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夕靄(ゆうもや)に沢音(さわおと)響く 春の暮れ

 入試1日目は土砂降りの雨でした。受験生が帰った後に雨は止みましたが、用事があって校舎の裏手へ回ると、駐車場奥の林まで霧が立ち込めていて、幻想的な雰囲気でした。湿度が高くて、マスク越しでは息がしづらく感じるほどです。すぐ上の斜面に桜園があるのですが、今年はまだ咲かず、枯れた下草の薮の中から小鳥たちの地鳴きが聞こえます。間もなく日が暮れるので、皆巣に帰ってきているのか。それとも、今日は雨でどこにも行けずに、一日を巣の中でおしゃべりをして過ごしたのでしょうか。

 普段はあまり意識しませんが、もともと山を切り開いて作られた土地のため、すぐそばに手つかずの自然が広がっています。庭掃除を担当していた時、山の斜面のすぐ下の所がぬかるんでいると思ったら、イノシシのヌタ場で、驚いたことがありました。他にも、初夏には野イチゴがあちこちに実っていたり、秋にはアケビやサルナシの実が落ちていたりで、本当に自然が身近に感じられます。

 人気のない裏庭に、雨で勢いを増した沢の音がどこからか響いてきます。霧の中で耳を澄ましていると、自分がどこにいて、今から何をする所だったのかも、忘れてしまいそうです。

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