私の小説の書き方③プロットと失敗作
です。
その前にすみません訂正がありまして、①②で取り上げた「祖母作」の昔話ですがこれは各地にある昔話だったそうで!すみません!オリジナルじゃなかったですごめんなさい!
言い訳をすると聞いたのが幼児の時分だったのと母がたしか「オリジナル」と言っていた記憶があったので……なのですが、これ、やっぱりちゃんと思い込まないで調べないといけないですね……(しかももしかすると以前同じ指摘をされていたかもしれず、全然記憶になくて、ほんと記憶力の衰え激ヤバでは??です)
こういううっかりもやらかしますし、マジで私はよく間違えるし信用ならない人間でして(フィクション以外の嘘だけはつかないように気をつけているけど)、私の話もほどほどに聞いて頂く感じ&人の振り見て我が振り直すの気持ちでお願いします。すみません!
ただその話がサンプル・題材として使えることには変わりないので、①も②も注意書きと訂正を加えただけで、そのまま使ってます。なのでオリジナルという間違い以外は、特に気にせず読んでいただければと。
ではそんな感じで、今回の本題に進みますね。
①で小説のための着想と発展の仕方について書きました。
②は文章にすること、言葉を使うことに慣れるとか
今回も文章の実践編にしようかなーと思ったんですがまずプロットと失敗作について書いておこうかなと。
私の失敗ぶりはすごいですよ。なにしろ2010年に短篇が佳作になったのに単行本になるまでに3年かかりましたからね。短篇集なので佳作受賞作の他にあと4本書く必要があって、それがもう全然うまく書けなくて。
なのでそのあたりから、「プロットを考えつつ失敗に気づく」ことについて書こうかなと思います。ちなみについ最近もプロットで盛大に転んでまして、ようやくどうにか立て直しがはじまったり。
・プロットと失敗作
のっけからなんですが私はプロットを立てるのが下手です。
プロ作家はいろいろで、プロットを立てない人も、立てられない人もいますし、ぼんやり組む人もいれば、緻密に組み立てる人もいます。正解はない。
私はプロットを立てるのが死ぬほど苦手なんだけど、取り扱うテーマがでかいくせに(戦後ベルリンとかヨーロッパ戦線のアメリカ軍とか)ろくにプロット立てずにいて、大迷走して最初から全部やり直しとかになることを経験して(マジで)最近ちゃんとやるようになりました。なので、今回の話はそういう「書いているうちにおかしなことになって収拾が付かなくなり破綻しがち」な方向けかもです。
なんでプロット立てるのが苦手なのかなーと自分を振り返ってみると、なんか綱に繋がれてるような気になっちゃうからですね。放牧が好きなのに牧場の囲いに押し込められた感というか、どこまでも行きたいのを邪魔されてる感じがするというか。
しかしこれやるとダリになっちゃうんですよ。サグラダファミリア(ガウディじゃああ!)。いや、あれは芸術なんで比較しちゃいけない。
えーと、たとえば絵を描こうとして、全体を見ずにちっさいところから描きはじめてそこばっかり集中してると、なんか右手の拳だけがめちゃでかくて全身が紙に入りきらなくなっちゃう、みたいな感じ。これは芸術でもなんでもなく、ただの全体が見えてない人です。
自由自在に書いて芸術になるタイプの人はそのまま進んで下さい!
