藤沢周平第一エッセイ集「周平独言」。

 昭和56年8月に刊行された第一エッセイ集。藤沢周平といえば、その作品、人柄ともに「端正」という言葉が似合うように思われる。作品には駄作がない上、〆切りに遅れたこともないらしい。その裏舞台を明かしたエッセイなども含まれている。
 時代のぬくもり、三つの城下町、周平独語、汗だくの格闘という4部に分かれている。私の目を引いたのは「庄内藩主酒井忠発の明暗」。「歴史と人物」という雑誌に発表された歴史エッセイだ。幕末の庄内藩の動きについて書いている。
 時代的には「義民が駆ける」のすこし後の時代になる。藩主忠器と息子の忠発の間に確執があったことは小説の中でも触れられているが、時代背景がかなり幕末に近かったことはこのエッセイを読んではじめてわかった。小説の中に出て来る人物の悲しい末路などもわかる。「義民が駆ける」の中では百姓対幕府という部分がフォーカスされ、藩内の権謀術数についてはあまり深く触れられていなかったのである。このエッセイを読んで、よけいに「義民が駆ける」の内容が面白く感じられた。

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