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【レビュー】これが正真正銘本物の「メトロイドヴァニア」だ! Bloodstained: Ritual of the Night

※個人の見解です。ネタバレ無し。購入検討の参考になれば幸いです。

近年日本でも定着しつつある「メトロイドヴァニア」という言葉、ご存じでしょうか。

ご存じない方へ簡単に説明すると、任天堂「メトロイド」シリーズとコナミ「悪魔城ドラキュラ」シリーズ(英題:キャッスルヴァニア)を合わせた造語で、これらに近しい横スクロールの探索型アクションを指すゲームの総称、ジャンルを指す言葉です。

今回紹介する「Bloodstained: Ritual of the Night」はまさにそのジャンルを代表する作品と言って良いでしょう。

何せ本作はその「悪魔城ドラキュラ」シリーズでお馴染み「IGA」こと五十嵐孝司氏自らが手掛けたいわゆる精神的続編

クラウドファンディングにより圧倒的な支持を得て開発された本作は、公式に「IGAVANIA」というフレーズが使われていることからわかるように、五十嵐氏がかつて手掛けた探索型悪魔城を踏襲した内容となっています。

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作中冒頭のこのフレーズにワクワクを感じたプレイヤーも多いのでは

なお、2019年発売の本作ですが、現在も継続してアップデートが行われており、コンテンツの追加やバグの修正が随時行われています。あくまで記事作成時点でのバージョンに対する評価という点はご了承ください。

また筆者は悪魔城シリーズをプレイしたことはありません。従って五十嵐氏の過去作との比較などは行わず、メトロイドヴァニア初体験でも楽しめるかどうかを中心に、レビューしていきます。

ゲーム開始一曲目でガッチリ心を掴まれた

悪魔城といったら音楽、と言われるほど楽曲の人気が高い悪魔城シリーズですが、その系譜である本作も素晴らしい楽曲を多数取り揃えています。

筆者も当然楽曲のクオリティは高いものだと期待値のハードルを目いっぱい上げて本作をプレイしましたが、最初のステージBGM「voyage of promise」でいきなりハードルを越えられてしまいました。

それもそのはず、本作はメインコンポーザーとして悪魔城シリーズでお馴染みの山根ミチル氏が参加、加えて「ポケモン不思議のダンジョン」シリーズや「蒼き雷霆ガンヴォルト」シリーズなど楽曲人気の高いゲームを手掛けてきた精鋭作曲陣が名を連ねており、名曲揃いとなったのは必然でしょう。

シンプルな基本アクションと多彩な装備やシャードスキルの組み合わせが楽しい

アクションはいたってシンプルでわかりやすい。ゲームスピードも遅めで、難易度も高くないので誰でも気軽に遊べる仕上がりになっています。

一方で装備の選択肢は豊富。使いやすい「剣」、連打は出来ないが範囲の広い「鞭」、遠距離攻撃が出来る「銃」など、操作方法は同じなのに全く違う操作感を感じることが出来るので、場面によって付け替えたり、一つの系統で戦い抜くのも良いでしょう。

加えて、本作のアクションにおけるキモとなるのが「シャード」です。

「シャード」とは悪魔の持つ能力を秘めた結晶のこと。これを装備することで様々な魔法攻撃をしたり、ステータスを強化したりすることが出来ます。

このシャード、ザコを含めたほとんどの敵キャラがそれぞれ種類ごとに固有のものをドロップするのですが、なんと100種類以上存在しています。  

いつでも付け替え可能なので、筆者としては装備や敵に合わせて付け替えたり、あれこれ試してみることをお勧めします。勿論お気に入りのシャード一本に絞ってもOK。

この「装備」と「シャード」の要素こそが、本作のアクションをシンプルさと奥深さを両立したものにし、すぐに馴染めるが飽きない優れたアクションゲーム足らしめているのです。

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各種シャードは素材によって強化することも出来ます。種類によって弾の発射数が増えたり、射程が長くなったりと効果も様々。

