入部の語り手は引っ越してきたばかりで、気胸の治療を継続しなければならないが、その医院というのがこんなものでした。
以下、遠藤周作『海と毒薬』引用。
【妻に教えられた道をさがして、その勝呂という医院をたずねてみた。夏の西陽が風呂屋の窓硝子に反射して、近所の百姓たちの家族が入浴に来ているのだろうか、湯をながす音、桶をおく音がかすかに聞こえてきた。それはひどく倖せな音のように私には思われた。医院は風呂屋の裏側に赤く熟れたトマト畠をはさんで、すぐわかった。
 医院といっても公庫で建てたような小さなモルタル作りの家である。垣根らしい垣根もなく、陽に焼けただれた褐色の灌木をトマト畠との境にしている。まだ夕暮れなのになぜか雨戸をしめきっていた。庭にはよごれた子供の赤い長靴が一足、落ちていた。あわれな犬小屋が入口にあったが、犬はいなかった。呼鈴を幾度も押したが誰も出てこない。私は庭にまわった。雨戸を少しあけて、白い診察着を着た男が顔をだした。】
以上、引用終わり。

いやあもう比べるなって話ですね私の駄文とね。すごいですねほんとに……この勝呂医院の庭の描写、雨戸をしめきっていて、子供の長靴が転がりっぱなし、犬小屋には犬がいない。これだけでこの医院の不穏さ、孤独や、幸福とはほど遠い感じがわかります。
はじめて読んだ時もすげーなと思ったんですが、小説家になってからはより一層すごさにおののきます。描写とはかくあるべし、と思いながら日々励むぞー、ほど遠いぞーと白目をむいています。

……がんばろ。



こんな感じかな……即興で書いたのでちょっと疲れました……本職の仕事はしてるのでご安心ください……まだ続くかもしれない……??







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