営業ロボット
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「ピンポーン」
面倒くせえなあと思いながら玄関のドアを開けると、メカメカしたロボットが立っていた。
ロボットは強引に中に入ってくると、
「ダブリン工業からやってまいりました。名前はまだありません」
と言って、居座ってしまった。
「なんの用だい」
「私を買ってください」
「ロボットを買いたいとは思ってないよ」
「クレジットカード番号を入力していただく。私はいますぐあなたのもの」
こいつ、人の話を聞く機能はないのか。
「150年割賦もOKね」
「あのね、人間はそんなに長生きしないの」
「大丈夫。生命保険に加入する。あなた死ぬ。そこで支払いはストップ。坊主丸儲け」
「だいたいおまえはなんのロボットだ」
「私、営業ロボット。私に商材を渡す。私、なんでも売る。あなた利潤を上げる。割賦を払う。みんな幸せ」
ロボットの目が光り、目の前にホログラムが出現した。
みるからにへんてこなおじさんが、腕を振り回して叫んでいた。
「うちのロボットはなぜ売れん。300年の伝統をもつ我が社が廃業寸前じゃないか。リストラだリストラだ。営業部隊は全員解雇。なに、誰が売るか。決まっているじゃないか。うちはなにを売っているんだ。営業ロボットだろ。自分で自分を売ってくるようにプログラムしろ。攻めて攻めて攻めまくれ。いったん会社を出たら二度と帰社はまかりならん」
「誰だこれ」
「社長でございます」
何ごとが起きているのかと、ポケットから顔を出したびすを、ロボットは意外な素早さで捕獲した。
「ネズミ。不潔。握りつぶすか」
「つぶすな。それは友だちだ」
「あなた、変わり者ね。ネズミ、売ってくるか?」
「友だちを売るな。いますぐすぐ放せ」
「チュー」
びすが慌てて逃げてきた。
「びす、警察に連絡だ」
「とっくに連絡したでチュー。こいつはアブナイでチュー。ロボット工学三原則も入力されていないし、OSもなんだかわけがわからないでチュー」
「値切りか。そうだな。そのネズミは値切りロボットに違いない」とロボットが叫んだ。「やれるものならやってみろ。私は手強いぞ」
そこへ警官隊が雪崩れ込んできた。
「われわれは警察ロボットだ。営業ロボットはすぐにこの家から退去しなさい」
「私はすでに購入された。おまえたちに用はない」
「購入なんかしてないぞ」と私は叫んだ。「このロボット、嘘までつきやがる」
営業ロボットは、私を振り返り、ニッと笑った。
「これ、嘘、言わない。営業トークね。あなたは、もうすぐ私を買うのだから、嘘にならない」
「攻撃」
警察ロボットの隊長が言った。
家の中で戦闘が始まった。
「営業は戦争だあ」
と叫んで、ロボットは破壊された。
(了)
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