1.プロットを立ててみる
①で扱った着想に、今度は枝葉をつけ、踏み込んで形を整えていきます。これをやると矛盾や無理に気づけるので、特にエンタメ系で小説書きたい人はやっておきましょ。
プロットも長篇向きと短篇向きがありますが、まず短篇向きから書いていきます。
とりあえず最初の着想を書き出します。とにかく思いつき・衝動で大丈夫です。ちなみに衝動については別に語りたいんですが、ちょっと長くなるので、厳密に言うと衝動と物語の核・ストーリーラインは別物だよ、ということを置いておくくらいで先に進めます。
さて、では成功する方法を書く前にまず失敗について書いておきましょ……
・失敗作
せっかくなので私の失敗作を例に挙げてみます。
……とは言ってももうほんとうにひどいやばい出来のやつは恥ずかしすぎて出せない……ので、まだマシな失敗作の方を挙げてみます。
これは私のデビュー作である短篇集『オーブランの少女』に収録された「氷の皇国」の前段階にあたる作品のプロットです。こいつがまったくうまくできなくて2年くらい吸い取られました……
スーザン・プライス『ゴースト・ドラム』を10代のはじめに読んで以来、私はずっと氷に閉ざされた闇と冬の国に惹かれていて、どうしてもそこを舞台にした物語が書きたかった。で、『オーブランの少女』は基本的に「少女」をモチーフにしたミステリを5編集めるつもりだったので(いちおリンク貼ってみる)
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488453114
Ⅰ・少女が主人公であること
Ⅱ・ミステリであること
のふたつの縛りがありました。
私は物語に呼ばれる方で、イメージだったり関係性だったりが頭に浮かび、それをどう物語化しようかと考えることが多いんですが、この時もまずイメージがあり、そこへどうたどり着くかの試行錯誤を繰り返しました。
そのイメージが、「冬の国で織仕事・針仕事をしている少女たちが血にまみれて死んでいる」「それが何度も繰り返される」というもの。箇条書きにして書いてみます。
・舞台は冬の国
・主人公と数人の少女が閉ざされた部屋で布を織り、刺繍仕事をしている
・ひとりずつ血を吐いて死んでいく
・最後に残った主人公も息絶える
・もう一度同じことが起きる。死んだはずの少女が生きている。
はい。これを小説としてちゃんとしたものに仕上げる能力が、28,29歳頃の私にはありませんでした。
まずお針子の少女たちがどうして死ぬのかについては、「少女たちが使えている主人の娘が嫁ぐので、その花嫁衣装を縫っている」→「実はその夫となる男が残虐非道な〝青髯〟で、妻になった者に着せる花嫁衣装に毒を仕込み、殺そうとしていた」というオチにしようと考えていました。で、主人公の少女はそのターゲットにされた娘さんと本当は想いを通わせていて、娘さんが嫁に行ってしまうのを悲しみながら布を織るのだけど、その糸に毒が仕込まれているので、お針子たちがどんどん死んでいく。でも遠いむかーしの辺境の国なので〝下々の者〟の人権は一切なく、死んでしまっても一顧だにされずに婚礼の日を迎えてしまう、という感じ。
はい。矛盾に気づいた人えらいです。私はこのプロットに執着して2年ほど溶かしましたがあなたは大丈夫だ。
えー、解説します。
そもそも、毒を含んだ糸でお針子が死ぬのは、まあ口を触ったりするんでしょうけども、花嫁衣装に織り込んで花嫁が死ぬなんてできますかっていう。現実的に。そして理由。そんなことする理由が、〝青髯〟が残虐非道で加虐嗜好の持ち主だったから以外につかない。こういった動機は実際に小説にしてみると、かなり陳腐です。「本当は残酷なグリム童話」みたいだし、気味悪さに酔った気分のまま娯楽にするのはキモいのでストップ考え直そう、と当時の自分を止めたい。
そして何度も繰り返すループ設定についても、なんかうまくいかなかった。
プロットを作る最中に、お針子たちの死はやっぱり問題視されて……というかターゲットだった娘が怒り狂って婚約を破棄、それどころか明晰な頭脳で夫となる男の犯行であることを示して処刑する、という展開に変えたんですけど、じゃあなんでループしてることにしようか、どうやってループであることを読者にわからないようにうまく書けるのかで悩みました。で、娘が魔術師に頼み込んで魔法を覚え、その日をやり直して恋仲だった少女を救おうとする、というオチにしたんですが……
これがうまくいかない。
娘は何度も恋人を救おうとチャレンジするけれどもそのうち年老いてしまい、何も知らない主人公がドアを開けると、老婆の姿となって現れ、身分を隠しながらどうにかお針子たちを救おうとする。
なんかうまくいきそうに見えますか?いかないんですよ、これが……
結局、
・花嫁衣装を作る吹雪いた日に、織物部屋に老婆が訊ねてくる
・なんかみんな死ぬよみたいな予言をして帰る
・本当に死んでしまう
・おののく主人公が生き残り、犯人扱いされて処刑される→老婆が迎えに来て彼女を抱きすくめる→実は恋した相手だった!
ってことになり。
だけど無限ループを解除する方法が見つからないんですよね……っていうか過去に戻れるなら、少女たち全員に向かって「外へ出ろ!婚約は無効だ!糸は毒だ!」って叫んで強制的にやめさせたら、もうそこで終わりじゃないですか……!!ちゃんちゃん!!!ハッピーエンド!!末永くお幸せにね!!
