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アイチタイプの時代。

 アイチタイプという入力会社にはずいぶんお世話になった。
 10人くらいの小さな会社で、ほとんどの人は和文タイプで入力をしていた。
 ワープロはまだ先進的な機械であり、入力していたのは私と若い女性社員のふたりだけだった。私は親指シフトを使うのでまあまあ早いのだが、その女性はローマ字入力で無茶苦茶早かった。入力も正確だった。少しも笑わず、いつもこめかみに絆創膏を貼っている人だった。
 次第に手書き文字の入力仕事は減っていき、音声テープの起こしが主力になっていった。こうなると和文タイプでは追いつけない。
 やがて、音声テープの入力も単価が安くなって、商売としてはつらくなってきた。OASYS100というワープロには、簡易的なプログラム機能も付いていたので、不動産チラシを作ったりもしたが、あまり複雑なことは行えない。
 簡易DTPの機械を導入することになった。やがてDTPといえばMacになっていくが、最初の頃にはこうした専用機械があったのである。私は東レの「FX500」のオペレーターになった。

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