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TSMC最先端半導体3ナノがコケた!?日本政府の2ナノ、ラピダスの運命は…

2023/09/22

https://www.youtube.com/watch?v=ADLSIBIZdvs

■  微細化しても性能が上がらなかった

中国でも似たニュースが流れたが、PC Gamerの報道
『Apple最新iPhoneチップはTSMC3ナノと次世代GPUが懸念となっている』

新しいAppleのiPhoneはエヌビディア機能セットを実現する新しいグラフィック性能が宣伝されているが、PCゲームにとって新しいヘッドセットにはもっと重要なものが他にある。

iPhone 15 Proは、AMDとエヌビディアの次世代GPUにTSMCの新しい3ナノラインを利用することがほぼ確実だと言われている世界初のデバイスです。そしてA17プロチップが何かあるとすれば、よく知られているように新しいTSMCの3ナノチップがあまり上手くいっているようには見えない。まずA17プロのトランジスタ数の増加は、前モデルA16バイオニックと比べてかなり控えめです。A16が160億個だったのに対し、A17は190億個となっている。確かにAppleは今回コストを抑えるためにトランジスタ数を増やさなかったのでしょう。

しかし、トランジスタの僅かな増加はCPUコア数が変わっていないことを意味する。Appleは新しいCPUによるパフォーマンス向上は10%と言っている。これは新品の実稼働ノード上のSOCとして非常に残念なことです。

そして、電力消費量は、通常新しいチップは同じパフォーマンスでも消費電力が 低いことが期待される。それにもかかわらずAppleは、今後発売されるiPhone 14 Proよりもバッテリー寿命が向上するとは言っていない。15Proのバッテリー寿命は以前と全く同じだという。

こういうネガティブな報道が出ている。AppleのiPhoneのデザインはほぼ同じだ。そうなると、次のバージョンに上がっていく時に、カメラの性能が上がる、CPUの性能が上がる、あるいは消費電力量が下がってバッテリー寿命が伸びるというスペックが上がっていくこと以外に何の変化もないスマートフォンなのだ。

スマホに機能を追加していくには、もう限界があるので、そうなると使用感、ブラウジングとかその処理が早くなるぐらいしか期待ができない。それなのにチップを最先端のものに変えたら、パフォーマンスが1割しか上がらなかったことが先に報道されてしまった。

5ナノから3ナノに変えた時に、回路を細くすることは、トランジスタの数を増やしてパフォーマンスを上げるのが目的なはずなのに、歩留まりが低いのでコストが高くなるのを抑えるために、トランジスタの数を増やすと高くなるから増やせなかったことが報道されていて(歩留まりが悪いとは別のソースからの話)、トランジスタの数が増やせなかったことが、パフォーマンスを上げられなかった原因だと言われている。

このチップを微細化することの人類が享受できるメリットは、トランジスタをいっぱい詰め込んでパフォーマンスをドーンと向上させる。あるいは回路が細くなることにより、電力消費量が下がる、電力効率がすごく良くなる、の二つが売り文句なのである。

何百億何千億の投資をして3ナノのチップのラインと、3ナノチップの技術を開発してパフォーマンスが上がらないし、電力消費量が変わらない。その上に歩留まりが下がった。それで投資が回収できるだろうかと思う。その疑問がそのまま株価に反映されて、TSMCの株価を見ると、報道前9月4日時点では95ドルほどあったのが、85ドル40セントまで落ち20%以上も下がっている。


■  TSMCのなんちゃってナノメートルがバレた

自著『IT戦争の支配者たち』でも書いたが、ムーアの法則は終焉に向かっている。インテルの創業者ゴードン・ムーアが、チップの性能は2年で2倍になると言っていた。微細化が進むのでチップの線が細くなれば、トランジスタがたくさん搭載できるのでパフォーマンスが向上するという経験則を基にしている。20年ほど前から、もうムーアの法則は終わりに向かうと言われていた。

電子が通る回線の幅が細くなればなるほど効率が下がっていく。その電子が抜けてしまうリーケージ、量子効果で抜けてしまうことが起こるので、もうムーアの法則は終わりに向かっているのだとずっと言われていた。

今回はそれだけではなく、投資コストがかかりすぎるので、トランジスタの数はあまり増やさなかったこともあるが、歩留まりがかなり悪くなった。百個作っても使えるチップの数が減り、Appleが払う時は、一個あたりのチップの値段に不良になった分のコストも乗ってくる。かなり高コストのチップを作ってもパフォーマンスが上がらない状態になっている。

ムーアの法則は終焉に向かっている。人類はデッドエンドに向かっていることを、私は何年も前からずっと本に書いてきていた。それがトランプ前大統領の米中半導体戦争のきっかけになっていることを何度も書き発信してきた。

微細化を進めてもパフォーマンスが上がらないことが、この3ナノの時点で明らかになってしまうと、日本政府がIBMからライセンスをもらい、2027年に工場の稼働開始を目指している鳴り物入りの2ナノの工場のラピタスがこけてしまう。

その2ナノの入り口の3ナノでこけているが、ここで3ナノのパフォーマンスが劇的に良くなり、消費電力が劇的に上がったことを本当に証明しないと、ここから微細化することの意味があるのか。焼け石に水のような無駄な投資をすることになるかもしれない。しかも企業が勝手にやるのだったらいいが、我々の税金をそこに突っ込んでもいいのかが問われることになる。

特にTSMCのこれまでの手口を見れば、10ナノとか7ナノとか5ナノと言っても、本当にその幅の箇所はどこにも無いのだ。それは回路を書く波長がそもそも12.5ナノメートルとか13.5ナノメートルとか、書きたい線よりも波長が広いので、物理的にその線が書けないのだ。

TSMCが自ら10ナノ、7ナノ、5ナノと言うのが単なる商標、セールストークで、物理的な幅は狭まっていないのではと、ずっと半導体アナリストの間で言われている。

今回この3ナノの消費電力が下がっていないことは、TSMCのなんちゃってナノメートルであることが、もしかしたら露呈したと、今後言われてくると思われる。

経産省は予算さえもらえたら、その後はどうなっても構わないと思っているかもしれないが、国民は投資したお金が無駄にならないように、しっかりとここからラピダスをウォッチして行かないといけない。TSMCにそんなに金を出すのかと日本政府に対して言って行かないといけない。


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