ゴミ不況
「ゴミ回収にご協力ください」
というメールが杉並区役所から来た。
どうせまた分別を細かくするんだろと憂鬱な気分でメールを開いたら、おもわず瞳孔が開いてしまうような内容だった。
「びす、大変だ大変だ」
「どうしたでチュー」
「杉並区がゴミ回収をしろってさ」
「住民の回り持ちでチュー。順番が来ただけでチュー」
「知ってたのか」
「杉並区の動きはいつもウォッチしているでチュー」
「このメールじゃ、明日朝、五時に集合ってことしかわからん。あの役人コンピュータ、なにを考えている」
「ゴミを減らそうとしているでチュー」
「え?」
「ゴミを出すのは基本的に住民でチュー」
「ま、そうだな」
「他人が処理してくれると思うから遠慮なく出すでチュー。回り持ちで、自分たちでゴミ回収車を運転して、ゴミを集めて回るつらさがわかったら、ゴミを少なくする方向に行くのではないかという確率的予想でチュー」
「わかった。もう缶コーヒーは買わない」
「……」
「ペットボトルも買わない。杉並区のまずい水を飲む」
「……」
「雑誌、買わない。新聞も止める。えーと、あとはなんだ。魚は骨まで食う。それは無理か」
「そこは引き受けてもいいでチュー」
「よし、骨はびす担当な。あと、生ゴミを肥料にする機械を買う。印刷はしない。壊れる機械も買わない。服は消滅するまで着る」
「その心意気でチュー」
「だから、回収は勘弁してくれないか」
「区役所と掛け合ってみるでチュー」
「でも……」
「なんでチュか」
「オレはその生活でもいいんだけど、不況が深刻化しないか?」
「あ」
(了)
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