話が破綻している。
なので、これは過去に戻ってるんじゃなくて亡霊が死んだ日を何度も繰り返してしまうっていう設定に変えて、可哀想な娘さんは延々と続く無限ループを付き添い寄り添いながら、結局は死んでしまう恋人を腕に抱いて最後を見届けることを何十年も繰り返し、また次の朝も同じ日を繰り返して終わるってことにしたり。だけどそもそもなんで無限ループよ。そんな苦しみの連鎖をどうして止められないのよ。死んでもまた同じ日を甦ってまた死んで、付き添うくらいなら止めてやりなさいよ。もう作者のナルシシズムと趣味全開なだけじゃないですかこんなの……そういう読者からの突っ込み待ちな小説になってしまったのです。
そこからさらなる試行錯誤が続き、もうしっちゃかめっちゃか、ツギハギにツギハギを足して増改築を繰り返した異形の建物みたいになってしまい、一応原稿が残ってるんで読み返してみても意味がわからないですね。罪をなすりつけられた主人公、そもそもどうやって生き延びたんですかの理由とかめちゃくちゃこじつけだし。「私を思い出してくれたらあんたはこの繰り返しの日々を終わらせられる」とかもね、今し方までいたはずの他の少女たちはどうなんですかっていう。それも幻影だったんですか、という。
しかも悪いことにですねー、これでもどうにか小説の形をとってぼろぼろにはなりながらも完成に近づいたちょうどその時、『魔法少女まどか☆マギカ』の10話が放送されたんですよね……やべえでしょう。かぶってる。
厳密にはかぶってないけど、でも想起はしますよね。それだけのインパクトがあるアニメだったし。
で、永遠にお蔵入りとなり、悩みに悩んだ後で「氷の皇国」が生まれるのですが……まあそんなこともありました。
教訓は、うまくいかないときはこだわりすぎずに引くことですね。はい。
・成功例
失敗作の話ばかりしてもあれなので、成功する例の方にいきます。
①のはじめに、「私にとって物語の種とはトゲ、フック、とっかかり」と書きましたが、プロットはそのとっかかりととっかかりにロープをかけて、ひとつに繋いでまとめるようなイメージです。バランスが崩れているとうまく繋がりません。その場合、せっかくの物語の種でも一部、あるいは全部を捨てる必要もあります。
イメージ ○がアイデアの粒
○ ○ ○
○ ○ ○○
○ ○ ○
これを繋いでいく。使えなさそうなものは捨てる。
たとえば、
○前の席の人の髪の毛に葉っぱがついている
○葉っぱを取ってあげたいけど気まずい
○葛藤 ○友情について書きたいかもしれない
部活がうまくいってない○ ○給食の献立について書きたい気持ち
こういうアイデアの粒がわさわさと出てきたとします。そうしたらこの粒と粒から連想の線を引いていきます。
・前の人の髪に付いた葉っぱ→どこでついたんだろう?
・前の人は誰?どんな人? どうして主人公は葛藤するの?
どうして葛藤しているのか?一番書きやすいのは自分の経験談をまぜる方法ですが、それだけだと浮いてしまう可能性もあります。
たとえばもしあなたが「友達と図書委員をしていたんだけど、本の貸し借りのやりかたについて口論してしまった」という経験があったとして、それを使いたい場合、↑のアイデアの粒は使えるでしょうか?葉っぱと図書委員を繋げることはできるでしょうか?そういったことを考えます。上手に混ぜるには、何かを捨てたり、何かを加えたりする必要があります。
前の席の人→同じ図書委員で、このあいだケンカしてしまった。なぜ?本の貸し借りのやりかたについて。
葉っぱ→どこでついたか?自然に考えれば、学校の敷地内。いつついた?葉っぱが頭についたのは朝?昼?何時限目?
