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名前の由来

必ずと言っていいほど訊かれる質問、「なんで深緑野分ってペンネームなんですか?」「本名ですか?」。

これを訊ねられると思わず苦笑してしまう。質問が嫌なのではなくて、自分でもたいがいな名前だなあと思っているからです。

ときどき「しんりょくかと思った」「のわけですか?」とも言われる。読み方は「ふかみどり のわき」で、のわきのイントネーションは階段を降りるように「の」が一番強くて「わ」「き」と順に下がる。「たまき」「ひろき」なんかと同じです。「とちぎ」とか。

ちなみに「オーブランの少女」をミステリーズ!新人賞に応募した時点からこの名前にしていました。デビューが決まった時に、担当さんから名前を変えましょうと言われて、私もその方がいいなと思いふたりでずいぶん長いこと(少なくとも三ヶ月以上)考えたんですけど、ぜんぜんいいのが浮かばなかったんですね。結局、「もうだんだん深緑野分でなじんできちゃった。これでいいかもう」と結論して、今に至ります。でも今でも毎日のように「改名したい」とは思ってます。

さて由来。これがまた全然たいしたことないんです。質問してきた人が「本当にたいしたことなかった」とがっかりするレベルで意味がない。

まず「深緑」ですが、これはまずペンネームに色の名前をつけようと思っていて、漢字の「深」という字の造りが好きだったから、それがつく色の名前というと「深緑」になるでしょ、ということで。
次に「野分」。これは台風の意味がある古語ですが、私は散らかし魔で、私が居なくなった後は強風が荒らしたようになるので「お前、台風みたいなやつだなあ」と以前友人に呆れ顔で言われたことから。
それから源氏物語の「野分」の、風が吹いて御簾が上がり、うっかり紫の上を見てしまう場面がとても好きで、高校の古典で習って以来心に残っていたため、というのもあります。

……以上が、いつも取材や対面で訊ねられたときに答えることです。

でも実のところそれだけではなくて……というか深い意味はやっぱりないんですけど、いろいろな自分の好みだったり「私はこうだ」とか「こうでありたい」という願いだったりがたくさん混ざって、この名前になっています。

私は様々な色が好きで、どれかひとつ選ぶというのができないできたんですけれど、深緑色は私の大好きなとある映画の世界観を演出する重要な色で、はじめて観た時の14歳の私から、ここまで歩いてきた道は続いていて、これからも外れたくなかったという気持ちもあります。それに、青や赤やピンクや黄色、黒、白、といった色の中から、一番私らしいのが緑系統だと思ったのもありました。

それから「野分」は、そもそも五大元素と呼ばれるもののなかで「風」が一番好きで、私の本名もある意味風や空気があってこそのものであり、また小さい頃によく読んでいた学研の宇宙の本に、西洋占星術だと自分の星座は天秤座で風の星座なのだというのが面白くて、「風」に強い愛着があったというのもあります。子どもの頃ってもし魔法が使えるならどんな魔法がいいか、って考えますよね。私にとってはそれが「風」だったわけです。

だけど「嵐」だと国民的アイドルグループを彷彿としちゃうし、CLAMP『X』の嵐さんみたいにかっこよくないし、台風は名前っぽくない。名前に風を付けようかとも考えたけどうまくいかなかった。なんか自分の名前じゃないような気がして。
そんな中で「野分」は、源氏物語を古典で習った時に、ノートに「野分」と何度も書いたりもしたし、愛着がある言葉だったのです。


……という、凄まじくいろいろな細かい理由が混在して「深緑野分」という名前に決着しました。90歳越えの祖母が「きれいな名前ねえ」と言ってくれてるのでいいとしましょう。

私の本名はすこぶる簡単……というか、下の名前がひらがななので画数がめちゃくちゃ少ないのです。父がいた頃は名字の画数が多少多かったんだけど、下の名前と韻を踏んでるのをからかわれたりして好きじゃなかった。両親離婚して母の姓になってからはもうひょろひょろした感じで、結婚してからもあんまり画数は増えなかった。

なんで、同じ人間の名前には見えないペンネームと本名です。

ということで、どうでもいいけどよく訊かれる質問に答えてみました。

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