妻のために
妻とは職場結婚だ。
彼女は指圧がうまく、元気がないときに肩を揉んでもらうだけでシャキンとしたし、眠気をとったり、自信をつけてくれたりと、いろいろ助けてもらった。
それで気がついたら結婚していたのだが……
「おはよっ」
といって、妻は私の額をつつく。
すると私はかっと目を見開き、なんだかゴミを捨てにいかなければいけないような気持ちになる。
三十代のうちには持ち家を買いたいとか、出世したいとか、子どもは三人ほしいとか、以前の自分だったらぜったい考えないような意欲をもって働いている。
それでうまくいっているのだから問題はないのだが、それでも、これは自分の人生だろうかとふと思うこともあるのだった。
すると、妻の指が……
(了)
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