さてこの場合、物語にするのに一番自然で無理がなく、うまくくっつきやすいのはどこでしょう。おそらく、ケンカの理由や図書委員であること自体には、こだわらなくていいはずです。本の貸し借りと頭についている葉っぱを繋ごうとすると、かなり無理をすることになります。よっぽどそれが書きたい場合は、葉っぱが頭についている設定を変えます。
図書委員ではなく、園芸部員だったらどうでしょう?あるいは花壇の水やりをする係だったとか。あるいは、校庭で行う球技系の部活のメンバー。
たとえば、サッカー部。頭に葉っぱがついている。たぶん、朝練の時についたんだろう。でも校庭にあの葉っぱはない。ひょっとするとボールが飛んで、拾いに行った時に灌木の下に入り込んでしまい、潜って頭に葉っぱがついたままなのかも。
こうやって考えていくと、大なり小なり推理力が必要になってくる感じがしてきますね。シャーロック・ホームズみたいに、ある事柄から、ひょっとしてこうだったのかもしれない、と物語を探っていき、矛盾の少ない形に整えていく。それがプロットをきれいに整理するコツかもしれません。
とりあえず上の物語の粒から「給食の献立」は削りましょう。
前の席のサッカー部員と主人公は、なぜケンカしたのでしょう?同じサッカー部?あるいは、主人公は園芸部で、前の席の人とは同級生という以外に共通点のない、ジャンル違いのクラスメイトなのかも。それだけでなく、前の席の人が以前、部活中にボールを誤った方向に蹴ってしまい、園芸部が大切にしている花壇にボールが突っ込んで、荒らしてしまったのかも。
ここから、主人公が葉っぱを取ってあげるかあげないかで分岐が分かれます。あげると会話が生じるかも。あげないと、その後の展開が気になりますね。もしかしたらその葉っぱは、ボールを追いかけたために灌木に潜ってくっついたものではないのかもしれません。花壇を荒らしてしまったことの償いをしようと、生花店で花の鉢を買ってきて、植えていたのかもしれない。そのときに同じ灌木が植わっていて、ひとやすみしたときに頭をくっつけて葉っぱがついたのかも。そうして誤解が解けて、仲直りできるかもね。
そういうオチにするために〝転〟を考える必要があります。つまり、葉っぱを取ってあげなかった後、どういう経緯を経て、この主人公は真相にたどり着けるんでしょうか。
こうやって考えてみると、葉っぱを取ってあげた方がいいのかもしれません。取ってあげると、前の席の人はびっくりして振り返り、主人公は「葉っぱが付いていたから」と教えてあげるけど、相手は(本当は恥ずかしいのだが)怒ったようになってしまう。主人公、一層相手への心証が悪くなる。なんだあいつ!せっかく取ってやったのに!しかし放課後花壇へ行ってみると、新しい花が植えられている。一体誰が?ふと周りをみると、あいつの頭にくっついていた葉っぱと同じ灌木が!理解した主人公はサッカー部のかけ声が聞こえる校庭へと走って行く。おしまい。
とかね!
これを起承転結の形で紙やパソコンのメモなどに書き出します。
ケンカして気まずい感情は自分の経験(前述の図書委員同士でけんかしたとか)を活かして、口論とかうまく書けるはずです。ストーリーや設定が違っても、経験した気まずさや口げんかは活かせます。
以上はどちらかというとシンプルなプロットで、国語の教科書的です。次はもう少し設定が複雑なプロットについて。
私自身の作品からプロットを引っ張り出します。むかーし書いた着想案にこんなメモがありました。
荒野を歩く、乾いた女の話
黄色い砂漠を行く。喉が渇いた。
道の向こうに何かが見える。
それは蜃気楼か、本物か、あるいは罠か。
ネタ案1
かつて自分を襲った男を返り討ちにしようとしている。
ネタ案2
女は異星人で、喉が渇いたというのは水ではなくて
別のものを(寄生先など)を求めている
「カントリー・ロード」と被らないように。
悪魔、あるいは天使、神様
死神
女は歩いて行く。でも誰の目にも留まらない。
ある小川が流れている。その水には毒が流れている。
その水を飲むと数時間以内に死ぬ。
荒野の果てに村がある。
ただひとり歩く女、とても乾いている
すぐには死なない毒
(※この中で「カントリー・ロード」と書いてるのは6年くらい前にミステリーズ!に載せた自分の独立短篇のことです。)
で、この案というかメモは趣味で書いたもんでしばらくお蔵入りしてたんですが、2018年の『たべるのがおそいvol.6 特集ミステリ狩り』に寄稿した短篇「メロン畑」として復活します。
このくらいの案だとだいたい原稿用紙50~60枚(2000字~2400字)程度の短篇にするのがちょうどいいくらいの分量です。もっと長いものの場合は増やすか、もうひとつ別のストーリーラインを作るのが良いと思います。
いつもの私はこのくらいの着想案だけにとどめて、いきなり書き出してつまずくこともあればそのまま素直に書き上げられるときもあります。
こういう着想案が、一番元素っぽい「物語のとっかかり、フック」です。
これを更に深め、物語として書けるようにしていきます。
確定要素・荒野が舞台で、謎の女が登場する。女はなぜか渇いている。
未確定要素・目的は何か。どこを目指しているのか。正体は何者か。なぜ小川に毒が? 誰が主人公なのか。この女が主人公か、あるいは別の誰かか?視点は?結末はどうする?どんな後味にするべき?