主人公・ミリアムを始めとした魅力的なキャラクター

一見クールな主人公ミリアムですが、天真爛漫な女性として描かれていて親しみやすいキャラクターになっていました。これがギャップ萌えか。

とはいえ決めるべきところはしっかり決めてくれるので、重たい過去を背負っていながらも健気に友の為奮戦する彼女に、いつしか心を奪われることでしょう。

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腹ペコキャラでもあるミリアム。老婆の為に作った料理につい心の声が。

他にもミリアムを毛嫌いする退魔の侍・斬月、セクシーなエクソシスト・ドミニク、殺意のこもった叫びで強烈な印象を残す村人・リンジーなど一癖あるキャラクター達が揃っています。

ちなみに2021年5月までのアップデートで斬月やあるボスキャラクターが本編で使用可能となっており、さらに今後もう一人使用可能キャラが増える予定。シナリオが別個に用意されているわけでないですが、ミリアムとは一風変わったアクションを楽しめます。

進行上の指針が少な過ぎる

メトロイドヴァニアにある程度慣れたプレイヤーであれば違和感を感じない点かもしれませんが、先のエリアに進む為に必要な情報提供が不足していた印象を持ちました。

具体的には三点、一点目は水中エリアを進むうえで必須のシャードを持っているのがザコ敵で、しかもノーヒントであったこと。

二点目も一点目と同様、トゲだらけの道を突破する為に必要な装備が関係ない場所の隠し宝箱に置かれていて、これもノーヒント。一応こちらは強行突破できなくもないですが。

最後に、ヒントをくれるNPCが同じセリフを二度と喋ってくれないこと。

自力で探し出す面白さは「探索型」の一つの醍醐味だとは思いますが、その為には最低限の誘導は必要不可欠です。どこを探せばいいのかもわからないとなると、早々に攻略情報を確認してしまうプレイヤーが多いのではないでしょうか。結果的には逆に探し出す面白味を削いでしまっています

疑問の残る仕様や小さなバグが散見される

2021年5月現在の時点で、致命的なものでこそ無いものの、ちょっとしたバグやおかしな挙動はしばしば見かけました。併せて疑問に思う仕様が何カ所かあったので具体例を紹介します。

・アイテムソートを記憶してくれない

特にアイテムが嫌でも貯まる終盤、都度ソートし直したり片っ端から探す羽目に

・ロード時に直前のセーブデータを一々探さなければいけない

ロード画面を開いた時点で最新セーブデータにカーソル初期位置を合わせて欲しかった

・シャード「使い魔:アーチャー」を使用していると段々ゲームが不安定になりカクつきやフリーズ、エラー落ちを起こす

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「Kingdom Two Crowns」とのコラボキャラ。原因は不明だが、明らかに使用時だけトラブルが頻発するように。せっかくのコラボキャラなのに満足に使用出来なかった。

・マップの白枠が消える

発生するとまだ行ってないエリアがあるか判別できなくなる

前述の通り、まだまだアップデートは続いてますので、修正に期待したいと思います。

長所

・山根ミチル氏を始めとした作曲陣の手掛けた珠玉のBGM

・シンプルだけど飽きない、完成されたアクション

・主人公ミリアムをはじめキャラクターが魅力的

短所

・進行上の指針が少ない

・致命的ではないが、バグや細かな仕様で今一つに感じる部分も

総評

悪魔城シリーズの精神的続編として、伝統を忠実に守りファンの期待に応えた作品。とはいえ素晴らしい楽曲、遊びやすいのに骨太なアクションは人を選ばず楽しめるものに仕上がっていますので、誰にでも勧められるゲームでした。

目新しさは無いかもしれませんが、クラウドファンディングという形態をとったこともあって、「昔ながら」を徹底したのは正しい判断だったように思います。

一方、UIなどは昔のゲームの不便さまで引き継いでしまっている節がありますので、今後のアップデートでの改善に期待したいところです。つい先日続編の開発が進んでいると販売元505Gamesの親会社より発表があったこともあり、今後のシリーズ発展に期待したいところです。


評価・・・8 - GREAT(素晴らしい)/10 

※本レビューの点数はIGNのガイドラインを基準としています。


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