こういった未確定要素を詰めていくのが、プロット立ての重要な手順です。5W1Hとも言いますが、いつどこでだれがなにをどうしたなどの「作者自身でもわからないことを明確にする」工程。
とはいえ、物語を書くとき、作者にも全容は見えてません。プロットを立てたところで全部は見えない。全部見えたときはもう作品が完成しているときだから。なのでプロットは書き出す前に自分の不安が潰せる程度で大丈夫なので、やっておきましょい。
この「メロン畑」の場合は、趣味で書いていた時点で導入部は書いてあったんですが、その先をどうしようか全然考えてなくて、ようやく日の目を見させてあげられそうだぞとなり、じゃあ視点人物をまず決めようか、と考えました。
まず「謎の女」ではない。
なぜなら謎の女は謎なんだから、一人称で語れちゃったらまずいでしょう。
「私はどこそこから来た○○という名前でこうこうこういう理由で今ここにいて何をしようと思ってる」と、まあしゃべっても面白いっちゃ面白いけど、一人称なのにわざと隠すのはアンフェアだし、ギリギリだし(言うて私もこういうギリのことやったことあるけど)。
とにかくムードに合ってない気がしたんですな。
ホラー味を強くしたい。
怖くしたい。
遠景で、日に灼けた荒野に謎の女がひとり立っている。こちらに近づいてくる。そういうイメージが最初にありました。そしてドライ。ひび割れるほど乾燥している。
このイメージを優先させるなら、三人称で、ちょっと突き放した調子で書くのがいいですね。それに伏線を張るために、小川に何かが流されているような不信感を書いた方がいい……読者にだけわかるような形で。すると、謎の女の最初の歩みくらいは書いた方がいいかも。
だけどこの謎の女をずっと追いかけていたら(たとえば映画のカメラが彼女の視点ばかり撮るのでは)やっぱり謎の女が謎になりません。
では視点人物が別にいた方がいいわけで、そうなると、たとえば謎の女の目的地である村に住む村人Aとか、そういう人が主人公格になってきます。
で、いきなり謎の女を出しても良いけど、もう少し穏やかな村の生活を書いた方がギャップが出て良いかな、とかも考えるわけです。
そしてこの村の生活が、謎の女がここに来る理由とリンクしていたら?
荒野。喉が渇いている。水が飲みたい、でも小川にはどうやら毒を流してあるらしい。なぜ?誰が?毒が川に流れていると村人は知っているのか?もしこの渇きと毒の水をどちらも繋げられるアイテムや要素があるとしたら、それはいったい何?=メロン!メロンを育てているのでは?
メロンを生かせる設定、オチは?
後味はどうする?怖い話なら暗いオチもいいけど、少し希望があった方がいいだろうか?
そうやって逆算し、繋ぎながら考えていきます。
・冒頭は倒れている女が起き上がったところから。小川に何かありそう。
・場面切り替え。ふらつく女がこちらにやってくるのを見つける子どもたち。主人公の少年とメロン畑。
・女はひたすら「渇いた」と呟き、それ以外何も言おうとしない。
・主人公の母親は村で唯一の医者
・村人たちが突然ばたばたと死んでいく。医者も治療に奔走するが甲斐がない。
・なぜか少年だけが生き延びる
・謎の女の正体は?
あとあとのオチを不思議なものにするために、謎の女はもともと普通の旅行者で、明るく気性の良い人で、村にも一度立ち寄っていて親しくなっていたのが突然おかしくなり、少年も母親の医者も村人も戸惑っている、という設定にしました。いったい謎の女になにが起きたんでしょう……
書籍化していないのでネタばらしを書くか書かないか微妙なんですけど、まあぶっちゃけ、小川に毒が流され、村の井戸からそれを飲んでみんな死んでいくのだけど、主人公はメロン大好き人間でメロンからしか水分を取らないので生きてるということになりました。「渇いた」しか言わない謎の女の正体はまあ……ふふ……
というかんじで、プロットというか、着想からどうやって本当に「書ける」物語にしていくか、のお話でした。
次は実際に小説にしてみる、の話ができればなあ……お待ちください。
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